『図解ポケット メタバースがよくわかる本』レビュー メタバース関連書籍すべて解説

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『図解ポケット メタバースがよくわかる本』レビュー メタバース関連書籍すべて解説
『図解ポケット メタバースがよくわかる本』レビュー メタバース関連書籍すべて解説

メタバース本レビュー『図解ポケット メタバースがよくわかる本』松村雄太著(秀和システム)

2022年6月1日に発売されたメタバース本『図解ポケット メタバースがよくわかる本』を取り上げたい。
この記事の筆者・ふかみんはメタバース本のだいたい全部を読んでいて、こちらの記事で全レビューもおこなった

本書は全レビュー記事執筆後に発売されたため、別記事として、全レビュー同様、忖度なしで書かせていただく。

著者の考えるメタバースとは

「自身のアバターが活動できるインターネット上の仮想空間」(p.9)
「メタバースは次世代のSNSとなりうる」(p.24)

著者はメタバースのひとこと定義に「アバター」という言葉を使っている。

実はメタバースの説明に「アバター」を使っているメタバース本はあまり多くない。本書の中に、アバターの重要性についてがっつり説明しているページがあった。もともとそういう考え方の人のようだ。

またメタバースの定義の章の最後で、著者は「メタバースは新しいSNSである」と言い切っている。この点についても、ここまではっきり言っている本はめずらしい。

著者の松村雄太氏は、ベンチャー企業に所属し、大企業向けにスタートアップやテクノロジートレンドのリサーチをおこなっていた方。

この本の前にも、同じ図解ポケットシリーズのNFT版を出している。

どんな本か

メタバース本出版ブームから一段落した今、というタイミングで発売されたメタバース本。今回のブームの中でのメタバース本としては後発組である。

表紙を見ると、「ビジネス」「メタバース」「Web3」という言葉が飛び交っている。

奥付を確認すると正式な書名は「図解ポケット メタバースがよくわかる本」なのだが、実際の表紙には「図解ポケット 仮想世界の新ビジネス メタバースがよくわかる本」と書いてあり、なんだかメタバースが、新ビジネスの名称みたいになっている。

既発のメタバース本も研究されているようで、岡嶋裕史『メタバースとは何か』とバーチャル美少女ねむ『メタバース進化論』からの引用が見られた。
本書でみかけた面白いワードに「老舗メタバース」というものがある。

要するに「Second Life」のことだ。面白くてわかりやすい言葉なので、今後流行ったらいいなと思う。

他の書籍はSecond Lifeもまぁメタバースだし、今ブームになっているいろんなサービスもメタバースだよ、とふわふわした書き方をしているが、2021年以降のメタバースブームとそれ以前とははっきりわけたほうが理解しやすいだろう。

ちなみに、1986年に発表されたアバターを使ったコミュニケーションサービス『Habitat』のことは「元祖メタバース」と表現してあった。

はじめてメタバースという言葉が使われたとされるニール・スティーヴンスンによるSF『Snow Crash』(スノウ・クラッシュ)の出版が1992年だから、それより前のサービス。

しかし今振り返ってみればHabitatはまさにメタバースであった、ということだろう。他では見ないワードだが、わかりやすくて良いと思う。

競合するメタバース本は武井勇樹『60分でわかる!メタバース超入門』だろうか。

武井本は、著者の意見を極力抑えて、メタバースの基本解説に徹した書籍だった。こちらの松村雄太著『図解ポケット メタバースがよくわかる本』も基本解説本であり、解説内容によっては武井本より詳細に解説してある部分もあった。ただ、著者の考え方は松村本の方が色濃く出ている。

意見がわかれるところかもしれないが、初心者にすすめる本ということであれば僕は武井本を推す。
本書は章立てに疑問を感じる部分もある。

SDGs的な視点から見たメタバース」という章があり、1章丸ごとメタバースとSDGsのことについて書いてある。SDGsが掲げる17項目にメタバースが当てはまるかどうかを1項目ずつ検討していく、という意欲的な試みなのだが、無理矢理感があり、初心者向けのメタバース本でこれをやる必要はないと思う。この章丸ごと不要ではないかと思われる。

著者ならではの部分

通読して、メタバースでお金儲けという色が濃く出ている本だな、と感じた。紹介するサービスも、収益化できるサービスを優先して紹介している。

また、ブロックチェーン技術を用いて稼げるサービスをWeb3のメタバースと呼んでいる。稼げないVRChatclusterはWeb2.0のメタバースと分類されるそうだ。

稼げる・稼げないでわけるのは、正直筆者には違和感がある。

メタバース、3つのグループ

筆者が考案した分け方なのだが「コンテンツ派」「VR派」「お金儲け派」の3分類で考えると、「VR派+お金儲け派」に軸足を置いた本ということになるだろう。

ただ、バランスよく書かれており、大きな偏りはない。

気になるのは最終章で「目の前にはブルーオーシャンが広がって」(p.152)おり、「メタバースの黎明期におけるチャンスを少しでも掴んでみては」(p.153)と煽っている点。何をもってチャンスと言っているのか不明瞭だと感じた。

プラットフォームもハードもすでに大きな企業が開発を進めており、入り込む余地が多いようには見えない。探せばあるだろうが、そこがもっと明瞭に書かれていたらよかった。

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