2020年4月より放送を開始したテレビ朝日の深夜アニメ枠「NUMAnimation」。「沼落ち」をコンセプトに、アニメ作品に夢中になってほしいという想いが詰められた放送枠で、これまでに『イエスタデイをうたって』『体操ザムライ』『RE-MAIN』などユニークな作品が放送されている。
そもそもテレビ朝日といえば2010年代、他の民放局と比べてほとんど深夜アニメを放送してこなかった。しかし、2020年の枠開設以降、NUMAnimationでは先述のように多数のオリジナルアニメーションを編成し続けている。『リーマンズクラブ』第1弾PV
2022年1月29日からはバドミントン男子実業団の姿を描く『リーマンズクラブ』が放送開始。新人社会人とベテラン“バドリーマン”のコンビによるスポーツ×社会人ものである本作は、NUMAnimation初のテレビ朝日企画作品だ。
他局も深夜アニメの製作に乗り出す今、テレビ朝日はNUMAnimationをどのような方針で編成し、ブランディングしようとしているのか。そして『リーマンズクラブ』で目指すものとは? テレビ朝日でアニメを担当するコンテンツ編成局の小野仁さんと遠藤一樹さんに話を聞いた。
取材・文:太田祥暉(TARKUS) 編集:恩田雄多
小野 おっしゃる通り、ゼロ年代には何本か深夜アニメが放送されていましたが、それらの多くは企画製作にコミットしておりません。
当時はすでにフジテレビさんのノイタミナや毎日放送さんのアニメイズムがはじまっていましたが、テレビ朝日ではバラエティが強いこともあって、より一層そちらにリソースを割いていたというのが当時の状況になります。
──なるほど、それで徐々に深夜アニメの本数が減っていったんですね。ですがそういう意味ですと、2012年に放送された『新世界より』は最初から2クールと、かなり力が入っていたように感じます。
小野 新しい企画を通すためには、編成されている番組の移動をはじめ、それ相応のカロリーを要するわけです。そんな中で、『新世界より』に関してはアニメに対して情熱のあるスタッフの想いと作業が結実して、いきなり2クール放送することになった。
その前にはもちろん様々な検討があったわけですが、企画単体で勝負した結果、枠としてのブランディングまで行きつかず、平日の27時台に単発枠という形になりました。一方、『新世界より』において企画から放送までの作業を行った経験値により、4年後に『ユーリ!!! on ICE』が生まれます。 ──フィギュアスケートをモチーフに、MAPPAが制作して2016年に放送したオリジナル作品『ユーリ!!!』は、強烈なインパクトを与えました。
小野 やはり久保ミツロウさん、山本沙代監督をはじめとした素晴らしいクリエイターと一緒に『ユーリ!!!』をつくったことで、社内的にもロールモデルができたんだと思います。それを軸にしてようやく放送枠として継続的に深夜アニメをやっていこうという提案が整った。
なので、NUMAnimationが成立した経緯までは、長い検討の歴史がありまして、積み上げてきたものの結果というのが正しいと思います。
──単発ではなく、枠名を冠してまで継続的にやっていこうという意思が固まったと。
小野 ベタなことで言えば、テレビ朝日はアニメの供給本数が少ないので、まだまだアニメで表現したいことがたくさんあるんです。他局さんに比べてやはり後発組ですし、現在はWeb配信など視聴方法も多様化しています。
その中で地上波放送を観ていただくにはどうしたらいいのかと考えたときに、きちんとブランディングをしたうえで、同時視聴体験ができるように整備するべきなのではないかなと考えました。
──枠開設後から2020年7月クールまではローカル放送でしたが、2020年10月クールからテレビ朝日系列全国24局ネットになったのはそのような意図があったんですね。 小野 確かに配信が普及したおかげで作品への接触の機会は増えました。いつでも最新エピソードに追いつくことができる。一方で、どこかでその作品にどっぷりハマるためには同時視聴での一体感などを感じることが必要で、その場を提供していくことが重要だと考えています。
キー局の強みを考えたときに、同時に作品を楽しんでいただくために全国ネットは不可欠だと初期から前提条件に入れていました。
枠名を考えるよりも、全国ネットにすべく各局と交渉する方が早かったと思います。毎週地上波で同時に楽しんで、SNSでも感想を言い合っていただく。そのような状況を整備すると、より楽しめるのではないかなと。
小野 深夜アニメ枠をやることになった際に、どうすればテレビ朝日のオリジナリティや強みが出せるのか考えました。
テレビ朝日にはスポーツの中継権を持っている競技が多くて、その面白さを伝えるプロのスタッフもいます。ならば、そういった人のアドバイスをすぐに聞けて、アニメスタジオにもフィードバックできるという強みを活かしてスポーツものをつくってみたらどうか、というような形ですね。
そもそも『ユーリ!!!』のときにも、社内のフィギュアスケートチームのバックアップによって、実際に取材することができました。
遠藤 『リーマンズクラブ』でも社内のスポーツ担当の協力があり、実業団チームに取材させていただきました。やはり専門のスタッフがいることで、リアリティを高めるお手伝いはできたんじゃないかなと思います。 ──オリジナル作品はテレビ朝日発の企画が多いのでしょうか?
遠藤 いえ、これまでの作品ですと『ユーリ!!!』くらいでしょうか。『体操ザムライ』も企画初期からご一緒させていただいておりましたが、テレビ朝日が主導していたわけではありません。ですので、NUMAnimationとしては『リーマンズクラブ』が初めてのテレビ朝日発作品となります。
──素朴な質問ですが、『リーマンズクラブ』はどのような経緯で企画されたのかお教えください。
遠藤 自分がそもそも中高生時代にバドミントンをやっていたんですが、その経験からバドミントンをアニメーションで表現したらキャッチーなものになるのではないかと常々考えていました。
そんな中、ライデンフィルムさん制作の『はねバド!』が2018年に放送されました。『はねバド!』は女子高校生によるバドミントンものだったんですが、それを観ながら「男子ならではのかっこよさと、バドミントンのスピード感をアニメで表現したら、面白いものになるのでは?」とイメージが浮かんだんです。アニメ『はねバド!』PV
遠藤 先ほど小野が言った通り、テレビ朝日がバドミントンの中継権を持っていて親和性もありますから、男子バドミントンアニメをやっていこうと企画を立てました。
──『リーマンズクラブ』は確かに男子バドミントンものですが、そのまま中高生の青春ものではなく、社会人の実業団ものとなったあたりに妙を感じます。
遠藤 どういう方向性にするかを考える中で、女性の友人から「スーツ男子っていいよね」というフレーズが飛び出したんです。その瞬間、実業団チームのお話にしたら「大人の男性の魅力も付与した新しい切り口のアニメになるのではないか」と着想を得ました。
そこから企画書をつくり、知り合いを頼ってライデンフィルムさんに「『はねバド!』が素晴らしかったので、バドミントンものを一緒にやりたいです」とコンタクトを取りました。担当のプロデューサーさんからも好意的な反応をいただいたので、そこから企画内容を詰めていきました。なので、企画段階から男子実業団ものというのは決まっていましたね。
そもそもテレビ朝日といえば2010年代、他の民放局と比べてほとんど深夜アニメを放送してこなかった。しかし、2020年の枠開設以降、NUMAnimationでは先述のように多数のオリジナルアニメーションを編成し続けている。
他局も深夜アニメの製作に乗り出す今、テレビ朝日はNUMAnimationをどのような方針で編成し、ブランディングしようとしているのか。そして『リーマンズクラブ』で目指すものとは? テレビ朝日でアニメを担当するコンテンツ編成局の小野仁さんと遠藤一樹さんに話を聞いた。
取材・文:太田祥暉(TARKUS) 編集:恩田雄多
『新世界より』経ての『ユーリ!!! on ICE』テレ朝アニメ事情
──NUMAnimationの開設についてお話をうかがう前に、テレビ朝日の深夜アニメ状況についてお聞きしたいと思います。そもそもテレビ朝日では、2000年代にも深夜アニメが放送されていましたよね。小野 おっしゃる通り、ゼロ年代には何本か深夜アニメが放送されていましたが、それらの多くは企画製作にコミットしておりません。
当時はすでにフジテレビさんのノイタミナや毎日放送さんのアニメイズムがはじまっていましたが、テレビ朝日ではバラエティが強いこともあって、より一層そちらにリソースを割いていたというのが当時の状況になります。
──なるほど、それで徐々に深夜アニメの本数が減っていったんですね。ですがそういう意味ですと、2012年に放送された『新世界より』は最初から2クールと、かなり力が入っていたように感じます。
小野 新しい企画を通すためには、編成されている番組の移動をはじめ、それ相応のカロリーを要するわけです。そんな中で、『新世界より』に関してはアニメに対して情熱のあるスタッフの想いと作業が結実して、いきなり2クール放送することになった。
その前にはもちろん様々な検討があったわけですが、企画単体で勝負した結果、枠としてのブランディングまで行きつかず、平日の27時台に単発枠という形になりました。一方、『新世界より』において企画から放送までの作業を行った経験値により、4年後に『ユーリ!!! on ICE』が生まれます。 ──フィギュアスケートをモチーフに、MAPPAが制作して2016年に放送したオリジナル作品『ユーリ!!!』は、強烈なインパクトを与えました。
小野 やはり久保ミツロウさん、山本沙代監督をはじめとした素晴らしいクリエイターと一緒に『ユーリ!!!』をつくったことで、社内的にもロールモデルができたんだと思います。それを軸にしてようやく放送枠として継続的に深夜アニメをやっていこうという提案が整った。
なので、NUMAnimationが成立した経緯までは、長い検討の歴史がありまして、積み上げてきたものの結果というのが正しいと思います。
──単発ではなく、枠名を冠してまで継続的にやっていこうという意思が固まったと。
小野 ベタなことで言えば、テレビ朝日はアニメの供給本数が少ないので、まだまだアニメで表現したいことがたくさんあるんです。他局さんに比べてやはり後発組ですし、現在はWeb配信など視聴方法も多様化しています。
その中で地上波放送を観ていただくにはどうしたらいいのかと考えたときに、きちんとブランディングをしたうえで、同時視聴体験ができるように整備するべきなのではないかなと考えました。
──枠開設後から2020年7月クールまではローカル放送でしたが、2020年10月クールからテレビ朝日系列全国24局ネットになったのはそのような意図があったんですね。 小野 確かに配信が普及したおかげで作品への接触の機会は増えました。いつでも最新エピソードに追いつくことができる。一方で、どこかでその作品にどっぷりハマるためには同時視聴での一体感などを感じることが必要で、その場を提供していくことが重要だと考えています。
キー局の強みを考えたときに、同時に作品を楽しんでいただくために全国ネットは不可欠だと初期から前提条件に入れていました。
枠名を考えるよりも、全国ネットにすべく各局と交渉する方が早かったと思います。毎週地上波で同時に楽しんで、SNSでも感想を言い合っていただく。そのような状況を整備すると、より楽しめるのではないかなと。
男子バドアニメ『リーマンズクラブ』中継権を活かしたスポーツもの
──これまでの編成作品を振り返ってみると、NUMAnimationとしてのオリジナル作品では、『体操ザムライ』(体操)や『RE-MAIN』(水球)、そして『リーマンズクラブ』(バドミントン)と、スポーツものが多い印象です。小野 深夜アニメ枠をやることになった際に、どうすればテレビ朝日のオリジナリティや強みが出せるのか考えました。
テレビ朝日にはスポーツの中継権を持っている競技が多くて、その面白さを伝えるプロのスタッフもいます。ならば、そういった人のアドバイスをすぐに聞けて、アニメスタジオにもフィードバックできるという強みを活かしてスポーツものをつくってみたらどうか、というような形ですね。
そもそも『ユーリ!!!』のときにも、社内のフィギュアスケートチームのバックアップによって、実際に取材することができました。
遠藤 『リーマンズクラブ』でも社内のスポーツ担当の協力があり、実業団チームに取材させていただきました。やはり専門のスタッフがいることで、リアリティを高めるお手伝いはできたんじゃないかなと思います。 ──オリジナル作品はテレビ朝日発の企画が多いのでしょうか?
遠藤 いえ、これまでの作品ですと『ユーリ!!!』くらいでしょうか。『体操ザムライ』も企画初期からご一緒させていただいておりましたが、テレビ朝日が主導していたわけではありません。ですので、NUMAnimationとしては『リーマンズクラブ』が初めてのテレビ朝日発作品となります。
──素朴な質問ですが、『リーマンズクラブ』はどのような経緯で企画されたのかお教えください。
遠藤 自分がそもそも中高生時代にバドミントンをやっていたんですが、その経験からバドミントンをアニメーションで表現したらキャッチーなものになるのではないかと常々考えていました。
そんな中、ライデンフィルムさん制作の『はねバド!』が2018年に放送されました。『はねバド!』は女子高校生によるバドミントンものだったんですが、それを観ながら「男子ならではのかっこよさと、バドミントンのスピード感をアニメで表現したら、面白いものになるのでは?」とイメージが浮かんだんです。
──『リーマンズクラブ』は確かに男子バドミントンものですが、そのまま中高生の青春ものではなく、社会人の実業団ものとなったあたりに妙を感じます。
遠藤 どういう方向性にするかを考える中で、女性の友人から「スーツ男子っていいよね」というフレーズが飛び出したんです。その瞬間、実業団チームのお話にしたら「大人の男性の魅力も付与した新しい切り口のアニメになるのではないか」と着想を得ました。
そこから企画書をつくり、知り合いを頼ってライデンフィルムさんに「『はねバド!』が素晴らしかったので、バドミントンものを一緒にやりたいです」とコンタクトを取りました。担当のプロデューサーさんからも好意的な反応をいただいたので、そこから企画内容を詰めていきました。なので、企画段階から男子実業団ものというのは決まっていましたね。
この記事どう思う?
作品情報
リーマンズクラブ
- 放送
- 2022年1月29日(土)より
- テレビ朝日系全国24局ネット“NUMAnimation”枠にて
- 毎週土曜 深夜1時30分〜放送スタート
- BS朝日・CSテレ朝チャンネル1でも放送
- テレビ朝日系全国24局ネット
- “NUMAnimation”枠2022年1月29日(土)より毎週土曜 深夜1時30分〜
- BS朝日2022年2月4日(金)より毎週金曜 夜11時00分〜
- CSテレ朝チャンネル1 2022年1月29日(土)より毎週土曜 深夜2時30分〜
- 配信
- 2022年1月30日(日)正午より順次配信開始
- Amazon Prime Video/FOD/J:COM オンデマンド/バンダイチャンネル/Milplus/TELASA/au スマートパスプレミアム/ABEMA/d アニメストア/Paravi/dTV/AnimeFesta./ひかり TV/Hulu/U-NEXT/アニメ放題/アニメカ/テレ朝動画/GYAO!ストア/クランクイン!ビデオDMM 動画/ニコニコチャンネル/ビデオマーケット/music.jp/Rakuten TV
- <スタッフ>
- 原作
- Team RMC
- 監督
- 山内愛弥
- シリーズ構成
- 内海照子、山内愛弥
- キャラクター原案
- ヤスダスズヒト
- キャラクターデザイン
- まじろ
- 美術設定
- 佐藤正浩(ヘッドワークス)
- 美術監督
- 甲斐政俊
- 美術背景
- スタジオ KAIMU
- 色彩設計
- 小野寺笑子
- 2Dワークス
- 渡部岳、中島俊 / 旭プロダクション デザイン部
- 3Dワークス
- FelixFilm
- 撮影監督
- 長谷川奈穂
- 撮影
- 旭プロダクション
- 編集
- 長谷川舞(editz)
- 音楽
- fox capture plan
- 音響監督
- 本山 哲
- 音響制作
- グロービジョン
- アニメーション制作
- ライデンフィルム
- 製作
- サンライトビバレッジ広報部
- 主題歌
- オープニングテーマ:Novelbright「The Warrior」
- エンディングテーマ:まふまふ「二千五百万分の一」
- <キャスト>
- 白鳥 尊
- 榎木淳弥
- 宮澄 建
- 三木眞一郎
- 佐伯蒼汰
- 石川界人
- 佐伯橙也
- 逢坂良太
- 竹田浩輝
- 柿原徹也
- 大野安臣
- 黒田崇矢
- 霧島隼人
- 福山潤
- 荻野目大樹
- 小野友樹
- 美空綾斗
- 村瀬歩
- 八神 純
- 石谷春貴
- 夏木陵
- 野津山幸宏
- 宇津木雅彦
- 浪川大輔
- 立花梓馬
- 八代 拓
- 外崎士龍
- 濱野大輝
- 間柴勇歩
- 土岐隼一
- 猿橋佑慧
- 岡本信彦
- 郷倉虎徹
- 杉田智和
- 松下幸治
- 伊丸岡篤
- 霧島琢磨
- 内田雄馬
- 出雲尚弘
- 古川 慎
- 伊吹泉太郎
- 置鮎龍太郎
- 仲邑周平
- 堀江 瞬
- 瀧本千空
- 白井悠介
- 政時 元
- 浜田賢二
関連リンク
連載
毎クールごとに膨大な量が放送されるアニメ。漫画やライトノベルを原作としたもの、もしくは原作なしのオリジナルと、そこには新たな作品・表現との出会いが待っている。 連載「アニメーションズ・ブリッジ」では、数々の作品の中から、アニメライター兼ライトノベルライターである筆者が、アニメ・ラノベ etc.を橋渡しする作品をピックアップ。 「このアニメが好きならこの原作も」、そして「こんな面白い新作もある」と、1つの作品をきっかけにまだ見ぬ名作への架け橋をつくり出していく。
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