総合ソングチャート「HOT 100」をはじめ、総合アルバム・チャートの「HOT Albums」、それらを合算したアーティスト・チャート「Artist 100」など全12部門について公式サイトに掲載。特設サイトでは、主要部門の分析も添えられている(外部リンク)。
「HOT 100」ではシンガーソングライター・優里さんの「ドライフラワー」が1位の栄冠に輝いた。
韓国の男性7人組ヒップホップグループ・BTS(防弾少年団)の「Butter」、昨年の1位だったYOASOBIの「夜に駆ける」がそれに続く。
特にBTSは、「HOT Albums」においても日本ベストアルバム『BTS, THE BEST』で首位を、5thスタジオ・アルバム『BE』で7位を獲得。「Artist 100」の頂点に君臨している。
“音楽的”なヒットチャート・Billboard
アメリカで最も権威があるとされる音楽チャート「Billboard」の日本版であり、2008年より開始された「Billboard JAPAN Charts」。CDやダウンロードの売上のみならず、ストリーミングやラジオ、動画の再生数やPCへのCD読み取り数、ツイート数、カラオケで歌われた数といった8つの指標に、独自の係数を掛け合わせて合算。総合ソングチャートとして算出している。
いわゆる握手券商法など、音楽以外の付加価値でランキングが左右されてしまう単一のCDセールスランキングと比較し、より“音楽的”なチャートとして評価されてきた。
YouTubeを代表とする動画メディアや定額制ストリーミング配信サービスの台頭など、時代の変化に合わせて指標や係数など算出方法の見直しを行い、音楽シーンを映す鏡となるようにブラッシュアップが続けられている。
しかし、皮肉なことだが、いつの時代もシステムをハックしようとする動きは存在する。
チャートに影を落とす、熱狂的なファンによる操作
Billboard JAPANは、「SNSでの話題性」を測るツイート数のカウント方法について、アーティスト名と曲名どちらも書かれているツイート(ハッシュタグの有無は問わず、リツイートやリプライも含む)が集計対象であることを公表している。Twitterでアーティスト名や曲名を検索したとき、まったく無関係の内容なのにも関わらず、それらが添えられているツイートを見たことはないだろうか?
熱狂的なファンが応援するアーティストをチャート入りさせるため、ツイート数を稼ぐために行なっているものだ。それを見た人がそのアーティストや楽曲を聴きたくなるわけでもない、むしろノイズにしかならないにも関わらず。
このような数字稼ぎは、Twitterのみならずあらゆるプラットフォームで組織的に行われている。
例えば、経済誌「Forbes」はBTSの熱狂的なファンによるチャート操作について取り上げている(外部リンク)。
確かに、それでもファンの熱量を可視化することは可能なのかもしれない。しかし、握手券商法とそれに果たして違いはあるのだろうか? 真の意味での「ポップ」には、到底及ばない。
もちろん、今回のBTSの1位が操作されているからふさわしくない、と批判したいわけではない。あくまで事実として、あらゆるランキングは操作が可能だということだ。
「新しい音楽との出会い」鍵はリスナーの手の中に
その楽曲・そのアーティストが好きだから再生・投稿するのと、チャート入りさせるために再生・投稿するのでは全く質が異なる。しかし、システム上では同じ1回としてカウントされてしまう。【ビルボード 2021年年間 アーティスト・チャート“Artist 100”】
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) December 9, 2021
1位 BTS
2位 YOASOBI
3位 Official髭男dism
4位 優里
5位 NiziU
6位 Ado
7位 back number
8位 LiSA
9位 あいみょん
10位 米津玄師https://t.co/573cVFxjT0 pic.twitter.com/E5PZeZLHo9
きっと、本当の意味でポップさを順位付けすることは不可能なのだろう。どんなにシステムをアップデートしても、結局は数字を稼ぎ合うゲームになってしまう。
常に産業の環境が変化していく音楽のチャートという性質上、完璧な意味でオーガニックなランキングをつくることなど不可能だ。
しかしそのような不可能性の中にいることを(おそらく)承知の上で、Billboard JAPANは、ヒットチャートの意義について次のように説明している。
ヒットチャートは、「新しい音楽との出会い」のために存在している。そしてそれは、ヒットチャートのみの役割ではないはずだ。チャートがなかったらカオスだ、とは米国チャートディレクターの言葉ですが、ヒットチャートは新しい音楽との出会いを可能にします。好きなアーティストの楽曲の順位を確認するだけではなく、他の楽曲も聞いてみて下さい。どんな曲にもヒットするには必ず理由があります。
<新しい音楽との出会いが世界を変える>そんな経験があなたを待っています。 【Billboard JAPAN Chart】よくある質問
「自分の好きなものを、他人に好きになってもらおうとする」こと。真のポップへの鍵は、リスナーの手にも握られている。
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連載
音楽配信の主流がCDからデジタルへ移り変わる昨今。CDの複数枚購入を促す従来の特典商法に加え、デジタルならではの「チャートハック」行為が音楽シーンに影響を及ぼしている。 アーティスト・レーベルの人為的な施策やファンダムによるチャートハックの是非。改めて、「音楽を楽しむ」とはどういうことなのか。 再生数やランキング結果など、わかりやすい「数字」の話題性・権威性に頼らず、アーティストや楽曲を知ってもらうためにできることを探る。
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