どんな建物にするのか、何を展示するのかなど、宮崎さんが自身の持つイメージをスタッフたちに伝えるべく描いてきたイラストなどを900点以上収録した書籍が、『宮崎駿とジブリ美術館』だ。
同書には、宮崎さんや鈴木敏夫さんが「ジブリ美術館」20年の歴史を語るインタビューや、宮崎さんと美術館をつくり上げてきた開館当初からのスタッフが語る、実現不可能だった無茶なアイデアを含む裏話なども収録された豪華2冊仕様となっている。
膨大な資料を収録した『宮崎駿とジブリ美術館』は現在発売中。ハードケース入りで2冊セットで約600ページの大型特別本。価格は2万5000円(税別)。
【画像】巨匠・宮崎駿が理想を現実にするために描いたもの
世界からファンが集まる「三鷹の森ジブリ美術館」
1997年頃から構想が始まり、宮崎さんが1本の映画をつくるようにかたちづくっていったという様々なアイデアを取り込み、2001年に開館。それ以来、世界中のスタジオジブリファンが訪れている。
展示室では1年から1年半ごとに展示企画が行われており、2020年までの間に「天空の城ラピュタ」「アルプスの少女ハイジ」など18のテーマで展示が行われ、そのうち13のテーマが宮崎さんの発案から制作されたという。
宮崎駿の直筆のアイデアをカラー収録した豪華2冊組『宮崎駿とジブリ美術館』
「ジブリ美術館」の歴史を収録した『宮崎駿とジブリ美術館』は、『美術館をつくる イメージボード、スケッチ集』と『企画展示をつくる 2001年〜2020年の軌跡』の2冊で構成されている。『美術館をつくる イメージボード、スケッチ集』では、宮崎さんが美術館のイメージを共有するために描いたイメージボードと呼ばれる水彩画や、スタッフへの指示のために描いた下絵やラフスケッチ、コピー用紙などに描いた落書きなど、保存されていた膨大な資料の中から選りすぐった900点をカラーで収録。 美術館の20年の歩みを語った宮崎さんへのインタビューや、宮崎さんの無謀ともいえる構想をどう実現したのかを語った鈴木敏夫さんへのインタビューも併せて掲載される。
『企画展示をつくる 2001年〜2020年の軌跡』では、多岐にわたる企画展示を制作するにあたって宮崎さんが考案した展示方法のスケッチや、展示のためにつくられた制作資料が紹介される。
『宮崎駿とジブリ美術館』刊行に寄せて鈴木敏夫の語る「ジブリ美術館」
「絵でモノを考える」
ふつう、人は言葉でモノを考える。しかし、宮崎駿はそうじゃない。絵でモノを考える。ぼくの知る限り、そんな人は彼をおいて他にいない。
ジブリ美術館を作ることになったとき、宮さんに質問された。
「何をやればいいのか?」
「ふつうだと、アニメーション映画はどうやって作るのか、ですね」
ぼくがそう言うと、宮さんは鉛筆を手に、目の前にあった紙に無言で絵を描き始めた。机に向かって、物語を構想する少年の絵だ。
「つぎ(の部屋)は?」
「キャラクターと美術ですね」
こうして、いくつもの部屋のイメージボードがあっという間に完成した。それをぼくに見せて、意見を求める。
部屋を順番に見ていくと、まるで「紙芝居」のように物語性があった。しかも、描いた絵の情報量が半端じゃない。部屋のドアノブから机のデザイン、壁に飾る絵、照明器具などなど細部まで具体的に描き込んである。そして、自ずと、アニメーションの作り方も分かる仕掛けになっている。
その日をきっかけに、美術館のために宮崎駿は絵を描きまくった。その絵が全部で何点になるのか、ぼくは数えたことがない。ぼくにしても、この本で、初めてその全貌を知ることになる。
アニメを深く読み解くための本
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