ジョーカー愛ハンパない『バットマン』ファンムービー 1分40秒に凝縮した1年4ヶ月のこだわり

完成度の高さはペン画、カット割り、セリフの頻度などから

──随所にこだわりが詰まっていると思いますが、特に追求した点はありますか?

奈良だけど千葉さん 一番こだわったのは、やはりコミック調の描画です。

いわゆる「アメコミ」はカラーイラストの印象が強いと思いますが、アートの下地に力強いペン画表現があります。そのペン画が魅力的だからこそ、キャラクターや情景がカッコ良く見えており、すべての基本だったりもします。 奈良だけど千葉さん 原作の『喪われた絆』のアートを担当したGreg Capulloさんのアートがとても好きで、そのペン画のカッコ良さに少しでも近づけるように、今まで研究してきた表現をすべてぶつけてみました。

映像からタッチの強弱、力強さなど、ペン画の複雑なニュアンスを再現しようとした感じを受け取ってもらえたら嬉しいです。

──何よりもコミック調で動いている! と感動しました。そのほかにこだわった点はありますか?

奈良だけど千葉さん あとは物語性ですね。今回の動画は架空の予告編ということで、見た人に物語の全体像を想像して欲しいなと考えていました。

そこで「その場面で何が起こっているか?」を伝えるために、あえて長尺のアクションシーンは入れず、短いドラマシーンのカットを多くつくり、場面展開が豊かになるように絵コンテを設定しました。 奈良だけど千葉さん そうすることでシーンごとの背景、キャラクター、セリフの掛け合いが変化して、物語が進んでいる感を演出するよう心がけました。

その代わりにカットシーンが多くなってしまい、(カットシーンアニメーターの)とごたくさんには負担をかけてしまいましたね……。その甲斐あって、物語の全体像を想像できる演出ができたのではないかと思っています。 奈良だけど千葉さん この短いカット割りは、コミック表現にも繋がっている重要な要素です。例えばセリフは、その有無で全然違って見えるんですよ。セリフがあるだけでグッとコミックらしさが出てきます。

カットが変わるたびにセリフを表示することでコミックらしさを演出しており、かつ場面の状況も伝えるようにしました。こうすることで、コミックらしさがありつつも、物語を伝えることができていると思います。

厄介な“3Dっぽさ”をどう補ったのか?

──なるほど、短いカット割りがクオリティを高めている要因の1つなんですね。

奈良だけど千葉さん ほかにも“3Dっぽさ”を無くすことにも役立っています。

3Dで激しく動く長尺カットだと、どうしても“3Dっぽさ”が出てしまいます。それはカメラやキャラクターを立体的に動かしすぎることで、3Dとしての正確さが出てしまうからです。そして、その正確さが3Dの安っぽさに繋がってしまいます。

それを回避するため、短いカット割りで動かす範囲を制限しました。そうして「立体的な絵」ではなく「平面の絵」に近づけるよう努力しました。結果として“3Dっぽさ”を極力減らし、コミックの絵としてのカッコ良さを出せたのではないかと思います。

ほかにも短いカット割りにして、レイアウトをこまめに変えて、ライティングの色味を変化させて……と、コミックのコマ割りによる場面展開の多様さを再現するのにも効果的でした。 ──カットシーンアニメーター・とごたくさんのこだわった点を教えてください。

とごたくさん 原作が持っている力強いメッセージ性や、物語の雰囲気を崩さないように動きを付けました。

原作はコミックなので、止め絵から動きの想像をするわけですが、すべての場面で同じように動かすわけではなく、場面1つひとつが持っている意味を加味しながら動きのニュアンスを少しづつ変えて制作しました。

例えばハンマーで殴る場面では、シーンの中で完全に動きを止める時間があるのですが、あえてトメ絵をつくることによりコミックが持っている絵の力強さをより強調しました。 とごたくさん 動きの方向性がしっかりと決まったのは、奈良さんからレンダリング動画を初めて見せていただいたあとです。

それまでつくっていた動きが、レンダリングを通してみると動きすぎて見えたので、動きをかなり抑えめにしたシーンもあります。そういう試行錯誤を奈良さんと繰り返しているうちに、1年以上の歳月を1分弱の動画にかけてしまいました。

ですが原作ファンの方から「コミックの雰囲気が出ている」という旨のコメントを多くいただけたので、1年かけた苦労が本当に報われた気分です。 ──原作のアートを手がけたGreg Capulloさんも反応されていて、本当に素晴らしい作品だなと感動しました。ありがとうございました! 【画像】こだわり抜かれた場面カット

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