30代童貞から電撃結婚したヒゲドライバーをお祝いにいった話

コロナ禍でのクリエイティブとインターネット

近年の環境の変化ということでは、やはり新型コロナウイルス感染症があります。コロナ禍でのクリエイターの方々って、「クリエイティブな気持ちにならない」人もいれば「逆にやる気が出る」人もいましたが、ヒゲさんはどちらですか?

うーん、あんまりどちらでもないですね。

わりと自然に受け止めた感じですか?

気分は下がることが多かったですね。でも、家に彼女がいて、犬がいて。それはだいぶ癒しになりました。だから、独り身だったら大丈夫だったかな…って。

こういう状況だとクリエイターは「自分の原点と向き合う時間になった」とか、そういう話もけっこう聞きました。

インプットはたくさんしました。一緒にゲームしたり、映画観たり、それこそ曲を一緒につくってみたり…。

何か印象に残っているものはありますか?

普段は映画とかそんなに観ないんですけど、一緒にいろいろ観て。あ、『ハリー・ポッター』を初めて観た(笑)。面白かったな。

観たことなかったんですね!

そうなんですよ。あと、『ストレンジャー・シングス』も面白かったな。「こんな面白いのか。みんながハマるのも納得だわ」ってなった(笑)。

2020年にようやく『ハリー・ポッター』とか『ストレンジャー・シングス』観て、納得したのか(笑)。

反骨精神もあり、今まで“王道”と言われるものにはあんまり触れてこなかった人生だったんですよね。けど、それも触れてみると、やっぱり王道が王道たる所以はあるなあと素直に思いましたね。

では、お仕事の環境面ではあんまり変わらなかったですか。もともと基本在宅で作曲制作を?

そうですね。そこはいつもどおりでした。と言いつつ、インターネット疲れるな…というのはあって。

インターネット・ミュージシャンが『インターネット疲れた』発言。

コロナ禍でそう思うようになっちゃったのも大きいですけど、インターネットを使うことがずいぶん一般化したじゃないですか。

もはやわざわざ“インターネット”って呼ばないくらい。

それくらい一般化しちゃったら、引っ張られすぎないようにして、自分の精神衛生を保つのは大事だなと思って。

そうですよね。

音楽も流行に左右されるようなことばかりしてるとつらくなりますし、インターネットもあんまり左右されるとしんどい。そもそも僕自身、“自分がちゃんと好きで続けられる”を大事にしてきたからこそ15年やってこられたから。

ヒゲさんはインターネットとの適切な距離、とれるようになってきましたか?

いや、全然(笑)。今まさに探っている最中です。難しいですよね。インターネットから離れようとテレビをつけてもYouTuberが出てくるとか、それだけ垣根がなくなってきていて、インターネットが一般化したので。

もともと“インターネット大好き”が先行してたわけじゃなくて、地方で音楽活動をしていた僕にとって“人と繋がれるのがインターネットだった”って感じなので。

人と繋がれるツールのひとつだった。

今は東京にいるからインターネットでしか人と繋がれないってわけじゃなくなった。あとは、ひとりじゃなくなったから言えるのかもしれないです。ひとりだったらインターネットしか見るものがなかったから。

今日ほとんど結婚の話をうかがってしまいましたが、やっぱり結婚の影響ってあらゆる面で大きいんだなって思いました。

結局そこに軸があって、生活と音楽ができている感じはしますね。

改めて、“ヒゲドライバーの第2章”

同級生にお会いし、ご実家にまで押しかけ、何度も取材させていただいた僕からすると、とても失礼ですが偏屈でひねくれたヒゲさんが、どんどん自由になられているなって感じます。

半生を振り返っていただいたときに思ったのが、ヒゲさんは自分に「こうしなきゃ」って枷をかけるじゃないですか。※7 自分ルールというか。そこからどんどん自由になっていると思うんです。

※7 結婚する前提だから手を出さずにフラれてしまった元カノとのこと、逆に男らしさを学びたくてホストになったこと、同じニコ動出身だけど当時ボカロPとはコラボしないと決めていたこと、音楽に集中するために恋愛を封印したこと etc…ヒゲドライバーは強いこだわりを自分に課しているようなところがあった

ああ、自分ルール…そうですね。自分本位的だったけど、丸くなったと思います。

かつて、「絶対に楽曲はチップチューンじゃないといけない」という強迫観念があったヒゲさんが、村田さんと出会ったことでそのこだわりを捨てて作風が広がったという話がありました。※8 このご結婚も、良い意味で作用されて、その枷が外れていっているように思えました。

※8 アルバムをリリースするも収入がもらえず路頭に迷いかけた時代。チップチューンから知ってもらったファンが離れていくことを恐れたヒゲさんだったが、村田さんのアドバイスをうけてチップチューンに固執することを辞めた。結果、作風を広め活動領域が広がり、作家として成功した今に至る

ヒゲドライバーの10周年イベントにて

そう言われると、自分ルールみたいな考え方は確かにちょっと変わったかな…。相手がいることもあって、表現の面でも“誰かのために”って考え方のほうが多くなったかもしれないです。

こじつけではなく、『ひげこれ!』を含めてこれまでの作品を改めて通しで聴いてみると、やはり作風が広がって多様な楽曲が生まれていると感じるんですよね。

HIGE DRIVER BEST in KADOKAWA ANISON『ひげこれ!』

久しぶりにお会いしましたが、良い意味で充足されている感じがありますし。

充足してるんですか?

充足してるのかなあ…でも、してると思います。はい。

私生活は充足してるんだろうけど、全体的には?

アーティストとしてはまだかな。まだできることあるなとは思うようになった。今までと同じようにやっててもなって。「音楽だけで!」って気持ちではなくなったんですよね。

それは、何かきっかけはあったんですか?

やっぱり『Re:ゼロから始める異世界生活』がひとつのでっかいポイントだったんですよね。劇中で『Wishing』が流れて、自分の音楽で一番泣いたってくらい泣いちゃって、「それはなんでだ?」って考えて。音楽って、音楽以外のところで演出できるんだなって気づいたんですよね。

音楽も加わった物語が一番強いと考えたから?

一番とまでは言わないけど、音楽以外の手段で、音楽がわっと届く可能性があるんだなって。音楽が好きで、音楽をつくりたい気持ちはもちろんありますけど、その周りも見るようになったというか。

せっかくインターネットの時代なので、いろいろチャンスはあると思いますし、まだチャレンジできることはたくさんあるなと。

具体的に何かチャレンジし始めてるんですか?

最近は海外向けのYouTubeを始めたり、あとは「ゲームをつくりたい」って話をしていたり。イラストレーターのよむさんと「ヒゲとタイツと女子高生と」っていうプロジェクトも始めるし。

ありがたいことに、周りの人から「ヒゲドライバーさんとこういうことをやってみたい」と言っていただくこともあります。

音楽じゃないものが音楽を引き立てるという意味では、アーティストにとっては、ご自分の物語もそれに入るわけですよね?

確かにそうですね。自分の人生が、音楽に彩りを与えられたらいいなとは思います。

この言い方があっているかはわからないですけど、ヒゲさんの場合、どん底があって、死別があって、その上で自分の理想を掲げて、成り上がっていっている物語じゃないですか。有言実行で夢を叶えてきた物語。その物語は強いと思うんですよね。

童貞売りだったのがいきなり結婚して、その彩りがどうなるか…武器にしていけたらいいですね。

そのためにもお幸せになられてください…!

そうですね(笑)。

最後に、聞きたいことがあります。組み合わせが組み合わせなだけに、結婚しても発表しないという方法もあったと思います。なぜ、あえて発表されたんですか

僕も相手の方もそうなんですけど、隠すのが嫌で。悪いことしているわけじゃないし、それも失礼というか、応援してくれる人達に対して悪い気がして

童貞ネタも使わずうやむやにしながらこれから生きていくのか、と(笑)。スパッと発表して、堂々と「この人を愛しているんです」っていう人生でいいんじゃないかなって。そこは迷いがなかったです。向こうも絶対に発表したいって言ってくれました。

素晴らしいですね。以前は逆の風潮でしたが、近年、みなさん結婚を発表されるようになったように感じます。

カップルYouTuberが人気だったりとか、そういうこともオープンにして認められる日本になってきたような感じもするので、タイミング的にも良かったのかなって思いますね。

過去には声優さんの結婚発表で荒れるケースもありましたが、お二人の結婚をみんなが祝福されていて、それがすごく印象的でした。

ありがたいです。

オープンな時代にもなったし、特にヒゲさんの場合は全部さらけ出されてきましたもんね。

そう、ここだけ隠すっていうのも変なので(笑)。

僕が言うのもなんですが、ヒゲさんは、本来ミュージシャンが話す必要のないことも赤裸々に語ってきてくださったじゃないですか。これまで付き合ってきた女性遍歴や子供の頃の恥ずかしい話、それにご家族の話まで。だからこそ、ミュージシャンとしてはもちろんですが、みんな「ヒゲドライバー」を応援してくれるんだと僕は思います。

「15周年記念の曲をつくってください」と言ったんですよ。今までの半生を振り返って、自分の中から出る15周年の曲を。

完全にオリジナルのやつです。それは今つくっていますね。15周年が終わらないうちに…年内には出します!

それは本当に楽しみですね。今日は赤裸々にお話いただきありがとうございました。本当に、おめでとうございます!(3回目)

恋愛と音楽の両立の道を見つけたヒゲドライバーさんは、第2章に突入。これまでどおり音楽活動を続けていくのはもちろんのこと、より多くの人々に音楽を届けていくための活動の拡張についてもうかがうことができました。

本当に活動15周年、ご結婚、おめでとうございます。これからもKAI-YOUはヒゲドライバーさんのご活躍を追いかけていきます。

12月4日追記:読者プレゼント

ヒゲドライバーさんの直筆イラスト付き『HIGE DRIVER BEST in KADOKAWA ANISON「ひげこれ!」』を3名の方にプレゼントいたします!

下記概要を確認し、ふるってご応募下さい。

【応募方法】
1.KAI-YOU.netのTwitter(@kai_you_ed)をフォロー
2.以下のツイートをリツイート 【応募期限】
2020年12月10日(木)23時59分まで

【応募条件】
・日本国内に在住の方
・KAI-YOU.netのTwitterをフォローしている方
・TwitterのDM(ダイレクトメッセージ)を受信可能な方

【当選発表】
ご応募いただいた方の中から抽選し、当選者を3名決定します。
当選者のみ、TwitterのDMにてお知らせいたします。

※都合により当選通知のご連絡が遅れる場合がございます。あらかじめご了承ください
※都合によりプレゼントの発送が遅れる場合がございます。あらかじめご了承ください
※住所の不備や転居先不明・長期不在などによりプレゼントをお届けできない場合は、当選は無効になります
※本キャンペーンの当選権利を他者に譲渡することはできません
※ご連絡後、一定期間お返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
※発送は当選お知らせ以降、順次対応させていただきます。

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