【座談会】自主制作アニメで食べていけるか? 個人作家が語る“生き方”への本音

商業出身の2人「フルリモートでもアニメはつくれる」

塚原重義さんによるプロジェクトファイル

最後のテーマ「プロジェクトファイル解剖」では、それぞれ秘蔵である制作の裏側を明かしながらより専門的な創作論を交わし合う。

青年が双眼鏡を手にたたずむ。そのワンカットに重ねられた何重ものレイヤーに、一同から思わず驚愕の声が上がったのは塚原さん。
アニメ「クラユカバ」パイロットフィルム
ノスタルジックな風合いと手の届かぬ異界を思わせる怪しさを、絶妙のバランスで調和させる独特な色彩は感覚で生み出すものだという。

それゆえに制作時間も膨大になるそうで『クラユカバ』のパイロットフィルムでは、1分の映像の撮影に1か月を要したとこぼし、「とても真似できない」と共演者たちをさらに驚かせていた

ずっと真夜中でいいのに。「お勉強しといてよ」MVの裏側

はなぶしさんとヨツベさんは共に制作したずっと真夜中でいいのに。「お勉強しといてよ」MVのプロジェクトファイルを公開。

はなぶしさんの描くイメージボードを元にヨツベさんがCGモデリングを行い、その上にキーとなる動きが描かれていく。
ずっと真夜中でいいのに。『お勉強しといてよ』MV
素材はネット上でやり取りし、打ち合わせもLINEと、フルリモートで制作。「フルリモートでもアニメってつくれるんだと思った」と、商業出身の2人ならではの発見も興味深い。

「二度と表に出したくない」執念にじむ制作の裏側

沼田友さんによるメモ

一方、手書きのメモを公開したのは沼田さん。

広げられたメモの中身はキャラ設定やあらすじ、時系列ごとの展開、セリフなど、思いついたことをとにかく詰め込んだ、まさしく秘蔵のアイデアノートだ。

中には当時アルバイトしていたレストランのメモの裏に書かれたものなど、ただならぬ創作への熱意が感じられるものもあった。

「二度と表には出したくない」と本人は恥ずかしそうにしていたが、当時の執念まで伝わる資料は貴重で、配信を見る視聴者もコメント欄で賛辞を送っていた。

こむぎこ2000さんが披露した制作工程

こむぎこ2000さんは実際に制作工程を辿りながら作品が出来上がる様子を紹介した。

背景となる雲や街などの素材は使いまわしているそうで、描くべき部分は緻密に描き、それ以外は簡略化して効率性を重視する姿勢も印象的だった。

同じアニメとして表出するが、その制作の過程は十人十色。

あまりに白熱したトークは当初の予定を大幅にオーバーしながらも、「自主制作アニメーションの可能性」を巡る議論が交わされ幕を閉じた。

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1件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:3424)

とんでもなくボリューミーな座談会だった。自主制作が売れる市場ができたら、既存の「アニメ」のイメージ変わりそう