様々な角度から研究の対象ともなっているゲームと、その手法を使ったメディア・アート、芸術性を追求するゲーム作品、さらには現代美術における遊戯性の系譜まで、広くゲームとアートの領域が重なるところをとりあげ、両者の関係と新たな表現の可能性を考える内容になっている。
アーティスト、学芸員などの識者が考察
PART1では「ゲームアート」と呼ばれる領域を中心に、アートにおける新たなメディアとしてのゲームについて紹介。巻頭アーティストインタビューでは、国内でいち早くゲームの技法を取り入れてきた谷口暁彦さんと、岡山芸術交流などに出品したことでも知られ、ゲームAIを使った制作を行うイアン・チェンさんが登場する。 また、このテーマを考えるうえで知っておきたいゲーム用語などのキーワードをイラスト入りで解説。
愛知県美術館学芸員・副田一穂さんによる、アナログゲームなどをモチーフとしたアーティストの実践の紹介、若手アーティスト・大岩雄典さんによる「ゲームブック」形式の論考などから、ビデオゲームにとどまらず両領域の関係を考察する。
商業ゲームにおける「美」の概念とは
PART2では、ゲームにおける芸術性に着目。ゲームクリエイターから、国内外で注目される個人制作者・麓旺二郎(もっぴん)さんと、『ぷよぷよ』で知られ、現在は上演形式の作品なども手がける米光一成さんにインタビュー。
また、商業ゲームにおける「美」の概念を、批評家・藤田直哉さんが分析する。 主に作品性を重視したインディ・ゲームを指す「アートゲーム」と呼ばれる分野については、ゲーム研究者・松永伸司さんの監修により紹介。
テーマ別の作品カタログのほか、アートゲーム制作者の草分けとして知られるジェイソン・ローラーさんがその制作について語るインタビュー翻訳も掲載する。
『あつまれ どうぶつの森』とコロナ禍の世界を考える
PART3は論集として構成。ゲーム制作者・文筆家の山本貴光さんによる、初期コンピュータ・ゲームを題材としたゲームの視覚効果の分析、世界的ゲーム研究者のイアン・ボゴストさんと美学者・吉田寛さんによる、『あつまれ どうぶつの森』とコロナ禍の世界について考える対談、近現代美術史にゲームの系譜を見出す中尾拓哉さんによる論考などを掲載する。
そのほか、ゲームにおける多様性やフェミニズムに注目するキュレーターのイザベル・アルヴェールさんへの取材や、ゲーム内で撮られた写真作品「インゲームフォトグラフィ」のビジュアルページなど、120ページ超の大ボリュームの特集となっている。
また今号では、久門剛史さんのロングインタビューや、コロナ禍における世界のアートシーンの状況レポートも掲載される。
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書籍情報
『美術手帖』8月号
- 発売日
- 7月7日(火)
- 定価
- 1600円+税
- 発行元
- 美術出版社
・特集内容
【PART1 アートに見るゲーム的実践】
谷口暁彦
砂山太一=聞き手
イアン・チェン
沖啓介=聞き手
ゲーム×アートを考えるためのキーワード解説
谷口暁彦+松永伸司+大岩雄典+吉田寛=文・構成
コラム:イザベル・アルヴェールに聞く
世界のゲームアートとポストコロニアル/フェミニズム
THE WORLD OF IN-GAME PHOTOGRAPHY
ブノワ・パイエ/オリー・マ/相川勝/ロバート・オーヴァーヴェック
クレア・ヘンシュカー/ロック・エルムス/レオナルド・サン/ケント・シーリー
ジョシュ・テイラー/エロン・ラウチ
アナログゲームから読み解くアーティストたちの実践
副田一穂=文
[ゲームブック]壁抜けと攻略:インスタレーションとヴィデオゲーム(をプレイする)
大岩雄典=文・構成
【PART2 表現としてのゲーム】
麓旺二郎
今井晋=聞き手
米光一成
島貫泰介=聞き手
[論考]ヴィデオゲームにおける「美」とは何か? 藤田直哉=文
トピック別アートゲーム作品ガイド
松永伸司=構成 葛西祝=文
コラム:「意図せざる社会秩序」の生成を表現するメディアとしてのゲーム
井上明人=文
ジェイソン・ローラー
イェスパー・ユール=聞き手 松永伸司=翻訳
【PART3 ゲーム×アートの論点】
[論考]みる→さわる→わかる→ ──ヴィデオゲームの視覚表現と経験
山本貴光=文
コラム:先取られるリバイバル
『スプラトゥーン2 オクト・エキスパンション』に見るレトロ表象の美学
gnck=文
[論考]ミュージアム・コレクションとしてのヴィデオゲームをめぐる諸問題
副田一穂=文
[論考]ゲームの展示、展示のゲーム
松永伸司=文
イアン・ボゴスト×吉田寛
「説得的ゲーム」と『あつまれ どうぶつの森』
[論考]アート・イン・ザ・ゲーム──ゲームアート前史
中尾拓哉=文
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・その他
ARTIST INTERVIEW
久門剛史
德山拓一=聞き手
特別寄稿
文章を書くこと、翻訳すること、文章のなかで翻訳物と向き合うこと
高橋さきの=文
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