『ドラえもん』、そして作者の藤子・F・不二雄先生の思想を、批評家・杉田俊介さんが読み解く。
刊行に際して、担当編集・大久保潤さんは「藤子・F・不二雄先生が作品に込めた『思想』とは何だったのか。人類の未来についての深い絶望をかかえながら、子どもたちに伝えようとした希望とはどんなものだったのか。あらためて、藤子・F先生とドラえもんが私たちに残してくれたものを考えるきっかけになれば幸いです」とコメントしている。
過去にもさまざまな著名人・キャラクターを分析してきた杉田俊介
著者の杉田俊介さんは文芸誌や思想誌など、さまざまな媒体で文学やアニメ、漫画といった作品の批評活動を展開してきた批評家。これまでにもスタジオジブリの作品を世界に発信した宮崎駿さんを紐解く作家論をまとめた『宮崎駿論』(NHKブックス)や、「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズを分析した『ジョジョ論』(作品社)といった著作を刊行してきた。
『ドラえもん論 ラジカルな「弱さ」の思想』では、てんとう虫コミックスから刊行された漫画『ドラえもん』と、劇場版アニメや長編をそれぞれ題材にしている。
漫画の全45巻に込められた弱さとやさしさの思想、そして登場人物たちが作中で見せるそれぞれの成長。そして、大長編や映画作品で取り組んだ「政治」「宗教」「科学」「進化」という4つのテーマ、そこで描かれた絶望と希望について、紐解かれる。
世界的に愛されてきた作品に込められたラジカルな思想と、にも関わらず無条件に楽しめるという『ドラえもん』の凄みを、杉田俊介さん自身の強い思い入れを込めて綴った一冊。
担当編集「『子ども向け』であることは、『子ども騙し』とは違う」
担当編集の大久保潤さんはKAI-YOUの取材に対し、『ドラえもん』は知名度の割にそこに何が描かれているのか、語られることがあまりにも少ないという疑問を呈する。そして、子供向けながら、著者の藤子・F・不二雄さんがどのような思想をそこに込めているのか。著者の杉田俊介さんが丁寧に紐解いているという。
『ドラえもん』のことは誰でも知っている。しかし、そこに何が描かれているのか、語られることはあまりにも少ないのではないでしょうか。子ども向けのマンガだから、真面目に論じるに値しないと思われているのでしょうか。
「子ども向け」であることは、「子ども騙し」とは違います。藤子・F・不二雄先生は、のび太をはじめとしたキャラクターたちを長い時間をかけ、ゆるやかに成長させていきました。また、「異色短編」と言われる大人向け作品で描かれたおそろしくニヒリスティックな世界観は、やはりドラえもんにも色濃く反映されています。
本書は、初めて観た映画が『のび太の海底鬼岩城』だという著者が、それを丁寧に読み解いていったものです。藤子・F・不二雄先生が作品に込めた「思想」とは何だったのか。人類の未来についての深い絶望をかかえながら、子どもたちに伝えようとした希望とはどんなものだったのか。
あらためて、藤子・F先生とドラえもんが私たちに残してくれたものを考えるきっかけになれば幸いです。Pヴァイン 大久保潤さん
まえがき
第1章 『ドラえもん』の世界──のび太は弱いのか?
第2章 「大長編ドラえもん」の思想──科学・宗教・政治・進化
(1) 一九八〇年代前半──人間はどのように生きるべきか?
(2) 一九八〇年代後半──人類はどうあるべきか?
(3) 一九九〇年代前半──人類は自滅せずにすむのか?
(4) 一九九〇年代後半──ニセモノにとって生命とは何か?
第3章 異色SF短編を読む
第4章 ドラえもんの夢──約束としての戦後民主主義
あとがき ドラえもん論 ラジカルな「弱さ」の思想 目次
「ドラえもん」を考える
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