連載 | #27 コミックマーケット96

「コミケ96」VTuberブースの衰えない活況 ブームはカルチャーとなるか?

「コミケ96」VTuberブースの衰えない活況 ブームはカルチャーとなるか?
「コミケ96」VTuberブースの衰えない活況 ブームはカルチャーとなるか?

POPなポイントを3行で

  • コミケ96のVTuber関連ブースを取材
  • 各担当者が語るコミケ出展の手応え
  • 2019年、VTuber業界はまだまだ拡大路線
8月9日から4日間にわたって開催された「コミックマーケット96」(C96)。初めての試みながら史上最多の73万人が来場し、大いに盛り上がりを見せた。

企業ブースを取材に訪れた4日目、バーチャルYouTuber(VTuber)関連のブースの前には長蛇の列ができていた。

青海展示棟の2ホールのBホールは、入り口の手前1列がすべてVTuber関連企業によるブースだった。

左手前からActiv8、Unlimited、いちから

2019年の当初、ブームが終わり幻滅期が訪れるのではないかと言われていたVTuber業界。コミックマーケットの4日間は、そして2019年上半期は企業の視点からどのように見えたのか。いくつかの各ブース担当者に話をうかがった。

各担当者が感じたコミケの手応え

今回のコミケについてうかがってみると、各ブースの担当者は口を揃えて「かなり盛況」と答えてくれた。

キズナアイさんらが参加するバーチャルYouTuber支援プロジェクト「upd8」を運営するActiv8株式会社の担当者は「(前回と比べても)バーチャルYouTuberを愛してくれる人がしっかりブースに来てくれた」と振り返る。

Activ8運営の「upd8 & collaboration!」ブース

ときのそらさんらが所属するホロライブでは、この夏は「ホロライブサマーと銘打ってのキャンペーンとして水着の3Dやムービーの制作に重点を置いた」とのこと。コミケのブースもキャンペーンに合わせた内容を打ち出していた。

ホロライブサマー/画像は公式写真

客足について「(盛っている訳ではなく)大変な反響があった」としつつも、ブースへの集客自体ではなく明確なビジョンを公的な場で大きく打ち出すことを重要視している姿勢を語った。

「ホロライブ」ブース/画像は公式写真

いちから株式会社の運営するバーチャルライバー集団・にじさんじブースもやはり「4日間、別会場ということで人が減るんじゃないか」と不安があったとしつつ、「客足はかなり好調」だったという。

いちから運営の「にじさんじ」ブース

いずれも、VTuber関連の企業では今回のコミケについて確かな手応えを感じているようだ。

実際、筆者の主観ながら、現地の盛り上がりも他の企業ブースと比べて遜色ないか、あるいはそれ以上のように見受けられた。 企業ブースのある青海展示棟は一般サークルの会場から大きく離れており、最終日ということもあってか会場にはかなりの余裕が感じられた。それでもVTuber関連のブースの前にはしっかりした行列が並んでおり、upd8やにじさんじのブースでは早々にグッズの売り切れを出す人気ぶりだった。

一般サークルの会場でもVTuber関連ブースの紙袋(ショッパー)をさげた参加者の姿を多く見かけた。

コンパニオンさんが手にした「Unlimited」ブースで無料配布されていたショッパーは、多くの参加者が持っていた

VTuber業界はまだまだ拡大路線

では今年に入ってからのVTuber業界について、「ブームが終わり幻滅期が訪れているのではないか」という見方について、各企業はどのように捉えているのか。

ゲーム部プロジェクトなどを運営する株式会社Unlimitedは「コミケも初出展ながら多くのファンの方にきていただいた」と好感触。「これからについても衰退していくという印象は全くない」と話す。

Unlimitedブース

ホロライブでは「これまでタレントやファンと一緒になってきてつくってきた。そこは変えていくつもりはない。このコミケも次に向けてのステップのひとつ。今後の動きに注目してほしい」との回答を得た。

来週には中国でbilibiliワールドへの出展も控えており、現場は休みなく動いているようだ。 印象的だったのはActiv8からの回答だ。「(文化にしていくであるとか)思いがある会社が残る、うまくいかず撤退する会社はどこのコンテンツでもある」と冷静な答え。

今後の展望については「ブームが始まって1・2年で一定の認知はして貰えていると思うので、初音ミクにおける千本桜のような一般に広く届くヒットコンテンツ・タレントが出てくるまで頑張り続ける」とした。 この5月からは“分裂”を果たし、そのライブには中国語を話せる人格も登場したキズナアイさん。 キズナアイさんに限らずという前置きの上で「日本から始まったコンテンツがどう世界に広まっていくか、というところは意識している」と担当者が語ったように、VTuberをブームとしてではなく文化として、それこそ初音ミクのような10年単位で定着するものとして根付かせていくという意気込みをうかがえた。

企業側としてはまだまだVTuber業界は拡大していくだろうと実感しているようだ。

ブームの幕開けから2年が経過。当初から追っているファンとしては、活動を続けてきたVTuberの引退などネガティブな話題もあり、真新しいニュースへのポジティブな印象や業界全体が拡大しているという実感を得られないという意見もあるだろう。

しかし引退する以上の勢いで様々なVTuberがデビューを飾り、それに伴いファンの裾野も様々なところに広がっていることだろう。ブースに並ぶ行列や紙袋を下げる一般参加者の姿が特に印象的だ。

半年前、冬コミで取り上げた記事と比較すると、今回の夏コミでのVTuber関連の出展は順当な形で拡大しているようにも感じられる。 ブームとしてではなく文化としてVTuberが根付いていくどうか。真新しさだけでなく各VTuberの運営がどのようなビジョンを持って行動していくかが鍵を握りそうだ。

様々な思惑とビジョンが交錯するVTuberシーン

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