連載 | #21 コミックマーケット96

【コミケ96】史上初4日間、全日程参加レポ 企業、コスプレ、サークル、一般それぞれの声

【コミケ96】史上初4日間、全日程参加レポ 企業、コスプレ、サークル、一般それぞれの声
【コミケ96】史上初4日間、全日程参加レポ 企業、コスプレ、サークル、一般それぞれの声

「コミックマーケット96」

史上初の試みが様々に導入された「コミックマーケット96」(C96)。

今回、全体の来場者数は、1日会期を延長して4日間開催となったことから、史上最多数の73万人ということも発表された。 果たしてこの変化は、実際のイベントにはどう表れたのか。4日間、10時からプレスとして参加した筆者が振り返ってみたい。

史上初の試みづくしのコミケ

8月9日から12日にかけて東京ビッグサイトで開催された「コミックマーケット96」。例年およそ50万人が訪れる世界最大規模の同人誌即売会は今回、従来とは大きく勝手が異なった。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックの影響に伴い、会場の一部変更および2箇所開催、会期が4日間、リストバンドを使った一般参加の有料化の上で、初めて開催された。

4日間参加してみて

たった1日増えただけなのに……

誰にとっても初めての4日間、まことに勝手ながら、取材する身としても「大変だった」の一言に尽きる。

コミケはオタクのお祭りであり筆者もその1人であるため、環境的には大変なイベントだがやはり高揚感もあり、楽しく取材している側面も大きい。

しかし今回、たった1日だけではあるが、通常の2日目終了後の「あと1日だ」から「あと2日ある」という感覚の変化は、1日以上の日程の長さを感じさせた。

一般の来場者にも重なるかもしれないが、プレスとして4日間続けて青海と西・南を取材するよりは、初日は企業ブースメイン、以降はサークルに、と日程を区切った工程にするという判断をせざるを得なかったのが正直なところだ(人員的な問題もある)。 新しい会場を使用したため、会場間の移動も複雑になったことで、より多くの距離を歩いたように感じてしまうと同時に、様々なポイントで渋滞が発生するなど、初づくしゆえの動線面の課題をところどころで感じた。

12月の「C97」、2020年GWの「C98」までは東展示棟が使えないため、まずは現在の動線の効率化が求められるだろう。東展示棟が戻って以降は東京ビッグサイト全体としては16ホールになるため、ホール間の動線がそこからさらにどう変化するのか。注目していきたい。

連日快晴の反面、長時間の待機で緊急搬送も

天候は4日間とも快晴に恵まれた。事前には台風の接近も懸念され、4日目は午前中に雨がぱらついたが、全体を通じて晴れ間が続いた。 言い換えれば、それだけ気温が高かったということ。連日30度以上を記録する中で、20万人が来場した3日目には入場待機列の参加者などから熱中症をはじめ傷病者が発生。

コミックマーケット準備会では5名が救急搬送されたと発表している(外部リンク)。翌日には改善として、待機場にはドリンク販売ブースと場外救護テントを設置した。

期間中にすぐ改善策を発表して対応できたことは、今後も4日間開催が続くという意味で、評価されるべきポイントだろう。

空調への評価、会場間の移動が課題に

初日は平日だったという点、さらには2箇所のうち企業ブースへ人が集中したことから、西・南展示棟は比較的スペースに余裕があり、青海と南を中心に施設の空調も効果を発揮していた。

南展示棟

来場者数は、1日目の16万人から、2日目に17万人、3日目に20万人と徐々に拡大。4日目に20万人を記録して最終的には73万人と過去最高記録を更新した。

開催期間は増えれば当然来場者数も増えるが、それでも1駅分、徒歩で25分程度という青海展示棟には、2日目以降、劇的に人が増加したという報告はなかった。

最終日の4日目、開幕直後の企業エリア

そもそも別会場ということで、商品が潤沢にある初日は企業のある青海展示棟、2日目以降に西・南展示棟のサークルを訪れるというように、来場者にとって割り切りやすかった面もあるかもしれない。

西・南展示棟の会場アナウンスでは、企業ブースへの来場を積極的に呼びかけてはいたが、一度長い時間をかけて入った会場を出て、炎天下で離れた会場へ向かうには、相当な目的意識と何かを得られる確信がない限り難しいだろう。

雑感となったが、取材として参加した筆者の振り返りは以上となる。

では、実際の参加者はどうだっただろうか。それぞれの立場の参加者に話を聞いた。

企業から見たC96

企業ブースは今回、これまで出展してきた西展示棟から大きく離れ、徒歩で20分ほどの青海展示棟での参加となった。

例年コミケに出展している、イラストSNSサービス「pixiv」を運営するピクシブ株式会社は「総じて良かったと思います」と振り返る。

「正直、会場が遠すぎることから、いつもより(当日販売するグッズなどの)在庫をちょっと減らして臨んだんですね。

ただ、初日は大勢の方に足を運んでもらい、正確な数字ではないですが体感的にはいつもと同じくらい弊社のブースは盛況でした。

でも、特に3日目・4日目はやはり、目に見えて(企業ブースに来る)人が減っていました」(ピクシブ担当者)

しかし、従来の3日間と、今回の4日間とで、ブースに訪れた延べ人数で言うとほぼ同等だったという。

4日間を迎え、企業にとってのメリット・デメリットはどこにあったのか。

「(青海展示棟が)とにかく涼しいことです(笑)。一般参加者も企業参加者も、これは嬉しいでしょう。実に快適でした」と、やはり会場の快適さを喜んでいた。

ピクシブは「おそらく弊社特有のものだと思うが、強いて言えば、合間でお世話になっている作家さんのブースに顔を出せないことくらいかな」と語った。

同様に、企業ブース参加していた一迅社も、やはり延べで言えば例年と遜色ないと振り返る。 「初日、平日ということもあり、やはり社会人が少ない印象でしたが、その分学生さんたちが来てくれたかなという実感でした。人件費などはどうしても1日分、これまでよりはかかってしまうけれど、企業のPRとしては4日間分の露出があるという意味では良かったです」(一迅社担当者)

ただ、今後の状況や準備会の方針的に無理のない範囲で、という前提の上で、「もし無理でなければ、やはり従来の会場の形態に戻していただけるとありがたいなという思いはあります」と締めくくった。

サークルから見たC96

サークル参加者は、今回、それほど大きな変化を感じていない人が多い印象だった。

4日間開催によって来場者数が均された結果、例年よりも混雑度合いは緩和されていたという声がほとんどだった。

「正直、そこまで影響はなかった」と話すのは、40代男性2人組のサークル。これまで参加した回数は数えきれず、晴海時代からサークル参加しているというから、相当の古参だ。

2人に、今後のコミケに期待するものはあるか?と聞くと、どんなに変化しても「とにかく潰れないでほしい」という意見があがった。

「そういう場があることは重要で、だから安心して(同人誌を)つくることができる。地方イベントは色々あるけど全国規模(の同人即売会は)というのはコミケしかないですから」という、サークルとしてのコミケへの信頼感を語った。

コスプレイヤーから見たC96

コスプレイヤー的には、海沿いでロケ地もよく広々としているため、屋上に次いで好評だった「西駐車場」こと屋外展示場が今では使えなくなったため、それを嘆く声もちらほら。

また、西駐車場がなくなってコスプレエリアが狭くなったため、「他が大混雑するかなと思いきや、2日目、3日目の庭園、屋上は日傘をさして歩けるくらいの混雑で拍子抜けでした」という意見もあった。

「例年はどこで撮影しようか迷うほどスペースがありませんが、どの時間帯でもスペース確保ができてありがたかったです」(女性コスプレイヤー)

また、全員ではないものの例年3日目すべて参加するというコスプレイヤーも多いが、今回は4日間開催ということで全日参加という人は多くなく、参加日程がバラけたようだ。

一般参加者から見たC96

4日間開催でも、やはり全日参加する人は一定数存在する。

その中では、特に気になった点としてやはり企業ブースのある青海展示棟と、サークルの出展する新たに西・南展示棟との移動の不便さをあげる声が多かった。

10年以上通い続けているという30代男性は、この4日間で10回近く企業とサークルを行き来したそうで、電車は使わずに30分ほどかけて歩き続けているとそれだけで体力を消費すると語っていた。

それも含めてレジャー感覚で楽しかった」とも朗らかに語っていたが、やはり今後、企業とサークルの会場が同一だとありがたいとは口にしていた。

一方で、企業に目当てがなく好きなサークルを回る目的で来場している人にとっては、むしろサークル棟は例年より混雑は厳しくなく、移動の手間も関係ないため、このままでいいという声もあった。


それぞれの立場からの意見を拾ったが、総じて、コミケという大切な場だからこそ、参加者全員がより良い継続の形を臨んでいた。

最終日の閉幕を迎えた4日目の16時、「終わった〜」「乗り切った!」「お疲れ様でした」という声と共に、これまでになく力強い拍手が沸き起こった。

4日間、本当にお疲れ様でした

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