ボカロとVTuberの発展の道筋は正反対
──VTuberブームはボカロブームと比較されることが多いですが、ボカロとVTuberの共通点や差異はどのようなところにあるでしょうか。和田 僕も共通する部分は多いと思っていたんですが、最近実はそうではないのかもと思っています。
ボカロはクリエイターがいて成立する文化なのでボカロ自体に命はなく、音楽やイラストといった様々な創作を受け入れる器やコミュニティのようなものなんです。
ですがVTuberは命があって実在している。そうした独立した個人の人格に誰かが入り込むことはできないですし、創作がないと存在してない、なんてことにはなりません。全体として似通っているとは言い難いように思えるんです。
──なるほど。子兎音ちゃんはいとうのいぢ先生のデザインということで鳴り物入りでデビューしましたが、いまいちバズりきれていないというような指摘をされることもありますよね。
和田 急に突っ込んだ話になりましたね!?(笑)
tmiyachi 最初に見たときはチャンネル登録者数6000人くらいだったのが今は2万人になってるのでチャンネル登録者数の伸びは悪いものじゃないんですよ。
1万超えてからのスピードはスゴかったですし、客観的に見ても今は伸びてる時期と言えるんじゃないでしょうか。 和田 子兎音ちゃんも最初の方の動画はちゃんとしすぎてるんですが、最近の動画では台本っぽさがなくなってきているし、生放送はとても盛り上がってるんですよ!
さらにどうしていけばいいかって考えるとまずは普通にやってちゃいけないってところですよね。周りとやってることが同じだと面白くないし…、なんで僕らが悩んでるんでしょう(笑)。
子兎音ちゃんが響く人は必ずいる
──和田さんの作品に「おどれVRダンス」という曲がありますよね。時期的にVTuberブーム直前の12月中旬にリリースされているのも面白いのですが、表現されているVR観も興味深いものでした。和田 「おどれVRダンス」に関しては、歌詞のメインテーマとしてはVR観というよりは老人批判をしたかったんです(笑)。
というのも、インターネットはただの通信手段でしかないからリアルと地続きのものなんですよね。だからインターネットやVRといった仮想とはいえ、実在しているものと比べた時に思い出なんていう実在してない観念の方がよっぽど虚構だっていうことを言いたかったんです。
tmiyachi 個という存在があってその拡張手段としてのVRやインターネット、ボカロがあるだけなので、切り離して考えるのは違和感があるってことですよね。
和田 バーチャルやリアルって言い方をしてしまうから差を感じるのかもしれません。
SNS上と普段の自分で比較するまでもなく、家の自分と外の自分、あるいは会う人によってどのレイヤーを出すかっていうのは違いますし、それは誰もが普段やっていることですよね。
そう考えるとどれが本物なのかを問うことはそんなに意味がないんじゃないでしょうか。
──今回の楽曲のテーマにも通じるお話ですね。VTuber全体の更なる展開として一般層への広がりというのを意識する段階にあると思うのですが、VTuberは一般的に受け入れられていくでしょうか。
和田 キャラクター的なものへの嫌悪感ってもはやないでしょうし、それこそ今の小中学生ってボカロの曲と普通の曲に境目を感じてないですよね。
だから人間のタレントと同じように、VTuberのようなバーチャルのタレントの境目もなくなって受け入れられていくと思います。
tmiyachi 僕は受け入れられていくというよりは、誰もがVTuber、発信者になる時代が来るんじゃないかと思っています。
Twitterのアカウントを持つ感覚でバーチャルのアバターを持つ時代が来て、他人事ではなく全員が当事者として参加するようになるという形で受け入れられていくんじゃないでしょうか。
和田 …そもそも一般に受け入れられていく必要ってあるんでしょうか。みんなに受け入れられるって大事かもしれませんが面白いものではないですよね。
一般からオタクまで全体的に流行ってるものって最早ないじゃないですか、だから一般にどう広げていくかを考えるより、重視すべきは刺さる人にどう届けるかってことなんでしょうね。
tmiyachi たしかにそれこそがニーズの細分化された現代におけるエンターテイメントですね。
──本日はありがとうございました。それでは最後に改めて曲に込めたメッセージを聞かせてください。
tmiyachi 曲に込めたテーマというのはバーチャルやリアルの違いに意味はないとかアイデンティティを物体としての自分以外に持ってもいいんじゃないかということなので、これまでのやり方では出てこれなかった方を応援する曲になっています。
聴いていただくことで鼓舞される方が少しでもいたら嬉しいです。
和田 子兎音ちゃんは様々なカルチャーにルーツを持っているので、同じようなルーツを持っている人達にはものすごい刺さると思っていますし、曲もそういう人たちに向けてつくりました。そうした確実に存在する子兎音ちゃんが刺さるべき人たちに刺さっていけばいいなと思います。
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初音ミクを使用したVocaloid楽曲「くらげ」を2010年4月にニコニコ動画に投稿して以降、インターネットでオリジナル曲を歩みを止めることなく新曲を発表。活動6年目を迎える2016年2月に公開した「チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!」が大ヒット。同曲のYouTubeでの再生数は、2018年7月時点で940万回を超える。この曲の他ニコニコ動画ミリオン再生を4曲叩きだしている。新時代ボカロ作家トップランナーの一人。
またギタリストとして古川本舗やこゑだなど、さまざまなアーティストのライブやレコーディングに参加。
tmiyachi
株式会社ティーンスピリット 代表取締役社長
作詞家/作曲家/女性ダンスボーカルグループプロデューサー。学生時代から音楽活動や放送作家活動を始め、大学卒業後、公認会計士試験合格。金融業界、ITベンチャーCFOを経て、2011年オンライン教育企業を創業。2016年に売却後、2018年に芸能プロダクション・作家事務所・音楽出版社・レコード会社が一体となった新世代型の総合エンターテインメント企業であるティーンスピリットを創業。主な個人投資先にYouTuberマネジメントのVAZ、誰でもVTuberになれる「トピア」のアンビリアル。
1件のコメント
CKS
かつてのボカロみたいに、VTuber発信だけど別にVTuberが主題じゃないみたいなのがどんどこ出てくるのかな〜