繊細かつ緻密な描き込みとキュートなモチーフを散りばめる画面構成で可憐な少女を描き出すイラストレーター・チェリ子さん。彼女の初画集『チェリ子画集 Capture-C』が5月14日(水)に発売される。
描き下ろしのオリジナル作品に加え、ジャケットイラストを担当した『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(通称・プロセカ)関連作品やインタビューなども収録。
さらに作品集の刊行と同時期となる5月8日(木)から13日(火)まで、東京での初の個展「CaptureD-C」が渋谷ヒカリエ 8/CUBEで開催。
チェリ子さんの個展「CaptureD-C」キービジュアル
特別な技術で印刷されたオリジナル作品が並ぶほか、原作キャラクターデザインを担当したメディアミックスプロジェクト「うたごえはミルフィーユ」の描き下ろしイラストも展示。会期中、チェリ子さんは毎日ライブドローイングを実施する。
画集の刊行と展覧会の開催──イラストレーターとして一つの節目を迎えた本人へのインタビューを通じて、絵に確かな鼓動と物語を宿らせるチェリ子さんのイラスト術や、「女の子はきれいなお皿」と話す独特のこだわりを紐解いていく。
取材・文:オグマフミヤ 編集:恩田雄多
目次
“歯車”体質のイラストレーター・チェリ子
──今回「KAI-YOU」としては初のインタビューとなります。まずは現在までの経歴をうかがえますか?
チェリ子 元々祖父がデザイナーで、引退後も絵を描いてるような人だったので、影響を受けてか私も物心つく前から絵を描いてました。
その後、絵を趣味として続けていくか仕事にするかを悩みつつ、美術系の大学に進学しました。絵一本でいくよりは就職を見据えた方がいいと思ってデザイン系の学科に入り、そこからゲーム会社に2Dデザイナーとして就職したんです。
会社員として働きつつ、同人活動として絵をネットに上げるのは続けてたんですけど、イラストを担当させてもらった和田たけあき(くらげP)さんの曲「チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!」のMVがものすごくバズって、そこで一念発起してフリーランスとして独立したという流れですね。
──やはり「チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!」のヒットはご自身の中でもターニングポイントとなるような出来事でしたか?
チェリ子 ものすごい衝撃でした。でも「じゃあすぐに会社辞めちゃおう!」という性格ではなかったので、3年くらいしっかり準備をしてから仕事を辞めました。ちゃんと次のステップに進めるように、丁寧に石橋を叩いて渡ったようなイメージです。
絵を描いてお金がもらえるということ自体は、会社員になったことで達成できていたので、そのバズがなければフリーランスにはなっていなかっただろうなと思います。そもそも体質的には歯車として働くのがめちゃくちゃ向いてると思いますし。
個展で展示されるチェリ子さんのオリジナル作品。「印矩の国のアリス」(左)と「蒐集の国のアリス」(右)
──組織の一員として働くことに適性を感じていたんですね。
チェリ子 今も変わらずではあるんですが、好きに描くよりは、何か発注をいただいて、そのお題にどう応えるのかを考えるのが好きなんです。だから、会社員として絵を描くことの適性は高かったのではないかと思っています。
仕事で火柱を、趣味で女の子を描いた会社員時代
──大学で美術を学んだ経験が、今のスタイルに影響を与えているのでしょうか?
チェリ子 大学時代よりは、受験生時代の経験が大きかったと思います。私は2年浪人しているんですが、その間試験対策として、デッサンやアクリル絵の具を使った色彩構成などを朝から晩までやっていました。そこで、絵を描く筋肉みたいなものを無理やり鍛えられたような気がします。
結果的に、今は自分の納得のいくイラストが描けるようになって、絵を仕事にできている。振り返ってみると、必要な期間だったんだと思います。
──大学卒業後に就職したゲーム会社ではどのような仕事を担当していたんですか?
チェリ子 絵を描く仕事を担当させてもらってはいたんですが、もちろん自分の好きなものを自由に描けるわけではありませんでした。土煙や火柱、電撃みたいなエフェクト、おじさん、モンスター、ロボットなどをひたすら描いていました。
ただ、比較的ホワイトな会社だったので、自分の時間もちゃんと確保できていたんです。なので誰よりも早く帰宅して、仕事で描けなかった分、プライベートでは思う存分に女の子を描いてました。
描き下ろし作品「青短」
チェリ子 なぜ女の子なのかというと、絵を描きはじめた幼少期から『美少女戦士セーラームーン』をはじめ、強い女の子が出てくる作品が好きだったんです。
描くのに特別な理由があるわけではなく、好きな対象として物心ついた時から自然と女の子を描いていたという感覚で。ただ、仕事で女の子を描けなかったので、その鬱憤を晴らしていた面もあるかもしれません(笑)。
──総じて絵を描く際には、どこに一番こだわっていますか?
チェリ子 何をテーマにしているのかをハッキリさせて、ブレないようにしたいと考えて描いてます。課題や要望に応えるのと考え方は一緒で、「何を一番に見せたいのか」「この絵で何を表現しなくちゃいけないのか」などを考えて、それを最後まで描き通すのが重要だと思っています。

この記事どう思う?
イベント情報
チェリ子 東京初個展「CaptureD-C」
- 開催期間
- 2025年5月8日(木)~13日(火)
- 時間
- 11:00 –20:00(最終日は19:00まで)
- 会場
- 〒150-8510 東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ 8/CUBE
- アクセス
- JR、京王、東京メトロ、東急、各線「渋谷駅」直結
- 入場料
- 無料
- 主催
- チェリ子、MORYARTI株式会社
- 共催
- Wimdac Studio、oriminart
- 協力
- 玄光社、株式会社ポニーキャニオン、うたごえはミルフィーユ製作委員会
■チェリ子個展『CaptureD-C』開催記念 チェリ子×山中拓也 特別トークイベント
『うたごえはミルフィーユ』にて、原作・シナリオを務める山中拓也氏を招き、チェリ子氏との対談形式でトークイベントを行います。チェリ子氏の仕事を間近に見る山中氏の視点を交えつつ、描かれるイラストの魅力や、画集、個展などについて語り合います。
日時:5月8日(木)18:45~19:45
場所:渋谷ヒカリエ 8/CUBE 会場内・オンライン配信
配信:YouTubeにてオンライン配信予定(後日詳細公開)
参加費:無料 人数:20名程度(現地)
参加方法:現地参加希望者向けにpeatixにて事前申込を実施します(先着)
事前申込開始 4月23日(水)18:00(予定)
山中拓也氏 プロフィール
1987年生まれのゲームプロデューサー、シナリオライター。2016年にはディレクターを務めたゲーム『Caligula-カリギュラ-』がリリース。アニメ化を果たしたヒット作となる。2020年からは企画・原作・プロデューサー・シナリオを務める音楽プロジェクト『MILGRAM-ミルグラム-』を展開中。今年7月には原作・企画・シナリオを務める音楽プロジェクト『うたごえはミルフィーユ』がアニメ化される予定(氏が脚本を担当する)。
■『チェリ子画集 Capture-C』解説トーク
チェリ子氏の初となる作品集『チェリ子画集 Capture-C』(玄光社)の発売を記念して、チェリ子氏自身より画集制作の裏側や収録された作品について解説するカジュアルなトークイベントです。
日時:5月9日(金)18:45~19:15
場所:渋谷ヒカリエ 8/CUBE 会場内
人数:10名程度(先着)
参加方法:イベント当日(5月9日)に、会場内の物販コーナーにて税込3,000円以上お買い上げいただいた方のうち、希望者に先着で参加券を配布します。
■個展『CaptureD-C』ギャラリートーク
チェリ子氏自身より、作品のポイントや込めた想いなどを直接お伝えしながら、会場に展示している作品を鑑賞する、カジュアルなトークイベントです。
日時:5月12日(月)18:45~19:15
場所:渋谷ヒカリエ 8/CUBE 会場内
人数:10名程度(先着) 参加方法:イベント当日(5月12日)に、会場内の物販コーナーにて税込3,000円以上お買い上げいただいた方のうち、希望者に先着で参加券を配布します。
関連リンク
チェリ子
イラストレーター
フリーランスイラストレーター。活動の原点であるMVイラスト制作をはじめ、現在ではキャラクターデザインや装画など幅広いジャンルにて活動中。個性あふれる髪型や衣装、小物は繊細かつポップ。かわいいだけではないその世界からは物語を感じずにはいられない。
[代表作]
和田たけあき(くらげP)『チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!』MVイラスト
Ado『会いたくて』MVイラスト
『うたごえはミルフィーユ』(ポニーキャニオン×山中拓也/2025年7月テレビアニメ化)キャラクターデザイン
VoiSona『知声』キャラクターデザイン

0件のコメント