イラストレーターとして“一つ抜け出す”ためのライブドローイング
──個展の会場でライブドローイングを毎日される……本当ですか?
チェリ子 誰かにやれと言われたわけじゃなくて、自分で「やります」と言ったことなんですけど、まだ実感がないです。本当にやるんでしょうか(笑)。
お仕事でも何度かさせていただく機会があって、ライブドローイング自体はすごく好きなんです。リアルタイムで見てる方々の反応をいただきながら絵を描くのって、ものすごく手ごたえを感じられますし、人が絵を描いてるのを見るのが面白い気持ちもよくわかります。
お客さんも楽しめて、描いてる私も楽しい。ライブドローイングはなんて素敵なんだろうと。
過去のイベントでライブドローイングを行うチェリ子さん
──描く側も見る側も楽しめて言うことなしということですね。
チェリ子 あと正直に言うと、自分が描く絵には自信を持ってるんですが、周囲からの評価に対してはあまり自信がなく……個展を開催するだけでは人を集められるか不安な面があったんです。それなら毎日ライブドローイングをしたら面白いんじゃないかと思って、自分から提案しました。
ただ、個展は6日間あるんですが、そもそも6日連続で外に出ること自体なかなかない人間なので、体力が持つかどうかもちょっと心配です(笑)。
──ライブドローイングそのものは珍しくないかもしれませんが、“個展の会期中毎日やる”というのは、とてもバイタリティに溢れていると思います。
チェリ子 時代的にも、NFTアートやAIでの生成イラストが話題になったり、デジタルな出力がネット上で主流になりつつある中で、そこから一つ抜け出していくためにアナログに回帰していくのは、手法としてありなんじゃないかと考えていたんです。
幸いにして、私は描ければなんでもいいタイプだったので、「“チェリ子はアナログな描き方もできる”というアピールになれば」という思いもありました。
ただ、毎日というのは相当大変だと思うので、元気な私に会いたい時は会期中の前半に来てもらえたらなと思います(笑)。来場した方とお話させていただくようなイベント(ギャラリートーク)が会期後半にもあるんですけど、その頃には力が抜けて逆に良い感じになっていることを願ってやみません。
個展オリジナルグッズのアクリルジオラマ。「印矩の国のアリス」(左)と「蒐集の国のアリス」(右)
個展ではチェリ子テイストの『うたミル』イラストも
──個展では、原作キャラクターデザインを担当されたメディアミックスプロジェクト「うたごえはミルフィーユ」(※)と連動した作品の展示もあります。
チェリ子 画集の企画が動きはじめたタイミングで、プロジェクトを展開するポニーキャニオンさんにご相談したんです。そしたら、運良くTVアニメの放送が7月からというタイミングで、描き下ろしイラストの展示や原作シナリオの山中拓也さんとのトークイベントまでさせてもらえることになりました(外部リンク)。
今までの「うたごえはミルフィーユ」のイラストは、もちろんお仕事として絵を描かせていただいてたので、作品に沿ったテイストで描いてきました。
今回は私の個展に合わせての描き下ろしなので、いつもよりチェリ子の得意なテイストに寄ったキャラクターたちになっていて、新鮮な印象になるんじゃないかなと思います。
『うたごえはミルフィーユ』描き下ろしイラスト
※うたごえはミルフィーユ:2022年4月に始動。「アカペラ」「女子高生」「コンプレックス」をテーマにした女性声優による音楽プロジェクト。略称は「うたミル」。2025年7月からTVアニメが放送される。
──7月にはTVアニメの放送が控えていますが、今はどのような心境ですか?
チェリ子 もともとアニメで動くことを意識してデザインしていなかったので、すごく動かしにくかったんじゃないかと思います。でも、しっかり元の絵のらしさを残しつつ、可愛く動かしてもらっていてもう感動しました。
フリーランスになってから、「自分にもこんな機会があるんだ!」とビックリすることが結構あるんですけど、自分のデザインしたキャラクターたちがアニメになるというのも本当に驚きですし、一視聴者としても楽しみにしています。
アニメに関連する形でいくらかお手伝いさせていただいたこともあるので、本当に貴重な経験をさせてもらえました。いつもは一人でイラストを描いているだけなので、大人数のチームに混ぜてもらっているみたいで面白かったです。
──画集発売に個展開催、関わった作品のTVアニメ化と、2025年はチェリ子さんにとって大きな節目になりそうですね。
チェリ子 ずっと画集を出すことに憧れてたので、もう夢が叶っちゃった感はあるんですけど。
自分一人で完結するより、お仕事として要望に応えるような絵の描き方の方が得意だと思うので、好きなものに関わる仕事は今後も続けていけたらと思います。
でも、結局は絵が描ければ何より幸せな人間なので、死ぬまで絵が描けていたらそれが一番嬉しいですね。

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イベント情報
チェリ子 東京初個展「CaptureD-C」
- 開催期間
- 2025年5月8日(木)~13日(火)
- 時間
- 11:00 –20:00(最終日は19:00まで)
- 会場
- 〒150-8510 東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ 8/CUBE
- アクセス
- JR、京王、東京メトロ、東急、各線「渋谷駅」直結
- 入場料
- 無料
- 主催
- チェリ子、MORYARTI株式会社
- 共催
- Wimdac Studio、oriminart
- 協力
- 玄光社、株式会社ポニーキャニオン、うたごえはミルフィーユ製作委員会
■チェリ子個展『CaptureD-C』開催記念 チェリ子×山中拓也 特別トークイベント
『うたごえはミルフィーユ』にて、原作・シナリオを務める山中拓也氏を招き、チェリ子氏との対談形式でトークイベントを行います。チェリ子氏の仕事を間近に見る山中氏の視点を交えつつ、描かれるイラストの魅力や、画集、個展などについて語り合います。
日時:5月8日(木)18:45~19:45
場所:渋谷ヒカリエ 8/CUBE 会場内・オンライン配信
配信:YouTubeにてオンライン配信予定(後日詳細公開)
参加費:無料 人数:20名程度(現地)
参加方法:現地参加希望者向けにpeatixにて事前申込を実施します(先着)
事前申込開始 4月23日(水)18:00(予定)
山中拓也氏 プロフィール
1987年生まれのゲームプロデューサー、シナリオライター。2016年にはディレクターを務めたゲーム『Caligula-カリギュラ-』がリリース。アニメ化を果たしたヒット作となる。2020年からは企画・原作・プロデューサー・シナリオを務める音楽プロジェクト『MILGRAM-ミルグラム-』を展開中。今年7月には原作・企画・シナリオを務める音楽プロジェクト『うたごえはミルフィーユ』がアニメ化される予定(氏が脚本を担当する)。
■『チェリ子画集 Capture-C』解説トーク
チェリ子氏の初となる作品集『チェリ子画集 Capture-C』(玄光社)の発売を記念して、チェリ子氏自身より画集制作の裏側や収録された作品について解説するカジュアルなトークイベントです。
日時:5月9日(金)18:45~19:15
場所:渋谷ヒカリエ 8/CUBE 会場内
人数:10名程度(先着)
参加方法:イベント当日(5月9日)に、会場内の物販コーナーにて税込3,000円以上お買い上げいただいた方のうち、希望者に先着で参加券を配布します。
■個展『CaptureD-C』ギャラリートーク
チェリ子氏自身より、作品のポイントや込めた想いなどを直接お伝えしながら、会場に展示している作品を鑑賞する、カジュアルなトークイベントです。
日時:5月12日(月)18:45~19:15
場所:渋谷ヒカリエ 8/CUBE 会場内
人数:10名程度(先着) 参加方法:イベント当日(5月12日)に、会場内の物販コーナーにて税込3,000円以上お買い上げいただいた方のうち、希望者に先着で参加券を配布します。
関連リンク
チェリ子
イラストレーター
フリーランスイラストレーター。活動の原点であるMVイラスト制作をはじめ、現在ではキャラクターデザインや装画など幅広いジャンルにて活動中。個性あふれる髪型や衣装、小物は繊細かつポップ。かわいいだけではないその世界からは物語を感じずにはいられない。
[代表作]
和田たけあき(くらげP)『チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!』MVイラスト
Ado『会いたくて』MVイラスト
『うたごえはミルフィーユ』(ポニーキャニオン×山中拓也/2025年7月テレビアニメ化)キャラクターデザイン
VoiSona『知声』キャラクターデザイン

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