神戸大学の軽音楽部で出会い、2013年から活動を始めた4ピースオルタナティヴロックバンド・パノラマパナマタウン。
2015年に、ロッキング・オンが主催するオーディション「RO69JACK」でグランプリを獲得し、同年には国内最大級のロックフェスティバル「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に初出演。
そして2018年1月、ONE OK ROCKも所属するレーベルA-sketchからミニアルバム『PANORAMADDICTION』でメジャーデビューを果たした。 バンド名に冠された「パノラマ」という言葉は、自分たちの多様性を表す意味を持ちつつも、違和感をおぼえる発語感をもつことを意識したもの。そういった遊び心は、ボーカル&ギターの岩渕想太がもつ音楽性やリリック観に由来している。
バンド名だけでなく、彼らの音楽はロックの枠組みにとらわれることなく、常に愉快で、軽快で、それでいて聴き手に思い切り面食らわせる。
そんな彼らが2016年、アルバム『PROPOSE』リリースツアーの中で、初めてのツーマンライブの相手に選んだのはヒップホップユニット・Creepy Nutsだった。 それから2017年、2018年と毎年ツーマンをくり返している彼らだが、お互いの音楽性はもちろん、日本の音楽シーンについて、自分たちの立ち位置について、どう捉えているのか。
パノラマパナマタウンのデビューにあたり、同バンドのヴォーカル&ギター・岩渕想太とCreepy NutsのR-指定の対談を実施した。
取材・文:鈴木梢 編集:ふじきりょうすけ 写真:山下智也.com
R-指定 正直バンドの人たちのこと自体ぜんぜん詳しくなくて。俺らはちょうど異種格闘技戦というか、ツーマンとかやり始めたくらいのころで。でも、そういう時期だったからこそ呼んでもらえたのが嬉しかった。
「こういう人たちが俺らの曲を聴いてくれているんだ」って、自分らの世界が広がった感じがしました。むしろ逆に、なんで俺らのこと知ってくれたんですか?
岩渕 もともと僕はヒップホップが好きで、(Creepy Nutsを知ったのは)「みんなちがって、みんないい。」を聴いたのが最初です。初めて聴いたときに、なんだか自分と同じことを考えているんじゃないかと思って。みんなちがって、みんないい。/Creepy Nuts
岩渕 そのころの僕らの歌詞も、Creepy Nutsほどエンターテインメントに昇華できていなかったけど、「みんな同じようなことばっかり歌いやがって」みたいなことを言っていたので(笑)。
R-指定 あの曲は自分の悩みから生まれていて。カウンターカルチャーでありたいと言いつつも、売れたい気持ちもあったし、ちゃんとヒップホップとして認められたいし……全部あるから迷っていて、それをそのまま形にしたのが「みんなちがって、みんないい。」だった。
不良みたいなラッパーにも憧れたし、インテリにも憧れたけど、なれなかったんですよね。だからなんていうか、「歌唱法としては俺だってできるけどな! できないわけじゃないけどな!」みたいな気持ちがあって(笑)。
岩渕 僕の場合は完全に恨み節です(笑)。恋愛の曲歌えないし、みんなみたいに楽しくやれるわけでもないし……そんな悩みが自分の中にある。やろうと思ったらできるってわけでもなかった。「$UJI」Music Video
R-指定 そのポジションというかスタンスを狙っているんだったらいいんですけど、俺もたまたまそうなってしまったみたいな感じだから。あえてそこに行ったわけじゃないからこそ、苦しさがあるのかなと。
岩渕 「馴染めなかった」という感覚が近いですね。普通に自分がやりたいことをやったらここに行き着いただけで。かといって、どこかに「入りなさい」と言われたら違う。
Creepy Nutsの「どっち」って曲で「ドン・キホーテにもヴィレッジヴァンガードにも俺達の居場所はなかった…だけどそれで良かった」って歌ってて、ちょうどそのころ僕がすごく思っていたことだったんですよ。 R-指定 そうそう。そのことをツーマンの打ち上げで言ってくれたんですよね。
俺が表現したいもの自体あんまりはっきりしたものではなくて……自分という人間を表現したいんですけど、ひとつの言葉で括れない。正直に出していくほど、わけがわからない形になっていくんですよね。いろいろやりたすぎて。
岩渕 すごくわかります。いまのフェスシーンって、踊らせるバンドがメインというか、享楽的な感覚みたいなのがあって。あとは、オシャレな感じとか……。
僕らは洗練されたものをやりたいという気持ちもなくて、じゃあ自分たちの立ち位置はどこなんだろうって思うけど、結局「自分たちができることしかできないな」と当時思っていたから、「どっち」や「みんなちがって、みんないい。」がすごく染みて。 R-指定 そう。自分たちもCreepy Nutsとして、ゴリッとヒップホップのメインストリームではなく、かといってラップを使ったJポップって方向に振り切ることもなくて、どっちなんだろう……と感じていた。
なので、俺らだけじゃないんだと思ってすごく嬉しかったです。自分たちがすごく特殊なところにいると思っていたので。
岩渕 同じ曲の中に、「Yogee New Wavesの100番煎じ」ってラインがあるじゃないですか。これすごいなと思ったんですけど、絶対これロックバンドは言えないなと思って……(笑)。
R-指定 外側だから言えることですよね(笑)。
岩渕 たぶん「バンドマンだったらみんな思うよな」ってことをすごくズバッと言っていて……でもそれで皮肉った感じがないし、嫌みたらしくならない。それは言葉遊びの面白さがあるからなんですよね。
そこは本当にヒップホップの好きなところであり、バンドにできないことだと思うんです。
2015年に、ロッキング・オンが主催するオーディション「RO69JACK」でグランプリを獲得し、同年には国内最大級のロックフェスティバル「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に初出演。
そして2018年1月、ONE OK ROCKも所属するレーベルA-sketchからミニアルバム『PANORAMADDICTION』でメジャーデビューを果たした。 バンド名に冠された「パノラマ」という言葉は、自分たちの多様性を表す意味を持ちつつも、違和感をおぼえる発語感をもつことを意識したもの。そういった遊び心は、ボーカル&ギターの岩渕想太がもつ音楽性やリリック観に由来している。
バンド名だけでなく、彼らの音楽はロックの枠組みにとらわれることなく、常に愉快で、軽快で、それでいて聴き手に思い切り面食らわせる。
そんな彼らが2016年、アルバム『PROPOSE』リリースツアーの中で、初めてのツーマンライブの相手に選んだのはヒップホップユニット・Creepy Nutsだった。 それから2017年、2018年と毎年ツーマンをくり返している彼らだが、お互いの音楽性はもちろん、日本の音楽シーンについて、自分たちの立ち位置について、どう捉えているのか。
パノラマパナマタウンのデビューにあたり、同バンドのヴォーカル&ギター・岩渕想太とCreepy NutsのR-指定の対談を実施した。
取材・文:鈴木梢 編集:ふじきりょうすけ 写真:山下智也.com
ドンキにもヴィレヴァンにも俺達の居場所はなかった
岩渕 最初のツーマンにお誘いしたときって、僕らのことご存じでした?R-指定 正直バンドの人たちのこと自体ぜんぜん詳しくなくて。俺らはちょうど異種格闘技戦というか、ツーマンとかやり始めたくらいのころで。でも、そういう時期だったからこそ呼んでもらえたのが嬉しかった。
「こういう人たちが俺らの曲を聴いてくれているんだ」って、自分らの世界が広がった感じがしました。むしろ逆に、なんで俺らのこと知ってくれたんですか?
岩渕 もともと僕はヒップホップが好きで、(Creepy Nutsを知ったのは)「みんなちがって、みんないい。」を聴いたのが最初です。初めて聴いたときに、なんだか自分と同じことを考えているんじゃないかと思って。
R-指定 あの曲は自分の悩みから生まれていて。カウンターカルチャーでありたいと言いつつも、売れたい気持ちもあったし、ちゃんとヒップホップとして認められたいし……全部あるから迷っていて、それをそのまま形にしたのが「みんなちがって、みんないい。」だった。
不良みたいなラッパーにも憧れたし、インテリにも憧れたけど、なれなかったんですよね。だからなんていうか、「歌唱法としては俺だってできるけどな! できないわけじゃないけどな!」みたいな気持ちがあって(笑)。
岩渕 僕の場合は完全に恨み節です(笑)。恋愛の曲歌えないし、みんなみたいに楽しくやれるわけでもないし……そんな悩みが自分の中にある。やろうと思ったらできるってわけでもなかった。
岩渕 「馴染めなかった」という感覚が近いですね。普通に自分がやりたいことをやったらここに行き着いただけで。かといって、どこかに「入りなさい」と言われたら違う。
Creepy Nutsの「どっち」って曲で「ドン・キホーテにもヴィレッジヴァンガードにも俺達の居場所はなかった…だけどそれで良かった」って歌ってて、ちょうどそのころ僕がすごく思っていたことだったんですよ。 R-指定 そうそう。そのことをツーマンの打ち上げで言ってくれたんですよね。
俺が表現したいもの自体あんまりはっきりしたものではなくて……自分という人間を表現したいんですけど、ひとつの言葉で括れない。正直に出していくほど、わけがわからない形になっていくんですよね。いろいろやりたすぎて。
岩渕 すごくわかります。いまのフェスシーンって、踊らせるバンドがメインというか、享楽的な感覚みたいなのがあって。あとは、オシャレな感じとか……。
僕らは洗練されたものをやりたいという気持ちもなくて、じゃあ自分たちの立ち位置はどこなんだろうって思うけど、結局「自分たちができることしかできないな」と当時思っていたから、「どっち」や「みんなちがって、みんないい。」がすごく染みて。 R-指定 そう。自分たちもCreepy Nutsとして、ゴリッとヒップホップのメインストリームではなく、かといってラップを使ったJポップって方向に振り切ることもなくて、どっちなんだろう……と感じていた。
なので、俺らだけじゃないんだと思ってすごく嬉しかったです。自分たちがすごく特殊なところにいると思っていたので。
岩渕 同じ曲の中に、「Yogee New Wavesの100番煎じ」ってラインがあるじゃないですか。これすごいなと思ったんですけど、絶対これロックバンドは言えないなと思って……(笑)。
R-指定 外側だから言えることですよね(笑)。
岩渕 たぶん「バンドマンだったらみんな思うよな」ってことをすごくズバッと言っていて……でもそれで皮肉った感じがないし、嫌みたらしくならない。それは言葉遊びの面白さがあるからなんですよね。
そこは本当にヒップホップの好きなところであり、バンドにできないことだと思うんです。
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