コミュニケーションの変化
以上が基本的なルールだが、『モニャイの仮面』にはさらなるギミックが用意されている。それは、『チャレンジカード』の存在だ。 『チャレンジカード』とは、ゲームに慣れてきた人向けの拡張ルールで、『神殿探索』フェイズでのコミュニケーションを変化させるもの。
例えば、「ゲームに参加している全員が、すべての会話の語尾にラパをつける」といった軽いネタから、「マップを組み立てている人は、地図をつくっている時、片手しか使えない」「ゲームに参加している全員が、レリーフ(壁)を感情で表現する」という相当難易度が上がる指示まで。HMD装着者は、ランダムに選ばれた3枚の『チャレンジカード』から1枚を選ぶこととなる。 濱田氏によれば、この『チャレンジカード』は、前作『アニュビスの仮面』の時に感じた課題の解決策として導入されたシステムだという。『アニュビスの仮面』では、何度も繰り返しプレイした熟練者たちになると、HMD装着者の伝え方、つまりは攻略法が固定化されてしまうという問題が生じていた。
仮面シリーズの面白さとして、作戦を立てる時にみんなでわいわいと議論する部分が大きい。その際、攻略方法が確立されていると、議論の余地が少なくなってしまう。この課題を解決するために、『チャレンジカード』が採用されることになったと、濱田氏は語る。 加えて、『チャレンジカード』は初心者、あるいはゲームが不得手な人への救済策としても機能するという。『チャレンジカード』があることによって、「私が神殿の風景を上手く伝えられなかったのは、『チャレンジカード』があったせいだ!」と、ある意味言い訳の材料としても使えるのだ。
「『アニュビスの仮面』のような協力型のゲームは確かに面白いのですが、一方で“ガチゲー”として、怖いゲームにもなり得てしまうんです。そういった時に、ジャンプしたり『チャレンジカード』で語尾を変えてみたりといった馬鹿らしい要素を入れて、ちょっとほんわかな空気にしたい、という思いがあったんです」(濱田氏)
協力型のゲーム(チーム制のゲーム)では、初心者とガチ勢が一緒にプレイした際、初心者の失敗や非効率なプレイがガチ勢から批判されてしまうことがある。これは、「人狼」ゲームなどでもしばしば問題視されている。
初心者の救済策
本作から導入された『ロスタイム』システムについても、濱田氏は「前作『アニュビスの仮面』では、苦手な人がHMD装着者となった回をフォローするのが難しく、クリアが絶望的になることもありました。そうすると、そのプレイヤーは『申し訳ない』という気持ちになってしまいます。そういった苦手な人を助けるためのシステムとして、この『ロスタイム』を導入しました」と語る。
『モニャイの仮面』は、初心者やプレイの不得意な人が熟練者と一緒に楽しめるよう、デザインされているというわけだ。
製品には、12枚の『チャレンジカード』が同梱されているが、さらに熟練してきたユーザーは、自分たちで新たなカードをつくってしまってもいいだろう。より難易度の高い、より笑える『チャレンジカード』をつくることによって、本当にいくらでも遊べるゲームへと進化してく。
このように、ユーザー自身が自由にルールを変えて楽しめるのは、まさにアナログゲームのメリットといえるだろう(『チャレンジカードの』システムは、前作『アニュビスの仮面』にも導入できるはず)。
アナログとデジタルの融合
さらに、前作『アニュビスの仮面』からの進化ポイントとして、『ロスタイム』や『チャレンジカード』に加え、ラパラパの姿を粘土でつくるというものがある。濱田氏は、このシステムを導入した理由を以下のように話す。「仮面シリーズの続編を作るにあたって、色々な実験をしました。その中で、一匹の大きな怪獣をいろんな角度から見て、それぞれがその姿を粘土でつくるっていうのが結構面白かったんですよ。VRという最新技術を使いつつ、粘土を使うのかっていう(笑)。それをヒントに、透視をした人が自分の見たモノをつくるという要素を盛り込みました。
指名手配犯のモンタージュ写真なんかもそうですけど、頑張って記憶をひねり出すと意外と覚えてたりするんですよね。一方で、無理やり思い出してしまうと、実際は違った形でも、見た人の頭の中ではその形を見たってことになったりする。そうやってラパラパをつくることで、人相書きを描く人の気持ちが少しわかってもらえるかなって(笑)。それに、“自分だけが見た怪物”っていうのは、オカルト的なUMA(未確認生命体)っぽいところもありますよね。
あとは、『アニュビスの仮面』の時から、プレイヤーが『どうやったら写真を撮ってくれるんだろう?』というのはずっと考えているんです。『アニュビスの仮面』では、HMD(仮面)をかぶると滑稽だし、出来上がった地図も撮影してくれるだろうと考えてデザインをしました。『モニャイの仮面』だと、ラパラパは毎回形が違うので、粘土でつくったら記念に撮影しておきたくなるだろうなって。さらに、ジャンプの要素を取り入れることによって、写真ではなく動画も撮ってもらいたいと考えています」
“VRボードゲーム”という新奇性に加え、こうした工夫もあってか、前作『アニュビスの仮面』は海外での反響も大きかったという。 「2016年の10月に、海外のボードゲーム展示会『Essen Spiel』に200個持っていって数時間で完売しましたし、フランスやアメリカ、オランダといった海外のメディアも取り上げてくれました。現在は海外の企業からライセンス販売のお話もいただいています。
僕らの強みは、アナログもデジタルも出来るというところ。アプリが流行っている今、ボードゲームをつくっている海外の会社も、アナログとデジタルの融合に興味を持っているんだと思います。すでに次回作の企画も動いていて、やっぱりデジタルとアナログが融合したモノを今後も出していこう、と。『アラビアの壺』や『ダッタカモ文明の謎』といった、弊社が前からつくっている視覚障がい者と健常者が一緒に楽しめるゲームとしても、今後はデジタルとアナログを合体させていきたいですね」(濱田氏) 最後に、濱田氏から『モニャイの仮面』発売に向けてのメッセージをもらった。
「僕自身、ゲームがめっちゃ弱いんです(苦笑)。でも、『アニュビスの仮面』や『モニャイの仮面』といった協力型ゲームなら、勝ち負けじゃないところで楽しむことができる。なので、『自分はゲームが弱い』と思っている人にも是非プレイしてもらいたいですね」
世界でも類を見ないVRボードゲーム『モニャイの仮面』なら、アナログゲーム好きも、VRに興味がある人も、ゲームが得意な人も、ゲームが苦手だという人も、みんなが一緒に楽しむことができる。興味を持った方は、ぜひ一度体験してみることをオススメしたい。
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作品情報
モニャイの仮面
- プレイ人数
- 2人〜6人
- プレイ時間
- 30分〜
- 販売価格
- 4,600円(税別)
【内容物】
水没タイル…20枚/陸タイル…10枚/壁ピース…60個(全6色、各10個)/接続ピース…20枚/ビューマーカー…6枚/ロスタイムマーカー…3枚/ラパラパマーカー…1枚/ラパラパの顔マーカー…5枚/粘土…1個/法則カード…6枚/ヒントカード…6枚/チャレンジカード…12枚/モニャイの仮面(VRゴーグル)…1個
※このゲームには、別途スマートフォンが必要です。アプリは、無料でダウンロード可能です。
【アプリ対応予定プラットフォーム】
iOS(iPhone5)以降対応予定
Android 2.3.1以降対応予定
関連リンク
連載
いま、ボードゲームがアツい! オセロ、チェス、将棋、人狼などなど、「ボードゲーム」と一口にいっても色々ありますが、KAI-YOU.net では、あまり知られていなくてもPOPなゲームがあれば、実際にプレイしてご紹介していきます!
1件のコメント
ねりまちゃん
プレイさせてもらったのですが、アニュビスに引き続きこちらもめちゃめちゃ楽しかったです!