連載 | #6 古今東西ボードゲーム探検!

【試遊レポ】VRボードゲーム『アニュビスの仮面』 VRの弱点を逆手に取った斬新な発想

【試遊レポ】VRボードゲーム『アニュビスの仮面』 VRの弱点を逆手に取った斬新な発想
【試遊レポ】VRボードゲーム『アニュビスの仮面』 VRの弱点を逆手に取った斬新な発想

VRボードゲーム・アニュビスの仮面

近年、「Oculus Rift」など、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を装着して360度に広がるバーチャル空間で遊べる、いわゆる“VRゲーム”に注目が集まっている。

VRゲームは新たなゲームの形としてもてはやされ、2016年上期には「PlayStationVR」が発売予定と、今まさにVRゲームは黎明期にある。そんな中、2015年秋に発表され好事家の耳目を集めたのが、VRゲームとアナログゲームを組み合わせた“世界初”のゲーム『アニュビスの仮面』(発表時タイトル『TOWER OF MAZE』)だ。

VRゲーム『アニュビスの仮面』パッケージイラスト

『アニュビスの仮面』を制作するギフトテンインダストリ株式会社は、「1点ものと大量生産のちょうど間の、ものづくり」を掲げ、これまでにも視覚障碍者と健常者が一緒に遊べるアナログゲーム『アラビアの壺』や『ダッタカモ文明の謎』を発表し、話題を呼んだ。

同社のゲームデザイナー・濱田隆史さんは、『星のカービィ』や『大乱闘スマッシュブラザーズDX』などの開発で有名なHAL研究所出身。昨年亡くなった岩田聡さんの古巣だったことでも知られている。

「デジタルゲームで視覚情報を制限するのは難しいですけど、アナログゲームだったら、例えば視覚に頼らないで匂いや物の重さとかをゲームに組み込める。それにプレイ中、ルールを変えたりもできるアナログゲームに、可能性を感じてます」(濱田)。

濱田さんによれば、今回の『アニュビスの仮面』は、VRゲームに興味を持っている耳の早いコアファン向けであると同時に、普段ゲームをしない人でも十分楽しめる内容になっているという。

今回、濱田さんにレクチャーをしてもらいつつ、実際に『アニュビスの仮面』の試作版をプレイ! 制作秘話と共にその魅力を紹介してみたい——。

文・構成:須賀原みち

協力型VRゲーム『アニュビスの仮面』ルール

ハコスコとスマホアプリを使ってプレイ!

『アニュビスの仮面』はハコスコとスマートフォンの無料専用アプリで遊べる。今回はハコスコも試作版のため、編集部で目のイラストを描いて使用した

『アニュビスの仮面』は、VRゲームと言っても高価なHMDをあらかじめ所持しておく必要はなく、ボードゲームの中に入っているダンボール製のVRビューワー「ハコスコ」と、スマートフォンの無料専用アプリを使って、手軽にVRを楽しむことができるゲーム。

主にゲームで使うのは、パズルのようにピースごとに分かれている通路タイルや白いオブジェ、そしてアイテムカードだ。

自分が見た視覚情報を仲間に口頭で伝える協力型ゲーム

真ん中に迷路を作るスペースをあけながらパーツを配置

基本的に2人〜9人のプレイヤーが一丸となって、この通路タイルをパズルのように組み合わせながら、HMDに表示される迷路をつくり上げ、冒険者をスタート地点からゴール地点まで正しく導くことを目指す“協力型”のゲームとなっている。

1ターンにつき、ひとりのプレイヤーがHMDをかぶり、自分の目の前に表示される迷路の形や置かれているオブジェなどの視覚情報を60秒以内に口頭で仲間に説明 その言葉を頼りに、ほかのプレイヤーたちは用意された通路タイルやオブジェを使って、迷路のパーツを組み合わせていく。

9ターン以内に正しい迷路を完成させればゲームクリア

パーツを組み合わせながら迷路を作っていく

その後、HMDを別のプレイヤーに渡して次のターン。迷路の別の場所に立ったプレイヤーが、同じく目で見ている情報を口頭で説明する。

これを9回繰り返して、毎回ターンの終わりごとに迷路のパーツを組み合わせながら(組み合わせられなかったら組み合わせなくてもいい)、最後にパーツすべてを合体させて、正しい迷路をつくりあげ、無事、冒険者がスタートからゴールまでたどり着くことができれば成功だ。

早速『アニュビスの仮面』をプレイ! “情報非対称ゲーム”の魅力

アニュビス仮面 試作版 プレイ映像(みわたす編)
それでは、さっそくHMDを装着。なるほど、自分が立っている場所から迷路の中がぐるりと見渡せる。これを60秒以内に周りのプレイヤーに伝えればいいわけだ。

360°見渡すので、他のプレイヤーと見ている方向が全く違うのも面白い

え〜と、目の前がまっすぐの通路で、1マス目に右に曲がれるところがあって、それで、こっちに時計があって……それで、えっと……

他のプレイヤーは、言葉を頼りにタイルを組み立てていく

タイルを組み立てるほかのプレイヤーたちは、「えっ!? まず、どのタイルを置けばいいの?」「こっちって、どっち!?」と困惑しっぱなし。

あっという間に60秒が経過してしまった。HMDを外して、出来上がった迷路のパーツを見てみると、自分が見てた迷路と全然違う!! 自分だけが見ている情報を口頭で伝えるのが、こんなに難しいとは……。

そう、このゲームは、プレイヤー同士の情報の差を利用する、いわゆる“情報非対称ゲーム”だ。VRゲームは基本的にHMDを着けている人しか楽しむことができず、それが弱点ともいわれていた。しかし、『アニュビスの仮面』は「むしろその弱点を逆手に取る形でゲームにしたかった」と、濱田さんは語る。

「例えば、待ち合わせのとき、電話で自分のいる場所を説明したりするじゃないですか。『今、××の看板が見えるよ』とか。で、実際に出会えたらうれしい。そういった楽しさをゲームにできたらな、と思ったんです」(濱田)

ゲームに戻って、ほかのプレイヤーにHMDを渡して交代。しかし、交代したプレイヤーも見える情報を手当たり次第に説明するので、聞いてる方は「???」。案の定、HMDを外すと「全然違〜う!」と嘆いていた。
最後はアプリの音声従って答え合わせ
そんなこんなで試行錯誤を繰り返しながら、出来上がった迷路のパーツ9個。しかし、「自分が見ていた迷路となんか違うんだよなぁ……」それぞれがそんな思いを抱えつつ、無理やりひとつにつなげてからアプリと答え合わせ。

「真っすぐ進みます」「左を向きます」など、アプリから流れる音声に従って、冒険者コマを動かしながら、1コマずつ、正解の迷路を確認。
アプリの画面上でも、実際に正解の迷路をキャラクターが1歩ずつ進んで行く。途中、音声の指示通りに盤面上を移動できなければ、ゲーム失敗だ。

結果、私たちがつくった迷路はグチャグチャで、当然ながら冒険者コマが出口にたどり着くことはできなかった……。

画面に表示されているアプリの地図と全く違う私たちがつくった地図……

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CKS

CKS

めちゃくちゃに面白そうすぎるオブザノミネート

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