連載 | #9 ポップなまとめ記事をつくってみた

2010年以降の日本語ラップ名曲まとめ 進化を続ける新たなヒップホップ

2014年

AKLO - RGTO feat.SALU, 鋼田テフロン & Kダブシャイン
レーベルメイトでありながら独自の道を探求し続けるAKLOさんとSALUさんの2人に加え、「BACHLOGIC」名義などでも活動する鋼田テフロンさん、キングギドラ(現:KGDR)のKダブシャインさんまで参加した豪華な曲。

MVは漫画『クローズ』的な学園抗争モノを意識してつくられていますが、爽やかな印象があるSALUさんが、キレたらまじで怖そうなキャラクターを演じきっています。というかみんな演技が上手い。何度でも見られる秀逸なMVと楽曲です。
GOMESS - 人間失格
「高校生ラップ選手権」で準優勝を果たして頭角を現したラッパー・GOMESSさんの名曲。自閉症を患った当時の情景と感情をラップで表現しています。

幻想的なトラックながら力強くラップするさまは、瞬く間に普段ラップを聴かない人にも届き、多くのメディアで取り上げられるなどして話題となりました。「My Name is GOMESS 人間じゃねえ」と歌う彼から、確かに人間の枠に収まらない迫力を感じます。
AYA a.k.a.PANDA,FUZIKO,SYK,LADY CAT,CASPER,Lipstorm and AYA - NEW MONEY
ISH-ONEさんの楽曲「NEW MONEY」を渋谷強めギャル系フィメールラッパー集団がリミックス。この楽曲に参加した実力派フィメールたちは、現在はS7ICKCHICKsとして活動しています。

流行の兆しがあった軟弱な文科系女子ラッパーとは真逆のスタイルですが、本楽曲をきっかけに一気に知名度が広がりました。ちなみに筆者はAYA a.k.a.PANDAさんが大好きです。
BOMBRUSH!(feat. 漢 a.k.a GAMI) - 証明
DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH!さんの「BLACK FILE THE BOMBRUSH SHOW 3」収録曲。日本におけるハスリングラップ、そしてMCバトルの第一人者である漢さんが載せるラップは「根暗、アングラ、文学系、スピリチャル(略)ポップス、ギャングスター、ネットラッパー ラップにはそれぞれの意味がある」。

超リアルハードコアな漢さんが、日本のヒップホップにおける多様性を明確に肯定している曲だという点だけでも感動しました。内容はかなり黒いけど漢さんのラップは意外にメロディアスで聞きやすいです。

2015年

Dutch Montana, DOGMA, Junkman - Daijoubu
2015年に突如として現れた東京ストリート発のクルー・YENTOWN。Chaki Zuluさんのハイセンスなトラックに、ドラッギーなラップが載るさまは、かつてのヒップホップのような汗臭さや泥臭さはまるで感じず、新しさの象徴のようにうつりました。

中でも「Daijoubu」はシンプルすぎるhook「大丈夫じゃねえ けど大丈夫かも」がライブで非常に盛り上がる名曲。今一番現場が盛り上がっているクルーではないでしょうか。メンバーのJunkman(現・JNKMN)さんをはじめ、アパレルブランドを展開している人もいて、みんなお洒落です。東京っぽい。
BUSSIN - SEEDA, Junkman, kZm
こちらもYENTOWNの楽曲。SEEDAさんが注目する気鋭ラッパーを集めたMIX CD『CONCRETE GREEN』にも収録され、SEEDAさん本人もラップを行うのですが、不穏なトラックをつん裂くような鋭いフロウがめちゃくちゃかっこいいです。

ライブで「BUSSIN!」って叫ぶとめっちゃ気持ち良いです。
サ上と中江 - SO.RE.NA
サイプレス上野さんとガールズダンスユニット・東京女子流のメンバーである中江友梨さんによるヒップホップユニット。

年の差が17歳離れた世代違いのラップユニットだが、「それな!」などの若者言葉や「ポケベル」などの昔流行ったツールに言及した楽しさ満載のリリックを生み出しています。EAST END×YURIによる往年の名曲「DA.YO.NE」を意識している点もヒップホップ。
加山雄三 feat. PUNPEE - お嫁においで 2015
俳優/シンガーソングライター・加山雄三さんの往年の名曲をPUNPEEさんがリミックス。朗らかでとても聴きやすいラップソングですが、50年も前の曲をヒップホップとして蘇らせたPUNPEEさんの手腕の凄さが同時に伝わります。

MVの終わりには加山雄三さん自身も登場し、ラップという歌唱法にかなり興味を持っている様子がうかがえます。

2016年

MAGiC BOYZ - ありのままでマジボ
幾度もオーディションに落選した経験から生まれた反骨心を原動力にラップを行う男の子アイドルグループが「マジボ」ことMAGiC BOYZ

ストリートでのビジネスや生い立ちの不遇、挫折と成功を歌うラップとは一線を画し、学校生活を中心とした青春像を歌う彼らのラップは日本ヒップホップ史においても稀有。2名のメンバーの脱退を経験しつつも、今後の可能性は計り知れません。
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) - みんなちがって、みんないい。
多様化が極まりつつも発展を続ける日本のラップシーン。そんな状況の中で生まれたのが、ややシニカルながら俯瞰的に歌った「みんなちがって、みんないい。」。

UMB3大会連続優勝という偉業を成し遂げたR-指定さんによる他ラッパーたちのフロウの模倣までもdisっぽく聞こえてしまいますが、あくまで楽曲の内容は本心だそうです。YouTubeのコメント欄までも「このラップはあのラッパーの真似だ」といった話題で盛り上がっており、面白く計算された楽曲になっています。

まだまだ歴史が浅い音楽分野である日本語ラップ

他にも挙げたい曲はたくさんありますが、最近ヒップホップ聴いてないな、どんな曲があるのかな、と探すときの参考になればと思います。

「人間発電所」や「証言」、もしくは「Grateful days」といった往年の名曲ばかりがクローズアップされてしまいがちな日本語ラップですが、現在のシーンもとてつもなく高度に進化し続けています。

まだまだロックやポップスに比べると日本に根付いてからの歴史は短い音楽ジャンルですが、だからこそ実験的かつ斬新な楽曲が自由に制作され、リスナーもそれを自然と受け入れているのが日本語ラップの最も魅力的な部分だと思っています。
1
2
この記事どう思う?

この記事どう思う?

関連キーフレーズ

連載

ポップなまとめ記事をつくってみた

日夜生み出される現象や事象を“ポップなまとめ記事”として紹介する人気連載。 いま注目を集めるジャンル、気になったときにチェックしたいトレンド──。 KAI-YOUでは「POP」を軸に、さまざまな対象をまとめて紹介していきます。

2件のコメント

※非ログインユーザーのコメントは編集部の承認を経て掲載されます。

※コメントの投稿前には利用規約の確認をお願いします。

testtesttest

編集部

人間交差点のヨコハマシカ最高だった〜

tyanyone

米村 智水

他にもおすすめな曲ありましたらコメント欄で教えてほしいです〜〜