現在、10月13日(月)まで開催中の2025年日本国際博覧会(EXPO 2025 大阪・関西万博)。4月下旬、KAI-YOU取材班は2日間にわたって「大阪・関西万博」を訪れました。
約6万平方メートルで「最大の木造建築物」としてギネス世界記録にも認定された「大屋根リング」をはじめ、各パビリオンの個性的な建築、パブリックアートなどが至るところに設置され、会場を練り歩くだけでも多様な文化に触れることができます。
「大屋根リング」
漫画家/美術家の横山裕一さんや西島大介さん、アーティスト・はくいきしろいさんの壁面アートなども点在し、好きな作家の作品と思わず出会うなんてことも。もちろん、一躍人気となった公式キャラクター「ミャクミャク」のいろいろな姿も見つけられます。
西島大介さんによるイラストも
はくいきしろいさんの壁面アート
あまりのボリュームに数日では到底周りきれない「大阪・関西万博」ですが、2日間で取材班が可能な限りめぐった各パビリオンについてレポートしていきます。
取材・文:須賀原みち 編集:xiutx/shuto、恩田雄多
目次
火星の石と邂逅 半世紀を経て復活した人間洗濯機も
まずは国内のパビリオンから。と言っても、スケジュールの都合上、訪れることができたのは、日本館と大阪ヘルスケアパビリオンのみでした。
日本館「火星の石」
「循環」をテーマにした日本館では、プラントエリア、ファームエリア、ファクトリーエリアという3つのエリアに分かれています。
日本館
日本館公式サイトによると、「万博会場内で出たごみが、微生物のはたらきによって分解され、バイオガスとして再生される。その過程をインスタレーションで追体験」できるパビリオンとなっています。
そして、プラントエリアの最後に展示されているのが世界最大級の火星隕石である「火星の石」です。これには、火星に水があったことを証明する粘土鉱物が含まれていて、もしかしたら火星にも生命がいたかもしれないことを示唆するものとして展示されているそう。
これが火星の石!
日本館には、JAXAの探査機が小惑星から採取した砂も展示。宇宙開発が注目を集める中で、エネルギーや水と生命の関わり、宇宙へと思いを馳せてみるのも一興です。
大阪ヘルスケア「ミライ人間洗濯機」
体験型コンテンツ「XD HALL モンスターハンター ブリッジ」や、アプリで25年後の自分のアバターの生成を楽しめる大阪ヘルスケアパビリオン。
中でも、開催前から注目を集めたのが、株式会社サイエンスが開発した「ミライ人間洗濯機」でした。1970年開催の「大阪万博」で展示された「ウルトラソニックバス」(通称・人間洗濯機)が、半世紀以上を経てパワーアップしています。
「ミライ人間洗濯機」
大阪大学産業科学研究所と共同研究/開発された「ミライ人間洗濯機」はファインバブル技術で洗浄機能がアップしていることに加え、入浴中の心拍測定によって心身の状態をチェック。入浴者に適した映像や音楽を体験させることで、ウェルネスに寄与するとされています。
担当者によれば、「ミライ人間洗濯機」で培われた技術は、介護者の入浴介助支援となるだけでなく、心拍測定に紐づいたビッグデータを用いて、病気リスクの発見といった技術展開を見込めるようです。
大阪ヘルスケアパビリオン全体も個性的なつくり
スマートフォンや回転寿司、缶コーヒーが過去の万博で生まれてきたように、万博ではこうした未来のプロダクトの萌芽を見ることができます。
タマーの吉本、ノモのパナソニック、アトムのパソナ 国内民間パビリオン
続いては国内の民間のパビリオンを見ていきます。
よしもと waraii myraii館
吉本興業ホールディングス株式会社による「よしもと waraii myraii館」。
「大阪・関西万博」の西ゲートを進んでいくと、吉本興業のロゴにもある笑顔の巨大な球体「タマー」が目を引きます。
巨大な球体「タマー」
土台部分は緑の台形状になっており、多くの来場者が座って休憩しています。隣接するステージ「アシタ広場」では、表情や身振りで表現するノンバーバルな「Comedy show」が催されており、国内外の老若男女が楽しめるつくりに。
また夜になると、伝統的な盆踊りにカラオケやダンスを融合させた、新しい参加型イベントが毎日開催されており、大盛況となっています。
「アシタ広場」
笑顔の球体「タマー」下の展示スペースでは、よしもと館のアートディレクターをつとめるアートディレクター・MASARU OZAKIさんの作品を展示。来場者の予想を裏切るようなインスタレーションが配置されています。
巨大なネギのオブジェ
中央には巨大なネギのオブジェがドーンと据えられ、座っての撮影もOKということで取材班もはしゃぎながら記念撮影。お笑いのイメージが強い吉本興業とは一味違った展示となっています。
パナソニックグループ「ノモの国」
東ゲートを入って、すぐにパナソニックグループのパビリオン「ノモの国」が見えてきます。
外観からして、世界的建築家・永山祐子さんがデザインした水色とピンクのファサード(外観)が印象的で、風になびいて色合いを変化させる姿がどこか生物や細胞を思わせて、ついつい見入ってしまいます。
「ノモの国」
見るに時間帯や風向きによって表情が変わるファサード
パビリオン内部では、「Unlock体験エリア」を巡っていくことになります。入口で、市ノ瀬加那さんや潘めぐみさん、悠木碧さんが声優をつとめたオリジナルアニメーションを用いた案内(インストラクション)映像の後、入場となりました。
来場者一人ひとりが手にした結晶を会場内の装置にかざすと、音や光が空間に広がったり、結晶で行動をセンシングしていたのか、体験者が意識しない形で組み込まれたパナソニックの技術により、自身のパーソナリティを診断する仕掛けが用意されています。
特に、子どもたちがはしゃぎながら広い空間を縦横無尽に駆け巡っていたのが印象的です。
結晶をかざすことで音や光が広がる装置
壁面に投影されるチョウを子どもたちが追いかけていました
また、「大地エリア」ではパナソニックグループが手がける様々な最新技術を展示。
日本発の軽量かつ柔軟な新しい太陽電池として研究開発が進められている「ペロブスカイト太陽電池」や、シアノバクテリアからつくられた農作物の成長を刺激/補助する成長刺激剤「Novitek」などが紹介されています。
「ペロブスカイト太陽電池」紹介コーナー
企業の研究とそれらを活用したプロダクトをわかりやすく知ることができるので、知的好奇心が刺激されます。
パソナグループ「PASONA NATUREVERSE」
人材サービスやライフソリューションなどを提供するパソナグループのパビリオン「PASONA NATUREVERSE」は、アンモナイトを模した螺旋状の建築が特徴で、穂先には鉄腕アトムの姿が見えます。
パビリオンの扉にはアトムとお茶の水博士、そしてブラック・ジャックの姿が。というのも、本パビリオンのナビゲーターを「ネオアトム」が、からだナビゲーターとして「ブラック・ジャック」が任命されているからです。
「PASONA NATUREVERSE」外観
穂先に座る鉄腕アトム
パビリオンの扉では鉄腕アトム、お茶の水博士、ブラック・ジャックがお出迎え
ネオアトムは、人類に迫る危機を回避するために大破したアトムが、ブラック・ジャックによってiPS心臓を移植された存在であり、この誕生秘話はパビリオン内で上映されるアニメで明かされます。
ネオアトム誕生秘話を描くアニメのワンシーン
パビリオン内部では「からだ」「こころ」「きずな」をテーマにした展示として、「いのちの歴史ゾーン」では宇宙のはじまりからカンブリア大爆発、インターネットの隆盛などを盛り込んだ巨大オブジェ「生命進化の樹」、「からだゾーン」では現在開発中の「iPS心臓」をはじめ、「未来の医療」のプロトタイプなどを見ることができます。
特に「未来の医療」の展示など、企業間によるオープンイノベーションの成果を間近で見られるのは、万博ならではといったところ。
巨大オブジェ「生命進化の樹」
圧巻だったのは「こころ・きずなゾーン」の「NATUREVERSEショー」で、映像に合わせて立方体のスクリーンが伸縮しながら移動していく様子は、なかなか見たことがありません。
「NATUREVERSEショー」
映像では、ネオアトムがナビゲートしながら地球の歴史を振り返っていくのですが、自然が破壊される様から「人間は世界を変える存在であることを自覚しなければならない」と言及した後、自然とテクノロジーが共生する世界を描き出していました。
©TEZUKA PRODUCTIONS

この記事どう思う?
関連リンク
0件のコメント