「大阪・関西万博」とは何だったのか──2日間取材した記者が感じた“破滅”の想像力

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須賀原みち

2025年の今だからこそ? 印象深かった“破滅”のイメージ

ここまで、取材班がめぐったパビリオンを駆け足で見てきました。ここからは「大阪・関西万博」を2日間巡った上での個人的所感をまとめていきます。

まず、あくまでも印象論ですが、「ノモの国」や「null²」の外観、「アオと夜の虹のパレード」など、意匠として淡いグラデーションの多用が目立ちました。

グラデーションカラーの表現

もちろん光をキレイに演出するとなると、必然的にそういった表現になるのかもしれません。それでも、性の多様性の象徴としても掲げられるグラデーションが多く用いられている点で、多様性という現代的なテーマ性を想起しました。

また、興味深かったのは「PASONA NATUREVERSE」の映像や、「アオと夜の虹のパレード」、「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」(別記事参照)での戦闘シーンなど、一部の展示の中に破滅のイメージが散見されたことです。

崩壊や争いというのはエンターテインメントに盛り込まれがちな要素であり、そこに特別な意味はないのかもしれません。それでも、2025年の「大阪・関西万博」である種の破滅が描かれるのは今だからこそ、とも思います。

現代社会が抱える危機意識 大阪・関西万博がきっかけになるなら

近年の地球温暖化やそれに伴う世界的な自然災害、ロシアのウクライナ軍事侵攻にパレスチナ問題など、私たちが現実で解決しなければならない課題は山積しています。

そもそも2015年に国連サミットで「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されたのも、「このままでは持続不可能になってしまう」という危機意識からです。

筆者は、日本の高度経済成長期の只中にあった1970年の「大阪万博」、2005年の「自然の叡智」をテーマにした「愛・地球博」を訪れていません。ただ比較こそできないものの、「大阪・関西万博」の中で厳然と破滅が描かれているのは、今の危機意識を反映しているのでは? と想像しました。

マスコットキャラクターとして人気のミャクミャク

現代ではSDGsを含め、世界的規模の課題だけでなく、より身近な問題意識が問われています。経済・教育格差や貧困問題、ジェンダー平等にエネルギー、生物多様性など、こう書くとしかつめらしく聞こえますが、実際には一人ひとりの生活と紐づいた話でもあります。

もちろんこんな小難しいことを考えずとも、行ってみると「大阪・関西万博」は楽しいです。各国や企業のパビリオンは趣向を凝らして自国の文化や最新技術を紹介し、なんとなく見て周るだけでもワクワクできます。

大屋根リングや各パビリオンの背後に打ち上がる花火

今回の「大阪・関西万博」は開催以前から、その意義や財源などから多くの批判を集めました。その是非についてここでは言及しませんが、開催した以上は、私たちみんなが生きる未来社会を考えるためのきっかけや気づきに繋がってほしい──そう感じた万博でした。

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