「大阪・関西万博」とは何だったのか──2日間取材した記者が感じた“破滅”の想像力

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須賀原みち

落合陽一「null²」、河森正治「いのちめぐる冒険」──シグネチャーパビリオン

次は、「大阪・関西万博」のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」をもとに展開され、万博の中心的な役割を担うシグネチャーパビリオンを見ていきます。

null²(ヌルヌル)

「いのちを磨く」をテーマに、メディアアーティスト・落合陽一さんがプロデューサーをつとめるのが「null²(ヌルヌル)」。

すでに多くの評判を呼んでいる人気のパビリオンで、鏡面素材によって構成された特徴的な外観も多くの来場者の興味を引いていました。

響き渡る重低音とそのビジュアルで存在感はかなりのもの

近づくとまるでのぞかれているかのような圧があります

入場前に自身の体を3Dスキャンし、音声などを入力することで、自分のデジタルの分身「ミラードボディ」を作成。鏡面状LEDに囲まれたパビリオン内部では、そのデジタルの分身が登場して、前衛的な演劇のように話す場面も。

公式サイトの説明によれば、「自然と人工物、身体と情報空間が融合した『デジタルネイチャー(計算機自然)』を通じ、来場者の皆様に新しい自己認識や生命観を提供」します。

自分の「ミラードボディ」が現れてしゃべりはじめるとちょっと恥ずかしい

展示の意味がわかるかと言われると正直、筆者はあまりわからなかったのですが、ハイコントラストな静止画が高速で切り替わっていく映像はドラマ『ケイゾク』のオープニングを思い起こし、観客に語りかけるようなポエムはセカイ系を彷彿とさせました。

どこか『ケイゾク』っぽさを感じました

なお、展示後に通される観覧室では、落合陽一さん本人による作品解説としてのコメンタリーも聞けるので、気になった方はそちらもチェックしてみてください。

いのちめぐる冒険

マクロス」シリーズで知られるアニメ監督/メカニックデザイナーの河森正治さんがプロデュースしたシグネチャーパビリオン「いのちめぐる冒険」。

「いのちめぐる冒険」

ヘッドマウントディスプレイを装着して、XR(クロスリアリティ)技術などを駆使した映像体験を堪能できる「超時空シアター 499秒 わたしの合体」、映像や振動、立体音響の中で楽しむ超イマーシブ空間「ANIMA!」といった7つの展示が設けられています。「超時空シアター」と「ANIMA!」の音楽は、音楽家の菅野よう子さんが手がけています。

取材班が体験したのは「ANIMA!」。天井から垂れ下がるいくつもの幕に映像が投影され、立体音響が響き渡る中、自分の動きに合わせて振動する床の中で、自由に動き回ることができます。

色鮮やかな映像が投影され続ける

壁面(写真の右側)は鏡張りのため空間に覆われている感覚がすごい

ラテン語で「生命」や「魂」を意味するアニマという言葉の通り、自分の身体を動かしながら、プリミティブな面白さを表現していました。

水と空気のスペクタクルショー、気持ちを交換するコンビニも

最後に、それ以外の企画で体験したものを紹介します。

水と空気のスペクタクルショー 「アオと夜の虹のパレード」

サントリーホールディングスとダイキン工業による「アオと夜の虹のパレード」は、万博会場南側の「ウォータープラザ」で行われるナイトスペクタクルショーです。

音楽、噴水、光、炎などを用いた水上ショーで、物語は月夜に虹がかかると生きものたちの祝祭が開かれるという島に暮らす子どもと、奇妙な鳥・ドードーとの出会いからはじまります。

「アオと夜の虹のパレード」

水のスクリーンに光が投影され、立体的な紙芝居のように展開されるのは、水と空気と生命がつながり巡る物語。機械的に制御された壮大な水と光の演出に、観客からは大きな歓声が上がっていました。

キモチキオスク

期間限定で数多くの出展者が入れ替わる「フューチャーライフヴィレッジ」にて、4月22日〜28日の期間中、オフィス家具の製造/販売や多様な空間デザインを手がける株式会社オカムラが出展していた体験型展示が「キモチキオスク」です。

オカムラではスーパーマーケットやコンビニの什器、空間設計なども手がけており、そのノウハウを活かしながら、買い物の原点は「キモチの交換」にあるとし、日頃から伝えたかった素直な気持ちを商品として相手に贈り合う、という一風変わった趣向を設定したそうです。

一見普通のコンビニのようですが……

並んでいる商品をよく見ると?

来場者はペア(または一人、複数人なども可能)で入店し、「反省中華 この前はご麺」「やめなサイダー」「あなたを見込んで頼ミルク」など、(駄?)洒落の効いた“キモチ”を表現した言葉が書かれた全46種類の商品から、相手に今伝えたい想いに合ったもの数点をカゴに入れていきます。

そして、いざ2人でレジに並び、互いに選んだ商品を交換することで、相手に自分の気持ちを伝えます。レジでは交換の際にペアの写真が撮影され、レシートとして思い出を持ち帰ることができます。

レジで選んだ商品(キモチ)を交換

「キモチキオスク」

開催期間中には、学校行事で訪れた高校生同士が「キモチップス ずっと前から好きでした」を交換して、見事カップルが成立したこともあったとか。万博会場での青春過ぎるエピソードに、眩しすぎて目がくらむところでした。

くら寿司

回転寿司チェーンのくら寿司が出展するパビリオンでは、「ハンズ・ハンズ®️PROJECT」として、約70の国と地域を象徴するメニューを堪能できます。

アメリカの「ハンバーガー」や中国の「月餅」、ベルギーの「ベルギーワッフル」など、日本でもお馴染みのものから、マーシャル諸島の「ポキ」やアイルランドの「ボクスティ」、パナマの「エンサラダデフェリア」など、名前だけ聞いてもまったくどんな料理か想像できないメニューが一堂に会しています。

くら寿司店内

異国の料理を注文(寿司ではない)

せっかくの「大阪・関西万博」ということで、まったく耳馴染みのない料理を多く頼んでみました。

「この国とあの国の料理は似ている」「この国は豆や芋が主食っぽい」「地理的に保存が効くように発展したのかも?」など、料理からその国柄を推察し、話し合ったりしつつ舌鼓を打ちました。食からその国を知ってみるというのも面白いかもしれません。

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