トレーディングカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング(以下、『マジック』)』の開発チームが、特定のカードをゲーム上で使えないようにする「禁止制限告知」の時期を変更するという声明を発表した。
今回の発表で、次回の「禁止制限告知」は予告されていた11月24日(月)から11月10日(月)へと前倒しされる。
声明の中では、「ファイナルファンタジー」シリーズとのコラボセットで登場したカード《迷える黒魔道士、ビビ》が「スタンダード」というルール(フォーマット)で猛威を振るっていることへも言及。
同カードについて「スタンダード環境を歪めており、おそらくは退いてもらう必要があるでしょう」と禁止を示唆するような異例のコメントを残している。
異例となる、『マジック』禁止制限告知の前倒し
『マジック』では、直近3年間のカードが使える「スタンダード」、2012年以降に発売されたカードが使える「パイオニア」など、使用可能なカードプールに制限を設ける形で複数の“フォーマット”が制定されている。
大会もフォーマットごとに開催されており、開発チームは、大会結果やプレイヤーからのフィードバックをもとに、各フォーマットへ悪影響を及ぼしているカードがあった場合は禁止指定を行っている。
通常、禁止の告知は事前に定められたスケジュールに沿って行われる。特例として緊急で禁止指定を行うことはあっても、今回のように特定のカードが環境を歪めていると名指したうえで、スケジュールの前倒しを事前予告するのは異例だと言える。
今回のアナウンスに際し、開発チームは「私たちはこの時期における禁止制限告知のタイミングを間違えていたと考えています」とコメント。
「告知をプレイシーズンと連動させる形式にしたのは今年が初めてでしたが、適切な告知時期をスケジュールできていませんでした。これがスタンダードを含んだいくつかのフォーマットにさらなる負担を与え、競技的プレイの楽しさを損なう要因になっていることを認識しています」とし、来年の禁止告知のスケジュールについてもさらなる検討を進めるとしている。
登場直後からスタンダード環境で猛威を振るう《ビビ》
今回、名指しで禁止の可能性が示唆された《迷える黒魔道士、ビビ》は、MTGの歴史上最も売れたセットとなった『マジック:ザ・ギャザリング──ファイナルファンタジー』で登場したカード。
6月に発売されると、当時強力なデッキとして存在していたスタンダードの「イゼット果敢」に採用され、そのパワーをさらに強大なものに。
「イゼット果敢」は、世界各地のチャンピオンシップを勝ち抜いたプレイヤーが集う大会「プロツアー マジック:ザ・ギャザリング――FINAL FANTASY」においても40%を超える使用率を記録した。
「イゼット果敢」自体は6月30日の「禁止制限告知」で《迷える黒魔道士、ビビ》以外の主要カードが禁止指定されたことでパワーを落としたものの、それ以降、《迷える黒魔道士、ビビ》と《アガサの魂の大釜》を採用したデッキ「イゼット大釜」が躍進。
9月1日にアメリカ・フロリダ州のオーランドで行われた大会「Magic Spotlight: Planetary Rotation」では、上位20名のうち12名が「イゼット大釜」を使用。最高成績は2位となっている。
使用率2位のデッキ「赤単アグロ」が上位20名中6名だったことを考えると、「イゼット大釜」がメタゲームの重要な位置にいることが見て取れる。
「MTG」の大会運営や参加者のマッチングに使用されるツール「Melee」に記載された大会の結果。「Izzet Cauldron」が「イゼット大釜」を指す。/画像は「Melee」内の大会ページから
《迷える黒魔道士、ビビ》が禁止になるかは不確定
声明の中で言及されたものの、《迷える黒魔道士、ビビ》が禁止指定を受けるかは、まだ確定はしていない(その口ぶりから禁止になる可能性は高そうだが……)。
開発チームは声明の中で、デッキ「赤単」が「イゼット大釜」に対して高い勝率を出していることや、新たなデッキの登場に言及し、ゲームバランスに変化が起きていると説明。
そして、根底には「プレイヤーがデッキを組んだ際、それは可能な限り長い期間使い続けることができる、という確信を持てるようにしたいと考えています」という哲学があることを強調している。
8月2日から11月9日(日)にかけては、プロツアーなどへの参加権をかけた大会「チャンピオンズカップファイナル」の予選が全世界で進行中。今回の告知が11月10日になったのは、この予選の期間への影響を避けつつ、次の大会への期間を空けるためだとされている。
「チャンピオンズカップ」予選の結果を受け、どのような裁定が下されるのかに、注目が集まっている。

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