『Magic:The Gathering』統率者戦向けの高額カードが複数枚禁止に コミュニティに動揺広がる

『Magic:The Gathering』統率者戦向けの高額カードが複数枚禁止に コミュニティに動揺広がる
『Magic:The Gathering』統率者戦向けの高額カードが複数枚禁止に コミュニティに動揺広がる

禁止が発表された《波止場の恐喝者》《宝石の睡蓮》《魔力の墓所》/画像はKAI-YOU.net編集部撮影

トレーディングカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング(Magic: The Gathering、以下MTG)』が9月23日、フォーマット「統率者戦(EDH)」における禁止制限カードリストを更新した。

今回、禁止推奨カードとして追加されたのは、《魔力の墓所》《宝石の睡蓮》《波止場の恐喝者》《有翼の叡智、ナドゥ》の4枚。特に前半の3枚は「統率者戦」というフォーマット(遊び方)の特徴を規定していたと言ってもいいだろうカードたちだ。

「統率者戦」は複数人の仲間内でプレイするカジュアルなフォーマットであるため、あくまで“禁止の推奨”であり絶対的な効力を持つわけではない。

しかし、禁止指定を受けたことは少なからずカードの資産価値やセカンダリーマーケットへの影響もあるため、プレイヤーやショップ等のコミュニティに動揺が広がっている。

ローカルで非公式の遊びから、公式フォーマット化された「統率者戦」

『MTG』はウィザーズ・オブ・ザ・コースト社(以下、ウィザーズ)が開発する、TCGの元祖としても知られるゲーム。

30年以上の長い歴史の中で、使えるカードやデッキの構築方法などのルールが区分され、これまでにいくつものフォーマットが生み出されてきた。

構築だけでもこれだけの数がある。このほかにその場でパックを剥いて行う「リミテッド」にも複数の形式が存在する/画像は公式サイトから

今回禁止改定が行われたのは、そのうち「統率者戦」と呼ばれるフォーマットだ(海外では「EDH」と呼ばれ、国内でもそれに倣う場合も多い)。

この「統率者戦」は、通常2人で対戦する『MTG』において、3人以上での対戦を前提とした特殊なフォーマット。もともとはアメリカのジャッジコミュニティで生まれたローカルルール「Elder Dragon Highlander(EDH)」が普及し、公式化されたという歴史を持つ。

現在、統率者戦のルーリングを制定する「統率者戦ルール委員会」は「統率者戦の哲学」(外部リンク)と題した文書でみんなで楽しむこと、自由なデッキの創造を「統率者戦」の原則として打ち出している。

イベントなどにおいてルールの判定を行うジャッジ向けのサイト「Judge Academy」(外部リンク)でも「最も人気なカジュアル・フォーマット」と説明されているように「統率者戦」は特に海外において絶大な人気を誇っている。

ラスベガスで行われた30周年イベントの模様

特殊な遊び方でありながら、絶大な人気──公式からも優遇される「統率者戦」

今回、「統率者戦」の禁止改定でコミュニティに大きな動揺が広がったのには、大きく2つの原因がある。

まず1つは、禁止されたカードのうち《宝石の睡蓮》《波止場の恐喝者》が「統率者戦」を遊ぶために、ほぼ専用としてつくられた強力かつ高価なカードだったということだ。

そもそも、この「統率者戦」用のカードというのが『MTG』においては特殊な立ち位置にある。

『MTG』では各セット(拡張パック)が発売される際、ほぼ必ず「統率者戦」用の構築済みデッキが発売され、「統率者レジェンズ」と題された専用セットも定期的に発売されている。

6月発売の「モダンホライゾン3」では、「モダン」用のセットでありながら統率者デッキが2パターン(通常版と豪華版)用意された/画像は公式サイトから

他の競技フォーマットでは、時折競技シーンで使うには物足りない初心者用の「スターターキット」が発売される程度。競技シーンの入口となる「チャレンジャーデッキ」は2022年以降リリースが途絶えている。

また、定期的に発売される製品の中で、他にフォーマットの名を冠しているのは「モダンホライゾン」のみ。これらの事情を鑑みると、統率者は非常に優遇され、需要が高いといえる。

資産価値の高い、強力なカードたちが禁止に

そして、2019年に発売された構築済みデッキ「統率者(2019年版)」と2020年に発売された初代「統率者レジェンズ」で登場した強力なカードが、件の《宝石の睡蓮》《波止場の恐喝者》だ。

《宝石の睡蓮》は、『MTG』の有名カード《Black Lotus》を「統率者戦」用にリメイクしたカード。

自身の「統率者」の召喚に限定されているとはいえ、『MTG』における重要リソース・マナを瞬間的かつ大量に生み出すことができる。

宝石の睡蓮/画像は公式サイトから

《波止場の恐喝者》は、場に出た際、いつでもマナに変換できる《宝物・トークン》を生み出すカード。

相手の盤面が充実しているほど生み出す《宝物・トークン》が増えるため、一気に状況をひっくり返すポテンシャルを秘めている。

波止場の恐喝者/画像は公式サイトから

そして、今回禁止となったカードは、いずれも汎用性の高い強力なカードだった。《宝石の睡蓮》は1万5000円~2万円、《波止場の恐喝者》は1万円程度で取引されていた。

また、「統率者戦」用につくられたカードではないが、《魔力の墓所》も序盤から大量のマナを生み出せる強力なカードだ。

その強力さ故に、現在は全てのカードを使うことができるフォーマット「ヴィンテージ」と「統率者」でしか使うことができず、バージョンにもよるが2万円~3万円で取引されていた。

魔力の墓所/画像は公式サイトから

カジュアルフォーマットである「統率者戦」は、後述の事情もあり、滅多に禁止改定が行われることがないため、値崩れの心配も少ないものだと考えられていた。

特に《宝石の睡蓮》は「統率者戦」以外での用途が全く存在せず、禁止によって急激に市場価値は下がってしまうため、動揺が広がっている。

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1件のコメント

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匿名ハッコウくん

匿名ハッコウくん(ID:10622)

ただただ悲しい。これまでパワーレベルを理由に禁止はしない方針だったはずなのに、シェルドン氏の不在でここまでおかしくなってしまうのか。