外部団体「統率者戦ルール委員会」への不信感
動揺が広がっているもう一つの理由は、今回の禁止改定を行ったのが、ゲームを運営/開発するウィザーズ・オブ・ザ・コースト社ではなく、外部組織である「統率者戦ルール委員会」だということだろう。
この委員会は、5人のメンバーと13人の諮問メンバーによって構成されている。
公式のメンバー紹介(外部リンク)では『MTG』の製品開発に関わっていると書かれているメンバーもいるものの、基本的には有志が集まったウィザーズ社外の団体だ。
今回の改定(外部リンク)において、委員会は禁止の理由としてゲーム開始直後から大量のマナを使えることが、フォーマットの創造性を損なっていると説明している。
たしかに、これらのカードが禁止されることで、スピーディーなデッキが速攻でゲームを決めづらくなる側面はある。
一方で、マナコストが重いクリーチャーを「統率者」として指定している場合、これらのカードの存在によって、比較的早い段階から重いクリーチャーが活躍することで、スピーディーなデッキと渡り合えていた側面もある。
たしかに、ゲームバランスとして歪な側面もあったかもしれない。しかし、勝敗が明確な意味を持たないカジュアルなフォーマットにおいては許容範囲だったとの見方も強い。また、これらのカードは登場してから長く活躍してきたカード。問題視されることなく遊ばれてきた中で、禁止することの必然性を問う声も上がっている。
禁止改定はカードの資産価値にも直結するため、責任の重い仕事だ。ウィザーズ社については、不用意な改定を行えばユーザー離れや製品の買い渋りに繋がるというリスクと、面白いゲームを届けるという責任がある。
一方で「統率者戦ルール委員会」は、改定を行っても被るリスクや責任が見えづらい。アメリカの団体であることもあり、特に日本のコミュニティとは信頼関係があるとも言い難い状況もある。
その裁定に振り回されてしまうことへの不信感につながっている。
「統率者戦を意識した調整」で問題が起きた《ナドゥ》
また、《有翼の叡智、ナドゥ》が禁止されたことも、動揺を広げる理由かもしれない。
このカードは、6月に発売された「モダンホライゾン3」収録のカードであり、「モダン」フォーマットに大きな影響を及ぼし、8月に「モダン」での使用が禁止されたカードだ。
開発チームが直々に「デザインに失敗しました」と明言した稀有なカードでもあり、その反省として、開発の経緯が公式サイトで公開されている。
その中では、このカードの調整において、当初持っていた能力が「統率者戦」環境へ与える影響が大きいとの指摘があり、調整が行われたことが語られている。
制作スケジュールの都合上、修正版に十分なテストが行われないまま《有翼の叡智、ナドゥ》が出荷されてしまい、このような結果になってしまったという。
2人対戦ルールの「モダン」用セットのカードでありながら、「統率者戦」を意識しての調整が、間接的に環境のバランス崩れに寄与していた──この文書の公開後から「統率者戦」を考慮してカードを設計する必要があるのか、という声も強くなっていた。
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1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:10622)
ただただ悲しい。これまでパワーレベルを理由に禁止はしない方針だったはずなのに、シェルドン氏の不在でここまでおかしくなってしまうのか。