「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案(以下、AI推進法)」が5月28日、参議院本会議で賛成多数で可決し、成立した。
この法律は、AI関連技術の研究開発および活用を推進することにより、「国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的」としたもの。
AI推進法の成立により、内閣に人工知能戦略本部が新たに設置。AI関連技術の研究開発および活用の推進に関する施策を「総合的かつ計画的に推進」するとしている。
AIの研究開発&活用は「過程の透明性の確保が講じられなければならない」
AI推進法は、日本初となるAIに特化した法律。
政府が2月28日に閣議決定し、国会に提出。4月24日に附帯決議(=政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したもの)が付され、衆議院本会議で可決。5月28日に参議院本会議で可決された。
AI推進法では、基本理念の中で、AI関連技術の研究開発および活用は、「不正な目的又は不適切な方法で行われた場合には、犯罪への利用、個人情報の漏えい、著作権の侵害その他の国民生活の平穏及び国民の権利利益が害される事態を助長するおそれがある」ため、「過程の透明性の確保その他の必要な施策が講じられなければならない」ことを明記。
「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律案」第一章 総則 第三条(基本理念)/画像は衆議院公式サイトのスクリーンショット
その上で、不正な目的または不適切な方法でのAI関連技術の研究開発および活用によって、国民の権利利益への侵害が生じた場合、「分析及びそれに基づく対策の検討その他の人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に資する調査及び研究」を実施。
その結果に基づいて、「研究開発機関、活用事業者その他の者に対する指導、助言、情報の提供その他の必要な措置を講ずるもの」とした。
人工知能関連技術への理解と関心が“国民の責務”に
また、AI推進法の成立により、国民の責務(※)として「国民は、基本理念にのっとり、人工知能関連技術に対する理解と関心を深める」ことなどが求められるようになる。
(※)衆院内閣委員会では、「国民の責務」を「国民の努力」に改めるよう修正案が出されたが、否決された。
なお、附帯決議では、AI推進法の施行にあたり、政府側に対して、「AIの研究開発及び活用に当たっては、『人間中心のAI社会原則』に基づき、人間の尊厳を損なわないことを大前提とすること」が希望されている(外部リンク)。
また、AI関連技術を悪用したディープフェイクポルノ、とりわけ児童の画像などを使用したものへの対策は、法の下に厳正な取り締まりおよび被害者の保護を行うとともに、サイト管理者などへの削除依頼を強化することも附帯決議の留意事項に含まれている。

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