ボカロP・はるまきごはんさんの10周年記念のワンマンライブ「ハンドメイドギンガ Finale -新しい旅-」が、12月7日・8日に文京シビックホールで開催された。
“Finale”の文字からもわかる通り、この公演は、ボカロP/イラストレーター/アニメーターとして活動するはるまきごはんさんのアニバーサリーイヤーを締めくくるフィナーレ。
2月に開催したライブ「ハンドメイドギンガ」は、楽曲/MV/アニメが交錯する独自の“シアトリカルライブ”形式で展開。エテル・シアナという少女の銀河間鉄道の旅を通し、過去10年の楽曲世界を一本の物語として表現した。
まるで映画や舞台を鑑賞しているような濃密さ──MCほぼなし、生演奏に加え、大スクリーンでのアニメやMVの上映で構成された公演から10ヶ月。
12月の公演「ハンドメイドギンガ Finale -新しい旅-」は10周年のフィナーレとして、セットリストおよび演出を再構築し、アニメーションでストーリーを追加したことで、新たな旅路を感じさせる“拡張再演”となった。
今回は12月8日の公演について、前回から追加された部分を中心にレポート。最後には、ゲスト出演したユニット・ZLMS(ジルマス)メンバー(ジグさん、遼遼 a.k.a ルワンさん、雄之助さん)からのコメントも掲載する。
取材・文:highland 編集:恩田雄多 写真:Yukitaka Amemiya
目次
「僕は可憐な少女にはなれない」弾き語りで幕開け
まずは、ライブパフォーマンスでの新たな要素について触れておきたい。
「ハンドメイドギンガ Finale -新しい旅-」のセットリストでは、前回2月の公演から一部の楽曲が入れ替えおよび追加され、ライブとしてのボリュームも拡充されていた。
追加された楽曲は、主に2023年から2024年にかけてリリースした楽曲。1曲目は勢いのある楽曲でくるかと思いきや、はるまきごはんさんが「10年の節目の曲」と語る「僕は可憐な少女にはなれない」の前半を、弾き語りで披露した。
前回公演とは異なるスタート、さらには活動10周年を象徴する楽曲の新たなパフォーマンス。今回の公演が拡張再演であることを改めて印象づけた。
さらに、今回アニメーションパートでも新たに姿を見せたキャラクター・魔法使いエバが登場する「魔法使いエバ」も披露。この曲は10月にリリースされたアルバム『おとぎの銀河団』の1曲目に収録された新曲だが、ライブではアンコール前のラストナンバーに選ばれている。
セットリストには新曲以外も組み込まれており、冬の凍てつくような空気感が印象的な「ディナーベル」、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』描き下ろし曲の「エンパープル」など、近年リリースされた瑞々しい楽曲が新たな彩りを加えていた。
Live2Dアニメーションも加わったライブ演出
拡張再演を構成する要素はセットリストだけではない。はるまきごはんさんといえば、曲をつくり、自ら歌い、イラストを描き、アニメーションをつくる、という文字通りのマルチクリエイターだ。
「ハンドメイドギンガ Finale -新しい旅-」では、そういったクリエイターとしての飽くなき探究心がうかがえた。「ゼロトーキング」披露時の追加演出として、Live2Dで動く大令嬢(MVに登場するキャラクター)がステージに登場し、曲に合わせてダンスを披露した。
これまでのライブでは、キャラクターはあくまで紗幕に投影されたMVアニメーションの一部であったが、今回はキャラクターが映像という枠を出てステージ上で直接パフォーマンスするという表現に挑戦。
はるまきごはんさんが目指す、虚構と現実を分かたずにキャラクターを実在感あるものとして描くライブ形態に、より近づいた瞬間だったかもしれない。
アニメーションで描く「ハンドメイドギンガ」の新たな側面
ここからは、はるまきごはんさんのライブの特徴であるアニメーションパートについて振り返っていこう。
2月に開催された「ハンドメイドギンガ」で表現されたのは、緑髪の少女のエテル・シアナを中心とした銀河間鉄道を舞台に繰り広げられる物語。
彼女が、はるまきごはんさんの楽曲から生まれたキャラクターたちに背中を押されながら、葛藤(詳細は明かされていない)を乗り越え、最終的に目的地・ハンドメイドギンガに到達して大団円を迎える。
そんなストーリーが、はるまきごはんさんのパフォーマンスやMVの上映を織り交ぜながら、セットリストに呼応する形でアニメーションとして描かれてきた。
今回の「ハンドメイドギンガ Finale -新しい旅-」で追加されたアニメーションパートでは、エテル・シアナをはじめとするキャラクターの背景や彼女たちの行く先が示されており、一連の物語の世界観を補強していた。
開演直後に追加されたアニメーションでは、イノセンス・シアナと魔法使いエバという新キャラクターが登場。
2人のやり取りは、「ハンドメイドギンガ」という物語のプリクエル(前日譚)とも言える内容で、はるまきごはんさんの作品世界の根底の成り立ちを知る手掛かりが、断片的なセリフとイメージで提示された。
これまでのライブで登場していなかった魔法使いのエバは、今回のアニメーションにおいてはじめて本格的に姿を見せた。
声の出演こそなかったものの、物語世界における“銀河”を創造したことが明かされるなど、前述した楽曲「魔法使いエバ」と共に、今後はるまきごはんさんの作品群で鍵を握る存在になりそうだ。
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