クイズを「見る」ものから「やる」ものへ
──「クイズジャム」で出題される問題も、「Megalomania Tokyo」のように競技性を指向したクイズの問題なのでしょうか?
徳久倫康 なにをもって競技性とするかというと解釈がいろいろ生まれてしまうのですが、「クイズジャム」は、どんな人でも楽しくできる早押しクイズを目指しています。事前に早押しクイズの勉強をしてから挑む人も、とりあえず参加してみようという人も、楽しめるような問題とルールを目指しています。
今まで早押しクイズをやったことがない人に対して出題するというのは、いわゆるクイズ好きの共通認識を使えないので、普段とは違った頭の使い方や手間が必要になります。
先ほどの「ジョージ・マロリー」がわかりやすいのですが、「これって本当はどのくらい有名なんだっけ?」と問い直す必要なども出てきて。改めて、これまでクイズにあまり触れてこなかった、いわば「普通の人」の感覚を再認識する上でも、良い機会だと思ってますね。
鶴崎修功 「クイズジャム」自体は“競技クイズイベント”とは言ってなくて、僕としては「『クイズジャム』の問題を使って、そのまま競技クイズ大会を開くことができる」という言い回しが正しいですかね。
さきほどの野球の例えでいえば、プロとルールが変わらない草野球のようなイメージでしょうか。
──なるほど。それでは、「クイズジャム」の今後の展開についてはどのように考えていますか? システムを外部に提供するといったビジネス展開なども考えられると思いますが。
徳久倫康 今の段階では、まずはイベントとして一人ひとりの参加者の方に参加費を払っていただきながら、とにかく興味を持って参加してくれる人を増やすことを目標にしています。
すごくうまくいったらサブスクリプション形式で、定期的に参加できるクイズイベントのようになれたら良いですね。そうすれば、日常生活の中にクイズがある人も増えていくはずです。
日常的にクイズをプレイする人口が増えれば、そこから今後のさまざまなクイズビジネスの展開も考えられると思っています。
──最後に、「クイズジャム」を通じてお二人が目指すクイズの未来についてお聞かせください。
鶴崎修功 ありがたいことに、QuizKnockは多くの人に知っていただいて、みなさんに「クイズを見て楽しんでもらう」というところまではいったと思っています。
鶴崎修功 そこから、多くの人が「クイズをやって楽しんでもらう」ようにするにあたって、「クイズジャム」は大きな役割を果たすはずです。QuizKnockを広く認知していただいたからこそ、僕たちがそういったことをやっていきたい。
徳久倫康 TVでクイズを見ていて「自分だったらもっと早く答えられる」と思うことって、たくさんあると思います。ただ、「押せそう」と「押せる」の間にはものすごい差があって、緊張などもあって実際に早押しボタンを押すというのはなかなか大変なんです。緊張もしますし、なかなか自信が持てないこともある。
徳久倫康 これがクイズプレイヤーにとって一番最初の大きな壁となるわけですが、それでも何時間かプレイすれば気持ちと慣れの問題で押せるようになる。「クイズジャム」に1〜2回参加すればこの壁は越えられるはずなので、早押しクイズを始める場としてはピッタリだと自負しています。
それに、実際に早押しクイズを体験してみると、TVのクイズ番組やQuizKnockの動画を見たときに、また違った見方ができるようになるはずです。そういった意味でも、実際に参加をしてみることで、クイズの楽しみ方はより広がると思います。
鶴崎修功 クイズを楽しむ人を増やそうという活動は「Megalomania Tokyo」も同じなんですが、やはり会社のイベント事業として取り組むことで、よりそのスケールを大きくすることができると考えています。
どうしても、早押しクイズは専門の機械が必要で難しそうだったりもするので、ハードルが高い印象がある。そのハードルを低くすることが重要で、「クイズジャム」ではそんな未来を目指していきたい。
徳久倫康 ビジネスとして運営することで、「お金さえ払えば参加できる」という意味で、一番気軽な入口を提供し続けられます。これまでのクイズ界は、携わってきた人たちのクリエイティビティと志で支えられ、参加者も運営側に回るというギブアンドテイクの関係で成り立っている部分が大きかった。
もちろんそれはとても素敵なことだし、自分もその一員であり続けたいと思っています。ただ、多くの趣味がそうであるように、お金を払うだけで気軽に参加できるスタイルというのがあってもいいわけです。
徳久倫康 そこからクイズ仲間が増えていくと、クイズっていつでもどこでもできるようになるんです。
仲間内で集まって「夜、オンラインでクイズしようぜ」とか。だから、「クイズジャム」でクイズを始めた人が、それ以外の場でクイズするようになっても、それはそれで全く問題ない。
ただ、そういう人たちがいつでも帰って来られる場所、常に存在していてクイズを楽しめる場所として、「クイズジャム」を続けていけたら良いですね。
【後編予告】
後編のテーマは「クイズを通して見る現代社会」。2人にとって、「クイズ」とはそもそもどういうものなのか? “ファスト教養”とクイズの関係性とは?
雑誌『ユリイカ』(青土社)で伊沢拓司さんが言及していたように、物事に対して正解/不正解という二元論に着地させる“クイズの暴力性”をどのように捉えているのか?
──徳久倫康さんと鶴崎修功さんの対談インタビュー後編は、KAI-YOU Premiumで近日公開。
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イベント情報
「クイズジャム」シーズン3
- 開催日程
- 5月31日(金)〜6月16日(日)(※チケット事前購入制)
- イベントページ
- https://quriostore.com/blogs/news/event04
- ※チケット購入には、通販サイト「QurioStore」( https://quriostore.com/ )の会員登録が必要です。
- ※最新情報はクイズジャム公式X(https://twitter.com/Quiz_jam )にてお知らせいたします。
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鶴崎修功
クイズプレイヤー・エンジニア
1995年生まれ。東京大学大学院数理科学研究科博士課程修了。2016年からQuizKnockに加入し、現在はYouTube動画への出演のほか、ゲーム・アプリ開発も行う。『ネプリーグ』『Qさま!!』など多数のテレビ番組でも活躍しており、2023年3月に卒業した『東大王』では約3年にわたり東大王チームの主将を務めた。趣味・特技はクイズ、競技プログラミング、ゲーム。
徳久倫康
クイズプレイヤー・広報
1988年生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業後、批評家の東浩紀が創業した出版社・ゲンロンに勤務。2022年よりQuizKnockを運営する株式会社batonに入社し、メディア事業部のゼネラルマネージャーを務める。趣味のクイズではオープン大会で通算100勝以上を達成するなど、トッププレイヤーとして活躍している。共著に『クイズ用語辞典』(朝日新聞出版)。
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