キャンプをしていない日常があるからこそ面白い
『ゆるキャン△』は文字通りゆるい作風のキャンプ漫画なのですが、実はキャンプをしていない場面も多いです。
主な登場人物は学生なので当然学業がありますし、時間はあっても使えるお金が豊富なわけではないので、活動資金を工面するためにバイトに勤しんだりしています。
頑張ってバイトしたお金で少しずつキャンプ用品を買い揃えていったり、旅先で地元の名産を味わったり、お土産を買ったりと、等身大の高校生らしさに親近感を覚えやすい。
はたまた、どこのキャンプ場に行って、現地で何をするのかといった計画を立てるところからエピソードがはじまるため、登場人物たちのワクワクに共感しやすい。
旅は計画を立てているときからはじまっていて、この時すでに、どこか静かに高揚している。そんな気持ちを、誰もが一度は味わったことがあると思います。遠足前日のなかなか寝つけない夜のような、あの感覚を登場人物たちと共有できるのです。
キャンプだけではなく、日常を織り交ぜているからこそ、実際にキャンプに行く時のエピソードがより際立ちます。
予期せぬトラブルや出会いも余すことなく描く
キャンプ場へ行くまでの道程で起こるトラブルや、現地に着いた後のちょっとしたアクシデントも『ゆるキャン△』ではよく描写されます。
お目当ての温泉や宿泊する予定だったキャンプ場が休業していたり、道が凍結して通れない、何らかの事情で道路が通行止めになっているなんて場面があります。
実際に旅をしていると、予定通りに事が運ばないことはよくありますよね。十分な下調べをしたつもりでもそう。インターネットで調べたり、各所への問い合わせをした限りでは知り得なかった事にぶつかるわけです。
その度に自分たちで足を動かし考え事態を乗り切ったり、起きたことはしょうがないと受け入れて遠回りや寄り道を楽しんだり、あるいは人との出会いに恵まれて助けてもらったり。経験はないでしょうか?
そうした旅先での予期せぬ出来事と出会いを作中に積極的に取り入れることで、登場人物たちの情感をリアルに感じ取れるようになっています。ままならない状況も、旅の醍醐味だと教えてくれるのです。
外出しやすい春にはたまらない、旅テロ&飯テロ漫画
最後に言及しておかねばならないのが、全国各地の施設や観光地を色々な角度から丁寧に描いている点です。
見開きで見せる絶景の富士山や高台からの展望・夜景はその代表格。ほかにも何気ない道、林間や湖畔など様々なキャンプ場のロケーション、温泉に寺社、桜の名所など、実在する場所が多く登場します。
作者のあfろさんは『ゆるキャン△』の制作のために、モデルにする場所を複数回に渡って訪れ取材しているそうで、この時に撮影した大量の写真が作画の元になっているようです。
付随して、各地のご当地グルメもばっちり描かれています。色とりどりのキャンプご飯に、地場産の食材を使った美味しそうな料理もたくさん出てくる。地酒ももれなく付いてくる。旅したくなるし、お腹が減る、旅テロ&飯テロ漫画です。
キャンプに旅行に最適なシーズンになった今こそ読んでみてください。
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連載
テーマは「漫画を通して社会を知る」。 国内外の情勢、突発的なバズ、アニメ化・ドラマ化、周年記念……。 年間で数百タイトルの漫画を読む筆者が、時事とリンクする作品を新作・旧作問わず取り上げ、"いま読むべき漫画"や"いま改めて読むと面白い漫画"を紹介します。
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