カメラにも現れる「見る/見られる」という構図
MVの中で象徴的に描かれるもう一つの要素である「カメラ」からも、その「見る/見られる」の間の緊張感が現れている。この映像はカメラと人物が互いに凝視するところからはじまり、曲の入りが「間違いだらけの世界」という歌詞から始まることは押さえておく必要がある。彼らは、決して世界を肯定していない。
「入れるモザイク But 俺のスキルは健在 GOAT」という歌詞は挑発的だ。自らを検閲される対象として打ち出すのは、2023年に取り沙汰された旧ジャニーズ事務所を取り巻く一連の騒動を思い起こさざるを得ない。
カメラは脅威的な存在としてメンバーたちを映そうとするが、その視線は、実はメンバーたちによってコントロールされている。
メンバーたちの視線の動きを追うカメラ/Number_i 「GOAT」 MVのスクリーンショット
直接レコーダーを巻き返してコントロールされるビデオ/Number_i 「GOAT」 MVのスクリーンショット
(ちなみに、MVの途中に挟まる映像が巻き戻される演出では、順再生してたときにはなかったシーンも挿入されているといった仕掛けもある)
テロップを介した直接的な意思表明
「GOAT」のMVでは、Number_iを象徴するロゴやサインが、テロップやタイポグラフィーとして度々現れる。特にこの「答え(Answer)」という表示は重要だ。Number_i 「GOAT」 MVのスクリーンショット
なぜここにわざわざテロップを映したのか? 前段まで「GOAT」は、King & Princeとの完全な決別ではないと書いたものの、それでも決定的に違うグループであることを示している部分でもあるからだ。
端的にKing & Princeの「ichiban」(2022)と比べてみよう(余談ではあるが、「ichiban」というタイトルは“Number_i”というチーム名も想起させ、深い繋がりもうかがわせる)
King & Prince時代とは違って、“時代”と向き合うことを決意する瞬間が、映像効果を通して強調されているのだ。「時代のニーズとか誰かの期待通りとか 実際もういいかな? 一旦放置して」 - 「ichiban」より
「時代を背負う Let's go, yeah, wo! 間違いじゃない これが俺のAnswer」 - 「GOAT」より

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連載
大衆音楽は「音」だけで定義されません。特にMV(ミュージックビデオ)はレコードに準ずるほどの大きな影響力を及ばせてきました。 ラジオからテレビにポップの主導権が渡ってからビデオはさらに重要な位置を占め、21世紀に入ると動画配信サービスがその座を受け継ぎました。 今ではK-POPやボーカロイド、Vシンガーなどのジャンルにおいては特にMVが最重要に近い位置を占めており、それ以外の音楽分野でもより重要視されるべきビデオがたくさん存在します。 この連載では主に話題の新曲を対象に、定期的にMVに焦点に当ててレビューする連載を提案したいと思います。
2件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:9565)
スゴい深い考察、ありがとうございます!
これまでの彼らの生き様があってのGOATだと思います。
引き続き素敵な記事、期待しています。
匿名ハッコウくん(ID:9557)
深い考察ありがとうございます。
GOATのMVは見るたびに新しい発見があり、何度観ても飽きません。
この記事を読んで、また観たくなりました。