ICHILLIN’は、2021年にデビューした新鋭K-POPアイドルグループである。
新曲「DEMIGOD」は、同じく2024年に入って発表されたシングル「BITE ME」とともに年の始まりを盛り上げる曲として注目を浴びている。
そして特に「DEMIGOD」MVのコミカルな演出は、普段よく見る豪華なK-POP作品とはまた別の独特な味が感じられる。
そして韓国の文化的背景を知れば、その隠し味が判明するはずだ。この記事では、それを紹介していきたい。
庶民的なコメディー満載のアイドルMV
MVは冒頭から、観る者を困惑させる。
一瞬、再生するMVを間違えたと勘違いしそうな、どこかのおじさんのアップ画面から、ヒップホップのビートに合わせて包丁のさばきが重なっていく。
全体のストーリーとしては、チキン店が、ある客の注文にあわせて急いでチキンを用意し、配達して自宅に届ける様子を描いている。
(半分冗談だが)MVでもっとも豪華で見惚れる名シーンは、フライドとヤンニョムという半々のチキンができあがった瞬間に思える。
チキンを完成させて配達するため、鶏肉を小麦粉で力強くタンブリングし、油で揚げてソースを混ぜる様子が美味しそうで、目を惹きつける。
包丁の雑な捌きや、びっくりチキンの人形といったミームの活用をはじめ、こぼれる涙を意味深にクローズアップしたら実はにんにくの皮を剥いていたり、バイクで夜道を走っているかと思えばグリーンバックで合成してい撮影の風景がそのまま映し出されたりするひっくり返しも、コメディーの定番。
なぜ? リリックはヒップホップなのに映像はチキン店のドタバタコメディという謎
「DEMIGOD」は、曲そのものがコミカルなわけではない。
例えば2023年にデビューした新人K-POPグループ・YOUNG POSSEの「MACARONI CHEESE」は、トラップビートと「マカロニ・チーズ」という素材のギャップを通して、曲からして明らかにウケを狙っていた。
だが「DEMIGOD」は、「半神半人」という題材をモチーフに、ラップジャンル特有の自慢気な歌詞を並べている。
そう考えると、「なんでこのMV?」という疑問はより深まる。
おそらく歌詞中の「半々」という言葉に「半々チキン(フライド+ヤンニョム)」をかけたダジャレのような演出と推測はできるが、わざわざその素材を選んだ文化的背景を知れば、より面白みのある隠し味が味わえるかもしれない。
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連載
大衆音楽は「音」だけで定義されません。特にMV(ミュージックビデオ)はレコードに準ずるほどの大きな影響力を及ばせてきました。 ラジオからテレビにポップの主導権が渡ってからビデオはさらに重要な位置を占め、21世紀に入ると動画配信サービスがその座を受け継ぎました。 今ではK-POPやボーカロイド、Vシンガーなどのジャンルにおいては特にMVが最重要に近い位置を占めており、それ以外の音楽分野でもより重要視されるべきビデオがたくさん存在します。 この連載では主に話題の新曲を対象に、定期的にMVに焦点に当ててレビューする連載を提案したいと思います。
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