Billboard JAPANが目指す、圧力や忖度からの脱却 海外チャート新設に込められた願い

単一的な“人気”に価値を置きすぎたことによる弊害

ジャニーズ事務所を巡る問題によって明らかとなった“圧力”や“忖度”とメディアを巡る構造──それはヒットチャートやランキングによって可視化される数字──売上や再生回数に基づいた“人気”を巡る問題でもある。

CGMの台頭もあって、コンテンツが溢れる情報社会において、数字に頼らず興味関心を惹くのは簡単ではない。

不景気によって予算が削減され、失敗が以前よりも許されにくくなっている中、視聴率やPVといった数字を担保するために、あらかじめ数字を確約できるアーティストに頼らざるをえない。

そして、その数字を持ったアーティストを一つの勝ち筋と信じ、リソースを集中しすぎた結果が“圧力”や“忖度”に繋がっていく。

数字によってレコメンドするか否かを決定するプラットフォームのアルゴリズム含め、メディア自身が、一部の勝ち組がより勝ちやすい──“圧力”や“忖度”が生まれやすい構造に加担してしまっている。 では、ヒットチャートを運営するメディアであるBillboard JAPANは、その構造にどう立ち向かうのか。

ランキングの本質 新設チャートで示す、もっと自由な世界

それを聞くと、Billboard JAPANを運営する2人は、それぞれ「ヒットチャートの存在意義」と今回のチャート新設の意図について説明してくれた。

「なぜ総合ソングチャートの『JAPAN Hot 100』では、1位の楽曲やトップ10だけではなく、100位まで発表するのか。それは『これだけ多様な音楽が聴かれているんだよ』ということを伝えたいからなんです。私たちは、『誰が1位になったのか』という結果を伝えること以上に、『みなさんにいろんな音楽と出会ってほしい』と思ってチャートを発表しています」(高嶋直子さん) 「ストリーミングサービスなども普及しつつある現在、すでに自分が知ってる音楽だけを聴くようになりがちで、新たな音楽と出会える機会がどんどん少なくなっていると思うんです」(高嶋直子さん)

「そんな今だからこそ、第三者の目線で発表されるヒットチャートがあることで、自分の知らない楽曲・アーティスト・ジャンルと出会えるきっかけになる。それがヒットチャートの存在意義だと思います。その上で、事実として1位であれば報じるし、他の“勝ち筋”でランクインした楽曲・アーティストのことも伝える。それで偏らない発信ができればと思っています」(高嶋直子さん) 「僕らは『Global Japan Songs Excl. Japan』で、選択肢はひとつじゃない、もっと言えば必ずしも有力なマネジメント会社やレーベルに所属しなければ世界を目指せないわけではない、ということを伝えたい。ヒットチャートを通して、根本的に“圧力”や“忖度”が起きないようにする世界観を共有できればと思っています」(礒﨑誠二さん)
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