あえて「ライブ」ではなく「コンサート」と銘打たれた本公演は、にじさんじでは珍しく、コンセプトストーリーに則ってセットリストが進行する形。
「午前0時の向こう側」という公演タイトルや、廃墟のような街に叶さんが佇むキービジュアル、また事前に公開されたティザートレーラーやコンサートテーマ曲「針音」の試聴動画から、ファンは様々な考察に胸を躍らせたことだろう。
当日は影ナレの台本に始まり、選曲の一つひとつ、幕間や映像表現、それらの細部に至るまで、世界観構築のための緻密な演出が施されていた。本人曰く、「5年間の集大成」と語る公演の模様をレポートする。
【会場写真】にじさんじ・叶の歴史が表現されたステージ(全25点) 取材・文:ヒガキユウカ 編集:恩田雄多
目次
叶が誘う午前0時の向こう側
叶さん本人が読み上げる影ナレではFreFlow(フリフラ ※演出のためのペンライトの一斉制御システム)の動作確認も行われ、叶さんの声に合わせて色が変わるドラマチックな演出に、会場は早くも沸き立つ。
「今から始まるのは、この時計に触れたことから始まった僕の『いくつかの可能性』の物語。もうすぐ終演と怪演を告げる鐘が鳴る。それまでもう少しだけ待っててね」
やがて鐘の音が響き渡り、会場は午前0時を迎えた。そしてここからは、午前0時の向こう側。一体何が始まるのか? 緊張とともに見守る観客の前に、白を基調としたflores衣装に身を包んだ叶さんが姿を見せた。
ステージには2人の叶……?
そして衝撃音とともに叶さんの背後にあのアナログ時計が現れ、ダンサーは完全に静止。「……え?」と困惑する叶さんをよそに、時計の針は逆行を始めた。
閉じ込められたように、動きを止めてしまうflores衣装の叶さん。思わず息をのんで注視すると、そこへ黒を基調とする私服衣装にポニーテール姿の叶さんが、独白とともに登場。
「これは、可能性の話。終わった今日を越えて、新しい明日に進めるか。それとも、同じ毎日を繰り返し続けるか。身勝手なわがままを演じ切って、ゆらぐ影の中、虹色の怪演へ。さあ、夜はこれからだ」
スタンドマイク越しにうやうやしくお辞儀すると、<ベビーフェイスはもう終演><白をまとったら 黒で照らさないと目が眩むじゃん>など、叶さんの影の部分が強く出た歌詞を妖艶に歌い上げていく。スタンドマイクを使った情熱的な振り付けや、強めの巻き舌、そしてラップパートで魅了した。
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