Billboard運営「チャートは『正解』ではない」
同じ取材記事では、礒﨑誠二さんが、楽曲に対して順位付けヒットチャートには「とても重い責任」があるとして、チャート運営を行う立場の自覚をうかがわせた。その上で、あくまでも「エンターテインメントを提供している意識なんです」と言及。「Billboard JAPANのチャートがこうだから『正解』ではなく、『本当はこの曲の方が良い』という会話が生まれるキッカケであってほしいと思っています」という。
しかし、Billboard JAPANによって可視化されるチャートの存在そのものが、音楽産業に多大なる影響を及ぼす話題性・権威性を保持している事実は否めない。
「数字」がヒットを生む構造とチャートハック
楽曲がチャートの上位にランクインすれば、プラットフォームやメディアに話題として取り上げられる。それによって、拡散され、さらなる耳目を集める──それが、“ヒット”を加速させる構造だ。そういったマーケティングのロジックが事実としてあるからこそ、アーティスト・レーベル、そして熱狂的なファンダム(ファン集団)はチャートに働きかける──ハックしようとする。
チャートアナリストたちのデータ分析を元に、ランキング結果という「数字」の話題性・権威性に頼ろうとする。
グッズや握手券などCDの複数枚購入を前提とさせる特典商法にはじまり、デジタル音楽配信サービスを利用した「再生数キャンペーン」、楽曲名やアーティスト名を大量投下するスパムのようなツイート──挙げればきりがない。
しかしそれが行き過ぎてしまうと、ランキングそのものへの信頼・信用度が失われてしまい、元も子もない結果に繋がってしまいかねない。 チャートの権威性、つまり「数字」に頼らず、楽曲・アーティストの魅力を広めるためできることとは何か。
アーティストやレーベル、プラットフォームやメディア、そしてファンダムが、改めて考え直さねばならない時期が来ている。
Billboard JAPAN、Twitter指標を廃止
Billboard JAPANは、ランキング集計の際に用いているルックアップ指標(※)およびTwitter指標を、12月7日以降各チャートで集計廃止にすることを決定した。 総合ソングチャート「Hot 100」は「CDセールス、ダウンロード、ストリーミング、ラジオ、動画再生、カラオケの計6指標」、総合アルバムチャート「Hot Albums」は「CDセールス、ダウンロードの計2指標となる予定」としている。※ルックアップ指標:CD音源をパソコンに取り込む際などにアクセスする、「グレースノートメディアデータベース」へ接続した回数(外部リンク)
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連載
音楽配信の主流がCDからデジタルへ移り変わる昨今。CDの複数枚購入を促す従来の特典商法に加え、デジタルならではの「チャートハック」行為が音楽シーンに影響を及ぼしている。 アーティスト・レーベルの人為的な施策やファンダムによるチャートハックの是非。改めて、「音楽を楽しむ」とはどういうことなのか。 再生数やランキング結果など、わかりやすい「数字」の話題性・権威性に頼らず、アーティストや楽曲を知ってもらうためにできることを探る。
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