『魔法陣グルグル』『フリクリ プログレ』の博史池畠監督と、『プリマドール』『ブラック★★ロックシューター DAWN FALL』のバイブリーアニメーションスタジオが描く一風変わった魔法少女ものだが、この作品の根幹は22歳の若き才能によってつくられている。
アニメや漫画を軸にストリートカルチャーから影響を受けた作品を描き、国内外で活躍するクリエイター・JUN INAGAWAさんだ。『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』は、彼が中高生時代に構想していたストーリーが原案という、特異なバックボーンを持った作品だ。
そんな想いを託された魔法少女の1人・アナーキーを演じるのは、『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』(空条徐倫役)や『チェンソーマン』(パワー役)などで知られる声優・ファイルーズあいさん。
今回は己の「好き」に対して正直に生きるキャラクターと作品について、2人の対談が実現。すると、2人と作品にも共通する反骨精神が浮かび上がってきた。
取材・構成:太田祥暉(TARKUS) 編集:恩田雄多 写真:寺内暁
目次
ファイルーズあいとアナーキーとの運命的な出会い
──JUN INAGAWAさんとファイルーズあいさんは、すでに何度かお会いになっているんですか?JUN INAGAWA アフレコ現場で1〜2回くらいですかね?
ファイルーズあい すれ違ったくらいですよね。よろしくお願いします。
JUN INAGAWA こうやってガッツリお話をするのは初めてですね。こちらこそよろしくお願いします。 ──そもそもファイルーズさんは、JUN INAGAWAさんに対してどういった印象をお持ちでしたか?
ファイルーズあい “先生”の作品を拝見したときに……
JUN INAGAWA いやいや“先生”だなんて!
ファイルーズあい 先生ですよ! 作品を拝見したときに、この人は絶対にサブカルチャーやポップカルチャーが好きだと確信していたんです。私も絵を描くことが大好きなので、「好き」を身体に刻まれて、それが作品から滲み出ているのは素晴らしいなと……。 JUN INAGAWA ありがとうございます(笑)。実際にアナーキーちゃんのタトゥーを刻んでいるので、文字通り身体に「好き」を“刻んでいる”んですよね。
ファイルーズあい アナーキーの生みの親が一番ふさわしいタトゥーですから。全身で「好き」を表現していてかっこいいと思います。
──対してJUN INAGAWAさんは、ファイルーズあいさんにどのような印象を?
JUN INAGAWA それこそ2019年の『ダンベル何キロ持てる?』(紗倉ひびき役)……この作品がデビュー作ですよね? ファイルーズあい そうです。
JUN INAGAWA そのあとの『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』(空条徐倫役)も観ていたので、ファイルーズさんの活躍はもちろん知っていました。
『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』のオーディションも印象的で、そこで披露してくれたお芝居がまさにアナーキーだったんです!
アニメのストーリーは僕が中学から高校時代に考えたものが元になっているんですが、当時頭の中で想像していたアナーキーちゃんの声そのものだった。これには博史池畠監督とも完全一致で、「もうファイルーズさんしかいない!」と話していました。
ファイルーズあい それだけ昔から大事にされてきたキャラクターの声にぴったりと言っていただけて、本当に嬉しいです! 最近わかったことなんですが、実は以前にアナーキーと出会っているんですよ。 ──オーディションの話が来る前ですよね?
ファイルーズあい そういった話も全然ないタイミングです。原宿に行ったときなんですけど、東急プラザ表参道原宿の外観に、赤い髪の毛でツインテールの女の子がドーンと描いてあって。
当時「可愛いな、いい作品だな」と感じていたんですが、初めてアナーキーを見たときには気がつかなくて、ぼんやりと「似ているな」くらいに思っていたんです。でもさっきお話をうかがったら、やっぱりアナーキーで!
原宿で見た作品は、アニメのキャラクターデザインとはまた違っていたので確信が持てなかったんだと思います(苦笑)。
JUN INAGAWA 2021年の個展ですね。驚きました。安っぽい言い方になってしまいますが、本当に運命的です。話を聞いて、ファイルーズあいさんにアナーキーを演じてもらえて、命を吹き込んでもらえて、本当によかったと思いました。
様式美に従わない魔法少女もの『マジカルデストロイヤーズ』
──『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』はオタク文化が制圧されている日本が舞台のオリジナル作品です。作品に対する第一印象を教えてください。ファイルーズあい オタク文化が制圧されている特徴的な世界観に対して、魔法少女というオーソドックスなアニメらしい要素が出てきますよね。その美しい矛盾と、ディストピアな世界観が刺さりました。
キャラクターデザインも、フリルがたくさん付いていたり、細かな模様が書き込まれていたりするわけではなく、すごくシンプル。でも、それぞれにらしさがぎゅっと詰め込まれていて可愛いですよね。
JUN INAGAWA シンプルなのは、僕が模様を描くのが苦手だからかもしれません(笑)。もともとアナーキーは、僕が持っている反骨精神の表れなんです。
僕自身が、自由を制限されたり、「こうすべき」と言われたりすると、あえてその逆をやりたくなる性格なので。キャラクターデザインにも今の潮流に反発するような部分が出ているのかもしれません。
加えて、ずっと好きだったパンクやロックの影響も受けています。なんなら僕の中では、キャラクターごとにテーマソングがあるくらい。だからというわけではないですが、『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』は劇伴もこだわっています。 ファイルーズあい 反骨精神は作品全体にも現れていますよね。そもそも魔法少女ものといえば、ヒロインがピンチになったら突然マスコットが来て、不思議な力を与えてくれて、変身して……という様式美があると思います。
『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』ではそういったお馴染みの展開や世界観の説明はほとんど設けず、スタートからちょっと違う展開を見せていく。そこがJUN INAGAWAさんらしいポイントですよね。
JUN INAGAWA たぶんアフレコで「なんじゃこりゃ!」って思ったキャストの方もいらっしゃったと思います。なぜそういう構成になったかといえば、僕自身、最初に説明をバーッとされるのが苦手だからなんです。
一通り説明されてしまうとその後の展開もわかった気になって、見る気がなくなってしまう。逆に説明なしで「どういうこと!?」と食いついて、徐々に理解していく方が楽しめると思うんです。改めて振り返ると元々のアイデアを考え始めたのが15歳くらいで、アニメ化を目指してシナリオを作っていったのが19歳の頃……よく考えたなとも思いますね(笑)。
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作品情報
魔法少女マジカルデストロイヤーズ
- 放送情報
- 2023年4月7日(金)25:55より
- MBS・TBS・BS-TBS”アニメイズム”枠にて放送開始!
- MBS/TBS 4月7日(金)25:55より
- BS-TBS 4月7日(金)26:30 より
- AT-X 4月8日(土)スタート
- ・毎週(土)21:00
- ・毎週(月)28:30 ※リピート放送
- ・毎週(土)6:00 ※リピート放送
- ※放送日時は変更になる可能性があります
- 配信情報
- ABEMA/DMM TV にて地上波放送直後より最速配信決定!
- ABEMA 2023年4月7日より毎週金曜26:25〜
- DMMTV 2023年4月7日より毎週金曜26:25〜
- スタッフ
- 原作:MAD ミルクポット markets
- 原案:JUN INAGAWA
- 監督:博史池畠
- 副監督:川瀬まさお
- 脚本・シリーズ構成:谷村大四郎
- キャラクターデザイン:沢友貴
- コンセプトアーティスト:紺野大樹
- プロップ設定:杉村絢子
- 美術監督:坂上裕文(ととにゃん)
- 美術設定:加藤 浩(ととにゃん)、浅見由一(ととにゃん)
- 色彩設計:歌川律子
- 撮影監督:松向 寿(STAR Laboratories)
- 編集:武宮むつみ
- 音響監督:本山 哲
- 音響効果:白石唯果
- 録音:伊東光晴
- 音響制作:ビットグルーヴプロモーション
- 音楽:羽柴 吟
- アニメーション制作:バイブリーアニメーションスタジオ
- キャスト
- オタクヒーロー:古川 慎
- アナーキー:ファイルーズあい
- ブルー:愛美
- ピンク:黒沢ともよ
- 狂太郎:楠木ともり
- SHOBON:斉藤壮馬
- スレイヤー:芹澤優
- ニック:興津和幸
- オールドリーダー:杉田智和
- ミリオタ:間島淳司
- ゲーオタ:子安武人
- 鉄オタ:奥村翔
- 自衛隊オタ:兼政郁人
- アニオタ:稲田徹
- ドルオタ:石谷春貴
- プロレスオタ:高橋伸也
- 主題歌
- オープニングテーマ:愛美「MAGICAL DESTROYER」
- エンディングテーマ:The 13th tailor「Gospelion in a classic love」
関連リンク
JUN
クリエイター
1999年生まれ、東京都出身。2012年よりアメリカ・サンディエゴに移住、中高生時代を過ごし、そこで出会ったストリートカルチャーに影響を受ける。2017年からアーティスト活動を開始。様々なアーティストとのコラボレーションなども手掛ける。オカモトレイジ主宰のYAGIではDJとしても活動中。『魔法少女マジカルデストロイヤーズ』は、JUN INAGAWAが これまで発表してきたアート作品のコンセプトをベースに新たなオリジナルアニメーションとして制作。本作では初のストーリー・キャラクター原案を務める。
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ファイルーズあい
声優
1993年生まれ、東京都出身。ラクーンドッグ所属。2019年に『ダンベル何キロ持てる?』紗倉ひびき役で鮮烈なデビューを果たす。主な出演作に『推しが武道館いってくれたら死ぬ』えりぴよ役、『トロピカル~ジュ!プリキュア』夏海まなつ/キュアサマー役、『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』空条徐倫役、『チェンソーマン』パワー役など。
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