うるさくて派手なのに邪魔にならず、言葉と融合しやすいEDM
高校時代にお付き合いしていた方が演劇部だったこともあり、もともと演劇には興味や憧れがありました。失意のバンド新歓の中、ふと思い立って演劇サークルの新歓をのぞいてみると、そこには自分の求めていた「まだ見ぬ世界」がありました。脚本を自分たちで書く、というのもそうですし、全てのセクションの仕事が大変クリエイティブに映って、過剰に感動してしまったというか。あと、サークルには結構個性的な人が多くて、よくない言い方をすると、ちょっと浮いてるような人が多かった。それもまた、自分の求めている空気に近かったというのもあります。そうして、半ば衝動的に演劇サークルに入団しました。人と違うものをつくりたいという思いはずっとありましたから、ゆくゆくは脚本・演出をしようと決めていました。結局演劇の世界にいても、とにかく人と違う自分をアピールすることに必死で。自分にとって、そういった武器になるものはやっぱり音楽でした。自分は周りのみんなより音楽を知っている、というのが心の拠り所になっていました。
大学2年生の夏、初めて自分のオリジナル作品をつくったんですが、その時からすでに、全編にわたって音楽を使っていました。当時見ていた演劇作品の影響もかなり受けていて、その一つが、宗教劇団ピャー!!の『リア王とジプシー』です。大きな音で音楽を流しながらラップ(のようなもの)をして踊り狂うというシーンがあって、いま思えば、これが「しあわせ学級崩壊」の原点になっているのかもしれません。
当時はEDMというワードも知らなかったんですけど、初めて自分で作品をつくるにあたりどんな音楽を使おうかと考えているうちに、自然と四つ打ち音楽に行き着きました。ビートが単調なので、「うるさくて派手なのに邪魔にならず、言葉と融合しやすい」ということが、やりたいことに合っていたんです。
昔、ニコニコ動画でファミマの入店音をEDM風にアレンジしたものが流行っていたんですが、ふと、あれが演劇に使えるんじゃないかと思いました。そこで、KORGのelectribeを導入して、演劇の中で遊びながらだんだんと打ち込みやリアルタイムパフォーマンスを覚えていった感じですね。そして、2019年上演の『卒業制作』で初めてオリジナル曲をつくりました。
今後はバンドの生演奏で演劇を
いまでは、作劇の参考やリファレンスのためにしか音楽を聴かなくなってしまったので、あまりEDM以外の音楽を開拓することがなくなりました。なので、今後どのような音楽をつくって作劇したいのかと問われると悩んでしまうのですが、ひとまずより開かれた音楽性を意識して、現在上演しているリーディング短編集では、テンポを落としてEDMっぽくない曲をつくりました。そうして、音楽と演劇の関わりの新しい形を模索しています。あとは、やっぱりバンドへの憧れはずっとありますね。うしろにバンドを携えて、生演奏で演劇をやる。そういった形態はいつかやってみたいなと思っています。
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しあわせ学級崩壊
しあわせ学級崩壊はEDMのオリジナル楽曲の上に、俳優がマイクを用いてセリフを乗せることを特徴とした劇団。
劇場だけではなくクラブハウスや音楽スタジオでの公演も行っており、観客全員が立ち見のスタンディング公演という、演劇の枠組みを超えた企画も実施している。
脚本演出・作曲を担当する僻みひなたは「自分の存在の意味」を徹底的に掘り下げ、その精神の動きのような抽象的な世界を音楽と物語によって描く。
そのため脚本には台詞だけではなく、その台詞を何小節、何拍で読むかの指示も記されている。
大音量の音楽による演出と、文学的な台詞の両立によって、超演劇的な体験を届けている。
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