次々と乗っ取られるピーナッツくんの体
爆熱必至のライブチューン連打でフロアを温めきったところで今回のライブの為に作り上げられたライブ空間を紹介するピーナッツくん。彼の鼓動に合わせて脈打つ壁に、なぜか天井に埋め込まれたピーナッツくんと思しきオブジェクトと不思議が詰め込まれた空間には「こんなお腹の中だったんだ…」と本人も驚きを隠せない様子。しかしこのカオスかつポップな雰囲気がなんともピーナッツくんらしいと思えるのはその辿ってきた覇道のカラフルさゆえのことだ。
改めて自分でも「食べたり歌ったり、僕はいろいろなことをしてるんですけど」と振り返るが、それを聞いておともナッツの頭に思い浮かぶ情景がそれぞれ違うであろうことは想像に難くない。
「僕は何が一番好きだと思う? ラムネ? サウナ? 惜しいな…。そう!グミなんです!」とくれば次なる曲はもちろん随一のダンスナンバー「グミ超うめぇ」に決まっている。前回のライブでもステージ上にグミが降り注いでいたが、今回はさらに演出がパワーアップし、ライブ空間のそこら中にグミが舞い踊る。大好きなグミに取り囲まれながら高速フロウを繰り出しハッピーな雰囲気を充満させていった。 「歌詞間違えたの草じゃないんだよ!」と普段の配信のようにおともナッツとの交流も展開してアットホームな空気が流れかけたが、急にピーナッツくんの様子がおかしくなっていく。「体が誰かに乗っ取られる!」不穏な言葉と共に意識がフェードアウトすると、「デニムくんでーす!」という甲高い声が響き渡る。なんとピーナッツくんの体にデニムくんが憑依したのだ。
ピーナッツくんファミリーの中でも殊更アーティスト色の強いメンバーの乱入にあっけにとられていると、ステージの周りを「WARNING!」の文字が取り囲み、一気に空気を緊張させて突入したのは「Kick!Punch!Block! (feat. デニムくん)」! 自ら巻き起こした混乱の渦をさらにかき混ぜるように異次元フロウをたたみかけ、ファニーな雰囲気に反したガチのラップスキルを見せつけていく。
まさかのライブ強度の高さに仰天させられていたところに、今度はピーナッツくんの体をチャンチョが支配。名曲「幽体離脱 (feat. チャンチョ & ぽんぽこ)」へと繋ぎ、改めて楽曲のバラエティー豊富さを知らしめる。 曲のスタートと同時に、なんとピーナッツくんの体から幽体ピーナッツくんが分離。本体と動きをシンクロさせながらも中空をゆらゆらと漂う姿が楽曲の世界観を強固に補強していく。穏やかな調子でハードなリリックを繰り出すピーナッツくんinチャンチョに、時折幽体ピーナッツくんがめり込む様子はなんともシュールだったが、XR演出の新たな可能性を証明してみせたところで、チャンチョタイムはまだまだ終わらない。
「最近僕が歌った曲が出たんですよ」と静かに曲紹介を済ませて最新曲「Tamiflu (feat. チャンチョ)」をドロップ。念仏を唱えるような静かな立ち上がりから、幻想的なフロウを重ねていくと、いつの間にか視界を覆い尽くすほどの大量のチャンチョが出現しており、視覚と聴覚の両方から合法トリップへ誘った。
「頭が真っ白になるほどすごい!」
強引な登場とは裏腹に「ありがとうございました」と短く挨拶を済ませて退場したチャンチョに代わってピーナッツくんがようやく復帰。「もっとすごいことが起こる」と予告すると、ピーナッツくんの体内へと半分に割れたカプセルが二つ流れ込んできた。赤と青のカプセルの中にはなんとおめがシスターズの二人のホログラム。驚く間も与えず「KISS (feat. おめがシスターズ)」へ突入。前回のライブでは出演の叶わなかった二人の登場に興奮を抑えきれなかったが、生々しいキスマーク型のネオンに照らされる中、二人に取り囲まれるピーナッツくんという図が歌詞の修羅場感を表現しているのではと気づかされると冷や汗も止まらない。
曲を終え体内の奥へと消えていったおめシスとの別れを惜しんでいるのも束の間、「盛り上がってますかー!」の声と共に今度は名取さなさんがカプセルに乗ってオンステージ、勢いそのままに「ペパーミントラブ (feat. 名取さな)」で軽快な掛け合いを披露。可愛さ全開のさなちゃんパートでは最前列でピーナッツくんがケチャを繰り出し、女神への祈りを体現していた。 ノンストップで盛り上がり続けるライブを振り返り「頭が真っ白になるほどすごい!」と興奮気味に語るピーナッツくん。
自由自在にステージを照らす照明やコメント欄を背景に映し出すシステムを紹介し、改めて特別なステージを見せびらかしたところで「残り三曲です! 最後まで盛り上がれますか! 盛り上がれない方は見といてください!」と独特の煽り方でおともナッツのハートに再び火をつけると、跳ねるような鍵盤の音色から「Drippin' Life」!
クリエイティブにかける情熱を詰め込んだライムを、絞り出すように放つピーナッツくん。それを全力で稼働する照明がカラフルに彩っていく。個人勢として突き進んで磨かれた確かな才覚と、最先端テクノロジーの邂逅──エンターテインメントの歴史が新たな特異点を迎えているのかと思うと、なんとも胸が熱くなる。
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