2021年から2022年にかけて、歌舞伎町エリアで未成年関連の痛ましい事件が相次いで報道された。
それらの事件には共通点がある。
新宿歌舞伎町、TOHOシネマズ横の通路に溜まる若者たちのコミュニティ・「トー横界隈」で起きた事件と言われていることだ(正確には歌舞伎町シネマシティ広場を拠点とするコミュニティ「広場界隈」で起きた事件も含まれるが、それについては後述)。 トー横界隈の存在は以前から認識されていたが、事件がセンセーショナルに報じられ、危険な集団であるという世間のイメージは膨らんでいった。
しかし今、実際にその場所に集まっている若者たちは「トー横はもうない」と語る。
慣れた足取りでそう案内するのは、大学で歌舞伎町の社会学を研究しながらライターとして活動する佐々木チワワさんだ。 目的地であるTOHOシネマズまでの道すがら、佐々木さんは、自撮り界隈を発端とするトー横界隈形成までの歴史を振り返る。
母体となったコミュニティは「自撮り界隈」と言われる、SNS上に自撮りを公開する若い男女の繋がりだ。
「歌舞伎町って、待ち合わせで『TOHO(シネマズ)前』って言うと思うんですよね」
共通する世界観や文化を好む彼女たちが歌舞伎町で会って、ちょっと腰を落ち着けてしゃべるようになった場所から、その集まりが徐々に「トー横(界隈)」と呼ばれるようになる。 Twitterでフォロワーが多かったり知名度があったりする求心力のある人間が集まるようになっていった。中でも“トー横の王”と名乗るカリスマ的な人物も現れた。
2019年から2020年にかけて勃興したそのコミュニティは、2021年初頭にはSNSで「#トー横界隈」として定着。
2021年5月にはトー横での未成年誘拐事件の逮捕が報じられ、「トー横」という存在が世間でも認知されるようになった。
それ以降も、飛び降りやホームレスへの暴行・殺人事件などが相次いだ。 そして現在、メディアでは一緒くたにして報じられがちだが、この「トー横界隈」とはまた異なる、歌舞伎町シネマシティ広場を拠点とするコミュニティが確立されている。
それが、かつて「トー横」とされていた道端ではなく、TOHOシネマズを挟んだ反対側にある新宿シネシティ広場に集まる「広場界隈」だ。
「服装とかが全然トー横っぽくな未成年とかも、『広場』になってからメディアで知って溜まるようになったり」
“居場所のない未成年たちが集まる”といったイメージが先行し、広場は「カルチャーよりもアイデンティティに寄っている」と佐々木さんは指摘する。 「ホームレスの暴行死事件とかの人たちって、ファッションとか見た目も全然トー横じゃないんですよね」
そう語るのは、トー横で溜まっていた若者グループのうちの少女2人だ。
トー横界隈の最盛期にいた人々は、もうこの場所には来ない。彼女たちいわく、理由は「うるさい大人がいるから」。
広場の方では、未成年らしき女性に声をかけている男性の姿が見受けられた。
家や学校、バイト先ではない子供だけの第3空間を、新宿歌舞伎町という怖い大人が出入りする場所で維持することは困難だろう。
彼女たちは「つくった人たちがいない時点で無法地帯だもん」と漏らした。
一方で、彼女たちの言う、「トー横の王」を自称し「雨宮ただくに」と名乗っていた人物は、この取材の翌月である2022年1月、未成年に対するわいせつ行為の容疑で逮捕されている。
そんな広場を拠点にするコミュニティのひとつが「歌舞伎町卍會」だ。 総会長を務めるハウルさんに話を聞くと、メンバーは2022年2月現在160人程で、夜から朝にかけて広場一帯の清掃及び炊き出しを行なっているという。
元々はトー横界隈と同じエリアで活動もしていたハウルさんは、2021年7月頃に、トー横界隈と差別化を図るために広場を拠点し始めた。
「トー横っていう場所に子供たちに悪さをするような奴がいて、そいつらから(子供たち)を切り離すためっていうのもあって」、付近の健全化のために歌舞伎町卍會を発足させた。 「めちゃくちゃ平和になったと思います」ハウルさんは今のトー横の状況をそう評価している。
一方で、100名以上に膨らんだメンバーの中には、悪さをする人間も入り込んでしまうことがあったと語る。
「この前も殺人事件ありましたけど(2021年11月に起きたホームレスの男性の殺人)、加害者も被害者も、清掃手伝ってもらったことある人だったんすよ」
加害者は歌舞伎町卍會のメンバーに怪しい仕事の斡旋をしていたため、退会させていたそうだ。
歌舞伎町卍會は活動の中で、そうした“悪さをする人間”を広場から出禁にしていっている。
事件の加害者については「清掃もして礼儀正しくて、悪い大人から女の子を守ろうっていう気持ちも同じように持ってた人が……」と言葉を詰まらせた。
証言の続き、取材の全容は動画にて。ルポ:トー横 対立する元帝王と歌舞伎町卍會。行き場のない少女たち
それらの事件には共通点がある。
新宿歌舞伎町、TOHOシネマズ横の通路に溜まる若者たちのコミュニティ・「トー横界隈」で起きた事件と言われていることだ(正確には歌舞伎町シネマシティ広場を拠点とするコミュニティ「広場界隈」で起きた事件も含まれるが、それについては後述)。 トー横界隈の存在は以前から認識されていたが、事件がセンセーショナルに報じられ、危険な集団であるという世間のイメージは膨らんでいった。
しかし今、実際にその場所に集まっている若者たちは「トー横はもうない」と語る。
トー横の始まりは“自撮り界隈”
「トー横に行けばいいんですよね?」慣れた足取りでそう案内するのは、大学で歌舞伎町の社会学を研究しながらライターとして活動する佐々木チワワさんだ。 目的地であるTOHOシネマズまでの道すがら、佐々木さんは、自撮り界隈を発端とするトー横界隈形成までの歴史を振り返る。
母体となったコミュニティは「自撮り界隈」と言われる、SNS上に自撮りを公開する若い男女の繋がりだ。
「歌舞伎町って、待ち合わせで『TOHO(シネマズ)前』って言うと思うんですよね」
共通する世界観や文化を好む彼女たちが歌舞伎町で会って、ちょっと腰を落ち着けてしゃべるようになった場所から、その集まりが徐々に「トー横(界隈)」と呼ばれるようになる。 Twitterでフォロワーが多かったり知名度があったりする求心力のある人間が集まるようになっていった。中でも“トー横の王”と名乗るカリスマ的な人物も現れた。
2019年から2020年にかけて勃興したそのコミュニティは、2021年初頭にはSNSで「#トー横界隈」として定着。
2021年5月にはトー横での未成年誘拐事件の逮捕が報じられ、「トー横」という存在が世間でも認知されるようになった。
それ以降も、飛び降りやホームレスへの暴行・殺人事件などが相次いだ。 そして現在、メディアでは一緒くたにして報じられがちだが、この「トー横界隈」とはまた異なる、歌舞伎町シネマシティ広場を拠点とするコミュニティが確立されている。
それが、かつて「トー横」とされていた道端ではなく、TOHOシネマズを挟んだ反対側にある新宿シネシティ広場に集まる「広場界隈」だ。
「服装とかが全然トー横っぽくな未成年とかも、『広場』になってからメディアで知って溜まるようになったり」
“居場所のない未成年たちが集まる”といったイメージが先行し、広場は「カルチャーよりもアイデンティティに寄っている」と佐々木さんは指摘する。 「ホームレスの暴行死事件とかの人たちって、ファッションとか見た目も全然トー横じゃないんですよね」
「トー横は、もうないのさ」
「トー横が盛り上がってる時にいた人たちは、知り合いのバーとか身内で飲んでるだけ」そう語るのは、トー横で溜まっていた若者グループのうちの少女2人だ。
トー横界隈の最盛期にいた人々は、もうこの場所には来ない。彼女たちいわく、理由は「うるさい大人がいるから」。
広場の方では、未成年らしき女性に声をかけている男性の姿が見受けられた。
家や学校、バイト先ではない子供だけの第3空間を、新宿歌舞伎町という怖い大人が出入りする場所で維持することは困難だろう。
彼女たちは「つくった人たちがいない時点で無法地帯だもん」と漏らした。
一方で、彼女たちの言う、「トー横の王」を自称し「雨宮ただくに」と名乗っていた人物は、この取材の翌月である2022年1月、未成年に対するわいせつ行為の容疑で逮捕されている。
“広場界隈”と呼ばれる歌舞伎町卍會に接触
佐々木さんは、広場界隈を「トー横界隈+地雷系じゃない若者もいれば、おじさんたちもいるっていうカオスな状況」と評した。そんな広場を拠点にするコミュニティのひとつが「歌舞伎町卍會」だ。 総会長を務めるハウルさんに話を聞くと、メンバーは2022年2月現在160人程で、夜から朝にかけて広場一帯の清掃及び炊き出しを行なっているという。
元々はトー横界隈と同じエリアで活動もしていたハウルさんは、2021年7月頃に、トー横界隈と差別化を図るために広場を拠点し始めた。
「トー横っていう場所に子供たちに悪さをするような奴がいて、そいつらから(子供たち)を切り離すためっていうのもあって」、付近の健全化のために歌舞伎町卍會を発足させた。 「めちゃくちゃ平和になったと思います」ハウルさんは今のトー横の状況をそう評価している。
一方で、100名以上に膨らんだメンバーの中には、悪さをする人間も入り込んでしまうことがあったと語る。
「この前も殺人事件ありましたけど(2021年11月に起きたホームレスの男性の殺人)、加害者も被害者も、清掃手伝ってもらったことある人だったんすよ」
加害者は歌舞伎町卍會のメンバーに怪しい仕事の斡旋をしていたため、退会させていたそうだ。
歌舞伎町卍會は活動の中で、そうした“悪さをする人間”を広場から出禁にしていっている。
事件の加害者については「清掃もして礼儀正しくて、悪い大人から女の子を守ろうっていう気持ちも同じように持ってた人が……」と言葉を詰まらせた。
証言の続き、取材の全容は動画にて。
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今回の取材に協力していただいた佐々木チワワさんの著書『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』では、新宿歌舞伎町の社会学、若者の病みカルチャーについて語られている。
ストリートで起きていること
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1件のコメント
匿名ハッコウくん(ID:5304)
最後の部分は文脈的にここは被害者ではないのでしょうか?
>>事件の加害者については「清掃もして礼儀正しくて、