「オタクにも知られてない」ワンフェス代表・宮脇センムの本音と野望

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「オタクにも知られてない」ワンフェス代表・宮脇センムの本音と野望

ワンダーフェスティバル実行委員長・宮脇センムインタビュー

POPなポイントを3行で

  • ワンフェス実行委員長・宮脇センムインタビュー
  • コロナ禍での損害とオンライン開催への決断
  • 「オタクにも知られていない」危機感からの変化
『ワンフェス』がいわゆるオタクユーザーの中でも知られていないことを認識した

立体造形・フィギュアなどのガレージキットの展示・販売イベント「ワンダーフェスティバル2021[秋]」(WF2021[秋])がコロナ禍の影響でオンライン開催。「WF2021[秋]オンライン」として、10月9日(土)10時から開催されている。

ここまで3度にわたり中止を余儀なくされた一方で、「WF2021[秋]」では当初、36年目にして大きな変化を掲げ、フィギュアファンだけではない幅広い層へとアプローチしていた。

結果的にオンライン開催となった今、実行委員長である宮脇センム海洋堂の取締役専務・宮脇修一さん)は何を思うのか。メールインタビューを通じて、コロナ禍の影響やイベントの変化の必要性、次回のリアルイベントの展望などを聞いた。

まともに考えたら気が遠くなる損害

──コロナ禍による3回の中止が続いたことで「ワンダーフェスティバル」は具体的にどのような影響を被りましたか?

宮脇センム 精神的には、イベント(祭り)が開催できないことによるフラストレーションがいっぱい溜まって、気持ち的に萎えてしまったのが一番大きかったです。

物理的には、せっかく準備していた会場のレイアウトやコロナ禍に対応するための導線のシュミレーション、ワンフェス内でのイベントの仕込み、ガイドブックの制作など、様々な仕事が無になってしまうこと、これに伴う、まともに考えたら気が遠くなるような金額の損害でしょうか

──2月の「ウェブワンフェス2021年冬」を振り返って、実現しきれなかったこと、手応えを得られたこと、それぞれ教えていただけますでしょうか?

宮脇センム 正直、自分自身にとっての手応えと言えるほどのものがあったかはわかりません。

ただWebというものの様々な可能性や問題点を、開催することによってリアルに肌感覚で感じることができたので、今回の「WF2021[秋]オンライン」につなげることができたと思います。

──特に「ワンフェス」が扱う造形物・立体物というものの性質上、他のイベント以上に、オンライン開催は苦心される点が多いのではないかと思います。具体的に、開催にあたって苦労された点、工夫された点などはありますでしょうか?

宮脇センム 「ワンフェス」は立体物・造形物の祭典なので、写真だけではなかなか伝わらない立体物の持つ魅力をオンラインという場で発信するためには、画像などをいかに多く使用できるかが重要になってきます。

ただそれについても大きな制約があり、まだまだ販売システムにも多くの問題があります。まだ実行委員会の工夫と言えるほどのものはない、というところがリアルな認識です。

──今回の「WF2021[秋]オンライン」では、従来同様に「当日版権申請」(※)を実現されています。実現までにはどのような経緯があったのでしょうか?

宮脇センム 当日版権申請の実現については、ディーラーの皆さんが一生懸命造形された作品をなんとか展示・販売できるようにしたいという一点につきます。

開催まで時間がないことに加えて、本来会場内だけでの作品の販売をオンライン上で販売するという、これまで行ったことがない形態であるため、ライセンサー様には本当に無理に無理をお願いしました。そういったご協力の結果、今回多くの版権作品をオンライン上で展示販売できることになりました。

※当日版権申請:「ワンフェス」では既存のキャラクターの権利を管理している版権元に対し、実行委員会が窓口となることで、「開催当日・会場内限定」で製作・展示・販売を許諾している。通常、法人同士の契約でなければ版権の利用許諾を受けることはできない。

これからの「ワンフェス」を見つめ直した

「ワンダーフェスティバル 2021[秋]オンライン」

──当初「WF2021[秋]」では大きな変化を打ち出されていました。イベントとしてのエンタメ性や対外的な情報発信の強化など、36年目の方針の変化は、どのような理由からだったのでしょうか?

宮脇センム 新型コロナウイルス感染症によるイベントの中止によって、イベントの内容はもちろん、「ワンフェス」はこれからどのような方向に、誰に向けて行っていくのか、ということを見つめ直す時間ができたことがきっかけですね。

「ワンフェス」というイベントが、まだまだ一般の人々をはじめ、いわゆるオタクユーザーの中でも知られていないことを、コロナ禍を通じてよりはっきりと認識でき、少しでも造形物に対する認知度を高め、この素晴らしい世界にもっと親しんでいただきたいと感じたためです。

──より多くの人への発信に力を入れた今回、結果的にオンラインでの開催となりましたが、現状をどのように捉えていらっしゃいますか?

宮脇センム 結果的にオンラインでの開催になってしまったことは、主催者として、模型を愛する一愛好家としても、大変残念に思っております。

ですが、これも新しい可能性にチャレンジする機会として、「ワンフェス」をより良いイベントにするきっかけにしたいと考えています。

──「WF2021[秋]」で実現したかったことの中で、オンラインイベントとしてどの程度表現できるとお考えでしょうか。現状の手応えを教えていただけますか?

宮脇センム 急遽、かつオンラインという制約上、本来目指していたところのすべてを表現するのは難しいと考えております。ただ、このオンラインイベントに参加していただいたアマチュア、企業ディーラーのみなさま、そして関係者の方々のご協力があってイベントが開催できることになりました。

ディーラーのみなさまのブースページは、大変すばらしい力作が展示されています。いろいろなジャンルの造形物が一堂に介する「ワンフェス」らしさは再現できているとおもいます。手応えについては、これからのみなさまの反応を見てということになるでしょうね。

オンラインでの仕事をゼロから構築する

6月に開催された「Wonder Festival 2021 上海」

──コロナ禍によって、フィギュアや模型といったECの売り上げは向上したというケースもあります。他方、業界では、製造や物流面に大きな影響を受けて、すでに発表されていた製品の製造延期なども相次ぎました。国内の造形物業界を牽引するメーカーの一つである海洋堂として、この未曾有の事態をどのように捉えていらっしゃいますか?

宮脇センム 一般的なホビー市場によるオンラインの販売等は上がっているということですが、秋葉原や大阪・日本橋のような場所を見ていると、小売のお店は大変な打撃を受けています。

海洋堂も業界では古いメーカーのひとつではありますが、みなさまと同様に様々な影響を受けています。お客さん、小売店さんあってのお仕事だと思っていますので、この危機を皆様としっかり乗り越えていきたいと考えています。

また「ワンフェス」のようなお祭りは、リアルの楽しみが大きいイベントです。これからの状況に沿ったあり方を考えないといけないと感じています。

──もし差し支えなければ、海洋堂として被られた、コロナ禍による影響についてもおうかがいできれば幸いです。また、それに取り組む上で、特に対応を強化されたことなどはございますでしょうか?

宮脇センム 海洋堂という会社は、イベントをやったりフィギュアの展示施設を運営したりすることも大きな仕事のひとつです。

したがってコロナ禍では、その影響によって人が集まること、直接触れ合うことができなくなるという、我々の仕事の基本的なスタイルが困難な状況でありました。

幸いフィギュアのみの販売についてはそれほど大きな落ち込みはありませんでしたが、まあこれはどこも同じだと思いますが、オンラインでの販売にしっかりと向き合うことの必要性を強く感じました。

一番の強化というと、海洋堂という会社にとってこれまで一番遅れていたオンラインでの仕事のスタイルを、まったくゼロから構築するということでしょうか。

ワンフェス精神のもと、次なるリアルイベントへ

「ワンダーフェスティバル2019[夏]」にて編集部撮影

──「WF2021[秋]」中止の経緯説明の中で触れられていた「ワンフェス精神」「ガレージキット精神」とは改めてどのようなものでしょうか?

宮脇センム 一言で言うのは大変難しいことですが、ワンフェス精神とは、「なければつくればいい」ということと、自分のつくった素晴らしいものを、多くの人に見てもらいたい、意見をもらいたい、そして購入してもらいたい、という交流と発表、またそれを自分の創作のエネルギーにつなげるということ。

ガレージキットスピリッツとは、圧倒的なものづくりをする、誰も見たことがないようなものを自分でつくるということだと思います。

今回の状況で「ワンフェス」に参加されるみなさんもこういったことを考えられたと思いますが、私自身、このことをもう一度しっかり自覚できたと考えています。

──2022年2月のリアルイベント開催に向けて準備も進められているとうかがいましたが、続報などはございますでしょうか?

宮脇センム オンラインイベントを行い、より一層リアルなイベントを開催したいという強い気持ちは、ますます強くなっています。

しかしコロナ禍の状況の中、しっかりとした対策を行えば行うほど、祭りの魅力を減らしてしまう可能性もある……それに対して、どのようにしてイベントとしての熱量を出せるのか。

そういったことを念頭に置きつつ、今も会場内のレイアウト・安全対策などを考えて、安心・安全な「ワンフェス」ができるよう準備を進めております。詳細については、実行委員会から順次お知らせさせていただきます。

──イベントとして変化を打ち出してから初のリアル開催となります。その際にどういった点を見てほしい、リアルな「ワンフェス」ならではの醍醐味をどのようにお考えでしょうか?

宮脇センム 現状、まだまだコロナ禍の状況は見通せません。「ワンダーフェスティバル2022[冬]」のリアル開催に向けて、まず「ワンフェス」の原点である、ものづくりの人たちがしっかりと自分がつくったものを展示・販売できる場をご用意したいと考えています。

そのため、会場キャパシティの問題や運営方法など、ディーラーのみなさんにはご不便をお掛けすることが少なくないと思います。

これからまだまだ状況がどうなるかまったく見えない中でのコメントになりますが、これからもみなさんと一緒により良い「ワンフェス」にしていきたいと思いますので、ご協力よろしくお願いいたします。

コロナ禍におけるオタクカルチャー

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イベント情報

ワンダーフェスティバル2021[秋]オンライン

日時
10月9日(土)10:00~17:00
場所
オンライン イベントプラットフォーム「eventos(イベントス)」内WF特設サイト
参加料
1,000円(税込)チケット購入はこちらより

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