この文芸誌は、編集者の小澤みゆきさんによる個人出版レーベル・海響舎が発行するもの。全国書店の店頭ほか、Web通販で販売となる。価格は1500円(税別)。
特集は「大恋愛」。恋愛を通した女性(モダニズム)作家の読み直しとフェミニズムをテーマに様々な角度から「愛」について考える内容となる。
異例の同人誌の発行人による文芸誌『海響』
小澤さんは同人誌発行人、フリーライターとして活動しつつ、現在は編集者として活動中。2019年には文芸同人誌『かわいいウルフ』を発行。20世紀イギリスの女性作家であるヴァージニア・ウルフをエッセイ、テキスト分析、イラストなど様々な切り口から特集したこの同人誌は、文芸同人誌として異例の1000部を売り上げた。
2019年にはITエンジニアのエッセイを集めた形で『海響0号 情報技術』がそのプロトタイプとして刊行され、いよいよ『海響第一号』として創刊された。
特集するのは「大恋愛」。海外文学を軸足とし、創作、随筆、評論と様々な角度から「愛」について考える内容となるとのこと。
なお、『海響第一号』は、同人誌ながらISBNと書籍JANコードを取得。出版取次業者を通じ全国の書店にて順次販売が開始され始めている(外部リンク)。在庫や販売状況については各店舗に確認されたい。
気鋭の執筆陣らによる評論も
『海響一号』の内容は以下のとおり。評論・随筆には昨年、初の著書『リズムから考えるJ-POP史』を刊行した批評家のimdkmさん、星海社新書から6月に発売された『「百合映画」完全ガイド』の執筆者の一人・中村香住さん、KAI-YOU premiumにて連載「韓国ポップカルチャー彷徨」を昨年執筆した松本友也さんらの名前が並ぶ。
第1部 創作
オマージュ創作
とある作家によせて、作品をよせていただきました。
「ひとひら」永山源(短歌)
「ストリング・カルテット」小澤みゆき(掌編小説)
短篇小説
恋愛をテーマに、さまざまな切り口で短篇小説を書き下ろしていただきました。
「古風な恋の物語」甘木零
「けだもの」太田知也
「夏の冒険」花大猫
「もどれない針」小澤みゆき
「プレゼンス・アブセンス」木花なおこ
「大恋愛」櫻木みわ
「血管腫」汐入憂希
「暮れ惑う秋」谷田七重
「火星の囁き」水原涼
第2部 特集「大恋愛」
主に海外の女性作家を紹介する特集です。
小澤みゆきによる、13名の女性作家の(恋愛)小説の紹介文と、匿名の13名の恋愛エッセイが対になっている、という構成です。
海外作家と、現代を生きる〈わたしたち〉の恋愛観が響き合う内容になっています。
「アン・ブロンテ」/「いつか大恋愛とよばれる日々について」
「ジーン・リース」/「大恋愛」
「マーガレット・ミッチェル」/「愛の生産」
「ゼルダ・フィッツジェラルド」/「『ショールの女』」
「ヴァージニア・ウルフ」/「窓」
「ウィラ・キャザー」/「帰り道のこと」
「キャサリン・マンスフィールド」/「葡萄の残り香」
「ルイーザ・メイ・オルコット」/「待ち望んだ瞬間の」
「カーソン・マッカラーズ」/「いつかのチケット」
「アンナ・カヴァン」/「無題」
「ヴィルヌーヴ夫人」/「ファントムペイン」
「ルシア・ベルリン」/「矛盾する」
「アンネ・フランク」/「恋は盲目」
おまけコーナー:おすすめ〈大恋愛〉映像作品
第3部 評論・随筆
愛を切り口に、さまざまな文章を書き下ろしていただきました。
「おれだってラヴソングは人並みに聴いてきた(四つのラヴソングとそのかんたんな解題)」imdkm
「デンマークのテレビ番組と作家トーヴェ・ディトレウセンの結婚生活」枇谷玲子
「海辺の歌と恋」雪田倫代
「芽吹くことなく死んでいく恋の種」李琴峰
「恋愛できない上方落語」神野龍一
「花は視線に復讐するーーIZ*ONEのカムバックに寄せて 」松本友也
「誰が「百合」を書き、読むのか」レロ/中村香住
「積読入門」根井啓
「延命するフェアリーテイル――実写映画『美女と野獣』における女性像」小澤みゆきインディペンデント文芸誌『海響一号 大恋愛』より
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