有志が集まる即売会へ家に居ながらパソコンで参加する。仮想空間上で開催されるその即売会の名前は「バーチャルマーケット」(Vケット)。
9月21日から28日まで1週間にわたって開催された「バーチャルマーケット3」には延べ70万人が参加し、総勢600ものサークルが自作の3Dアバターなどを出展した。
今年、VR関連で特に話題となったのは複数のバーチャルYouTuber(VTuber)が開催し盛り上がりをみせたVRライブだった。
一方でVケットに参加し感じたのは、仮想空間はVRライブ以外にも様々なクリエイター/エンジニアたちが想像力の翼を広げる場所だということ。ライブのようなタレントとそのファンという構図ではなく、より作品へと光が当たるイベントの可能性がそこには広がっていた。
第1回のVケットの開幕から1年。前回(第2回)の出展ブース数400、来場者12万人から大きな成長をみせているように、この仮想空間上のイベントに多くの関心が寄せられていることが伺える。
この記事では、そんな実際の即売会と変わらない盛り上がりをみせた「Vケット」の様子、そしてVRならではの工夫や取り組みについてレポートする。
第3回の開催に合わせておこなわれたクラウドファンディングは1200万円を突破。仮想空間で上のファッション、デザイン、空間設計などのクリエイターたちにとって数少ない創作表現の場であり、最大規模の祭典として注目を集めている。
VケットへはソーシャルVRプラットフォームのVRChatというソフトを使用して参加する。VRを楽しむにはヘッドマウントディスプレイを頭にかぶる必要があるが、デスクトップのモニターからもゲームのような感覚で参加できる。
VRChatを起動すると最初に1人きりの空間「ホーム」にログインする。そこからワープポータルやメニューを使って他のプレイヤーのいる空間「ワールド」に移動することになる。 Vケット開催期間中、VRChatのメニューにはVケットの会場となる各ワールドが他とは別枠で表示されていた。今回のVケットではVRChatと連携して様々な機能が追加されており、これもそのうちの一つだ。 メニューからVケットのエントランスを選択してロードが終わると、そこは駅のホームに到着した電車の車両。流れるアナウンスによると、どうやら有明の駅(VR東日本!)に仮想空間への連結点が出現したということらしい。
改札を抜けて地上へ続く階段がポータルになっており、そこを抜けるとVケットのエントランスに到着。今回のVケットのテーマ「Another Reality」もう1つの現実を感じさせる演出だ。 エントランスは即売会の各会場へ移動するワープポータルが設置されていたりとゲームの空中要塞のような空間だ。
即売会といえば、だだっ広い会場に机がズラーっと並んでいるイメージだが、そこは仮想空間。ポータルから移動した会場は6つのコンセプトに沿って制作されており、即売会というよりも遊園地のような雰囲気が近い。歩くだけでも楽しめる空間に、出展者が開場のコンセプトを意識して制作した個性豊かなブースが並ぶ。
参加者は好みのアバターを選択し、その場で試着や着せ替えを楽しめる。会場のそこかしこで試着中のアイコンを頭上に点滅させながらブースを練り歩く姿を見ることができた。メニュー画面は各ブースの情報や、購入ページへのリンクが記載されたWebカタログを開く機能まで完備。まさに至れり尽くせりだ。 ロボットの工場と待機場をイメージしたワールド「仮想工廠」は、中央に巨大なロボットの発着場が。ここにはブースに展示されている3Dモデルを巨大化して飾ることができるというロボット好きにはたまらないギミックが。 ブースにはサイズなどある程度の決まりがあるようだが、製作者の様々なこだわりや個性が反映されていた。2階建のブースやスイッチを押すと展示ロボットが立ち上がるブースなど。展示方法やギミック、ブースのデザインもクリエイターたちの腕の見せどころだ。 「Pretty Pop Party」は、パステルとビビッドの2つの色彩空間に分かれたワールド。名の通りの色彩に飾られた世界には、ポップな可愛らしいブースが並ぶ。 この会場で目立ったのはpixivが開発するソフト・VRoid Studio製の3Dモデル。これらはユーザーコミュニティが中心となって作成したようだ。PC、そしてスマホでも手軽に人型のアバターが作成できるソフトだが、それぞれの個性が光る3Dモデルが各所に配置されていた。 異世界のお城をイメージした「Castello Magica」はお城の巨大なホールと図書館、そして怪しげな研究所からなるファンタジー系のアニメやゲームのような空間だ。 ワールドに入ると「一般人には入れない空間を特別に開放している」と尊大なアナウンスが。このアナウンスはなんと声優の緑川光さんが担当。この他にも各ワールドには何故かセブンイレブンの店舗が。
実はセブンイレブンはVケットの協賛企業。忠実に再現されたコンビニの前では神谷浩史さんら豪華声優陣による掛け合いが楽しめた。 「Sky Island」は山・森・海など自然盛り沢山のワールド。洞窟や木の上、海中など起伏に富んだ自然を再現し複数階層に分かれてブースが設置されている。歩いてみると複雑な立体で製作が面倒なのではないかと思ってしまうが、実はこれも仮想空間ならではの工夫。 主催である動く城のフィオさんによると「ブースがたくさん視界に入る」と動作が重くなってしまうとのこと。確かにネットゲームでも、プレイヤーやオブジェクトが密集すると同じような現象に襲われる。なんでもありのようなイメージの仮想空間にも仮想空間なりの制約があり、それを踏まえた上で快適な空間が設計されているのだ。
この他にも多くのVTuberたちが公式配信をおこなっていた。動画の視聴がメインのVTuberのファンとVR空間のクリエイターは近いようで重ならない部分も多い。こうした配信はVケットをクリエイターだけのお祭りでなく、それぞれのファンにとっても身近なイベントにしようという運営側の意図が感じられた。バーチャルマーケット3 ネオ渋谷 全ブース紹介!【のらきゃっと】
9月21日から28日まで1週間にわたって開催された「バーチャルマーケット3」には延べ70万人が参加し、総勢600ものサークルが自作の3Dアバターなどを出展した。
今年、VR関連で特に話題となったのは複数のバーチャルYouTuber(VTuber)が開催し盛り上がりをみせたVRライブだった。
一方でVケットに参加し感じたのは、仮想空間はVRライブ以外にも様々なクリエイター/エンジニアたちが想像力の翼を広げる場所だということ。ライブのようなタレントとそのファンという構図ではなく、より作品へと光が当たるイベントの可能性がそこには広がっていた。
第1回のVケットの開幕から1年。前回(第2回)の出展ブース数400、来場者12万人から大きな成長をみせているように、この仮想空間上のイベントに多くの関心が寄せられていることが伺える。
この記事では、そんな実際の即売会と変わらない盛り上がりをみせた「Vケット」の様子、そしてVRならではの工夫や取り組みについてレポートする。
仮想空間上の展示即売会・バーチャルマーケット
バーチャルマーケットは「仮想現実空間を発展させ、豊かにする」ことを目指して開催される仮想空間上の展示即売会。第1回が開催された2018年8月以降、半年に1度のペースで開催されてきた。第3回の開催に合わせておこなわれたクラウドファンディングは1200万円を突破。仮想空間で上のファッション、デザイン、空間設計などのクリエイターたちにとって数少ない創作表現の場であり、最大規模の祭典として注目を集めている。
VケットへはソーシャルVRプラットフォームのVRChatというソフトを使用して参加する。VRを楽しむにはヘッドマウントディスプレイを頭にかぶる必要があるが、デスクトップのモニターからもゲームのような感覚で参加できる。
VRChatを起動すると最初に1人きりの空間「ホーム」にログインする。そこからワープポータルやメニューを使って他のプレイヤーのいる空間「ワールド」に移動することになる。 Vケット開催期間中、VRChatのメニューにはVケットの会場となる各ワールドが他とは別枠で表示されていた。今回のVケットではVRChatと連携して様々な機能が追加されており、これもそのうちの一つだ。 メニューからVケットのエントランスを選択してロードが終わると、そこは駅のホームに到着した電車の車両。流れるアナウンスによると、どうやら有明の駅(VR東日本!)に仮想空間への連結点が出現したということらしい。
改札を抜けて地上へ続く階段がポータルになっており、そこを抜けるとVケットのエントランスに到着。今回のVケットのテーマ「Another Reality」もう1つの現実を感じさせる演出だ。 エントランスは即売会の各会場へ移動するワープポータルが設置されていたりとゲームの空中要塞のような空間だ。
即売会といえば、だだっ広い会場に机がズラーっと並んでいるイメージだが、そこは仮想空間。ポータルから移動した会場は6つのコンセプトに沿って制作されており、即売会というよりも遊園地のような雰囲気が近い。歩くだけでも楽しめる空間に、出展者が開場のコンセプトを意識して制作した個性豊かなブースが並ぶ。
個性豊かなワールドと工夫された各ブース
「ネオ渋谷」はもう1つの渋谷をテーマにしたワールド。昼と夜、そしてバグを再現したような3つの会場になっており、巨大なハチ公のオブジェを中心にスクランブル交差点が空中回廊として再現され、そこにサイバーポップなブースが並ぶ。 どのワールドにも共通のことだが、販売されているのは3Dアバターが中心。参加者は好みのアバターを選択し、その場で試着や着せ替えを楽しめる。会場のそこかしこで試着中のアイコンを頭上に点滅させながらブースを練り歩く姿を見ることができた。メニュー画面は各ブースの情報や、購入ページへのリンクが記載されたWebカタログを開く機能まで完備。まさに至れり尽くせりだ。 ロボットの工場と待機場をイメージしたワールド「仮想工廠」は、中央に巨大なロボットの発着場が。ここにはブースに展示されている3Dモデルを巨大化して飾ることができるというロボット好きにはたまらないギミックが。 ブースにはサイズなどある程度の決まりがあるようだが、製作者の様々なこだわりや個性が反映されていた。2階建のブースやスイッチを押すと展示ロボットが立ち上がるブースなど。展示方法やギミック、ブースのデザインもクリエイターたちの腕の見せどころだ。 「Pretty Pop Party」は、パステルとビビッドの2つの色彩空間に分かれたワールド。名の通りの色彩に飾られた世界には、ポップな可愛らしいブースが並ぶ。 この会場で目立ったのはpixivが開発するソフト・VRoid Studio製の3Dモデル。これらはユーザーコミュニティが中心となって作成したようだ。PC、そしてスマホでも手軽に人型のアバターが作成できるソフトだが、それぞれの個性が光る3Dモデルが各所に配置されていた。 異世界のお城をイメージした「Castello Magica」はお城の巨大なホールと図書館、そして怪しげな研究所からなるファンタジー系のアニメやゲームのような空間だ。 ワールドに入ると「一般人には入れない空間を特別に開放している」と尊大なアナウンスが。このアナウンスはなんと声優の緑川光さんが担当。この他にも各ワールドには何故かセブンイレブンの店舗が。
実はセブンイレブンはVケットの協賛企業。忠実に再現されたコンビニの前では神谷浩史さんら豪華声優陣による掛け合いが楽しめた。 「Sky Island」は山・森・海など自然盛り沢山のワールド。洞窟や木の上、海中など起伏に富んだ自然を再現し複数階層に分かれてブースが設置されている。歩いてみると複雑な立体で製作が面倒なのではないかと思ってしまうが、実はこれも仮想空間ならではの工夫。 主催である動く城のフィオさんによると「ブースがたくさん視界に入る」と動作が重くなってしまうとのこと。確かにネットゲームでも、プレイヤーやオブジェクトが密集すると同じような現象に襲われる。なんでもありのようなイメージの仮想空間にも仮想空間なりの制約があり、それを踏まえた上で快適な空間が設計されているのだ。
中華風サイバーパンクな「九龍帝国城下町」は、ネオンの看板が猥雑に並んだ繁華街とアングラで危険な雰囲気を醸し出す地下街からなる。ブースにはサイボーグやアジアンテイストなモデルが並んでいた。 ここではバーチャルYouTuber(VTuber)グループ・真空管ドールズのメンバーが開催していた観光ツアーに参加できた。 仮想空間とは言っても人との交流はやはり重要で、かつ得るのはなかなか難しい。深夜でもブースを見て回ることが出来る上に出展者が居なくてもWeb上で購入まで済ませられるので、1人でブースを散策して寂しさを感じる場面もあった。観光ツアーのような大勢でワールドを練り歩くイベントは仮想空間であってもその向こうには人がいるのだと実感できる良い体験だった。「ワールドがこだわり過ぎてて重いのでは」という話は真逆で、ワールドそれ自体はめちゃくちゃ軽い。
— 動く城のフィオ⚙バーチャルマーケット主催🎪Vケット3無事終了! (@phio_alchemist) September 26, 2019
「ブースがたくさん視界に入るポイントが重い」のであって、ワールド設計の段階でそういうポイントをいかに無くすか、がキーになってるのだ
この他にも多くのVTuberたちが公式配信をおこなっていた。動画の視聴がメインのVTuberのファンとVR空間のクリエイターは近いようで重ならない部分も多い。こうした配信はVケットをクリエイターだけのお祭りでなく、それぞれのファンにとっても身近なイベントにしようという運営側の意図が感じられた。
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