『ドラゴンボール超』シリーズの最新作『ドラゴンボール超 ブロリー』が12月14日(金)に公開されました。
本作は、アニメオリジナルキャラクターのブロリーがメインキャラクターとして登場する、劇場版『ドラゴンボール』の完全新作。原作者である鳥山明さんが設定やシナリオを担当したこともあり、公開前から国内外問わず話題になっていました。
KAI-YOU社内(の一部)でも「2018年末の大本命映画」に位置付け、積極的に取り上げてきた本作。
これまでブロリーは、劇場版アニメに3回登場しています。
まず『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』(1993)、次に『ドラゴンボールZ 危険なふたり!超戦士はねむれない』(1994)、そして『ドラゴンボールZ 超戦士撃破!!勝つのはオレだ』(1994)。
ブロリーが劇場版作品に登場するのは、なんと約24年ぶりとなります。
そんな僕が試写会に参加する機会をもらい、しかも本作のレビュー記事を任されてしまい、最初は責任の重さに心が折れそうでした。
かと言って、付け焼き刃で過去作を見直して中途半端な知識を身につけても『ドラゴンボール』には歯が立たないはず。そう考えて、もともとの知識のまま、僕は試写会に向かいました。
さすがは『ドラゴンボール』。そんな僕でも存分に楽しむことができました。
通常の映画上映ではなく、最新の体感型映画上映システムである「4DX」の、さらに演出レベル最強モードの「4DXエクストリーム版」で鑑賞したのですが、それも相まって、『ドラゴンボール』初体験の興奮をさらに倍増させてくれました。 今回は、その魅力を僕なりにお伝えしていこうと思います。
余談ですが、主要キャラクターの顔と名前くらいは一通り把握しているつもりだったのですが、「トランクスって誰ですか?」と口にした時、編集部の人たちの目が点になった光景は今でも忘れません。
※本稿は、作品の一部ネタバレを含みます
「旧ブロリー」からの最大の変化
僕は本作を観る前から、ブロリーが作中最強キャラだという認識は持っていました。理由は、友達の家にあった『ドラゴンボールZ Sparking!METEOR』。2007年に発売されたPS2の格闘ゲームです。そのゲーム内で、ブロリーは圧倒的なスペックを誇っていました。
当時小学生だった僕は、「とりあえずブロリーを使っておけば勝てる」という認識で愛用していたのを覚えています。
ですが、ブロリーが実際にはどういうキャラクターなのかはわかりませんでした。
編集部の先輩たちに聞いてみると、どうやらブロリーは「残虐非道、冷酷無比、まさに悪魔の最強サイヤ人」「世界でダントツの人気を誇ってる」「破壊と殺戮を楽しむ戦闘狂」「ブロリーが登場した時の絶望感は異常」などなど、恐ろしいフレーズが次々に出てきます。 しかし『ドラゴンボール超 ブロリー』映画鑑賞後、その最低限身につけていた前提知識と認識は覆されてしまいました。
本作に登場するブロリーには、事前に聞いていたブロリーとは違う優しい一面がありました。サイヤ人であるがゆえの戦闘本能から戦いを求めてしまうだけで、実際は温かい人間性を持ったいいヤツ。
僕は鑑賞しながら思っていました。「あれ、先輩たちの言ってた話と全然違うぞ?」と。もしかして騙された?
しかし、そうではありませんでした。先輩たちの言う「殺戮マシーン」という過去作のイメージが嘘だったわけではなく、今作で初めてブロリーの内面が描かれていたのです。
その点が、これまでのシリーズからの最大の変化でした(と過去作も全部鑑賞している先輩に教えてもらいました)。
ブロリーと悟空の過去が重ねられた本作
さらにいうと、それは悟空と共通するキャラクター性です。 それが特に際立って描かれていたのは、実の父親でありながらブロリーを戦闘狂にさせた張本人・パラガスの死を巡る悲劇。そこから、ブロリーは感情的になり超サイヤ人(すーぱーさいやじん)へと覚醒していきます。あとから教えてもらった話ですが、過去作と今作では、パラガスの死を巡る設定が全く違っているので、そこはブロリーファン的には見どころになると思います。
『ドラゴンボール超 ブロリー』では、クリリンが殺されたことで悟空が超サイヤ人に覚醒したのと同じ経過をたどっていました。
酷い扱いをされていた父親でも、彼を殺された“怒り”の感情が、ブロリーを超サイヤ人へと覚醒させました。 本作では回想として、悟空が超サイヤ人になったシーンが挟まれる演出がなされていて、過去作を観ていない僕でも、どちらも親しい人間が殺された「怒り」をトリガーに覚醒しているというのがわかりました。
ブロリーがただの破壊や殺戮衝動からではなく、主人公である悟空と同じ経過をたどって超サイヤ人になったということ。
ここに僕は、ブロリーという、絶対的な悪物キャラが持つはずのない主人公級のポテンシャルを感じました。
ブロリーに多くの人が執着する理由
ブロリーのこの「怒り」は、過去作で聞いていたような、殺戮、悟空への殺意という衝動とは違うものでした。他にも、友達の怪獣の毛皮を肌身離さず身につけていたり、ブロリーに信頼を寄せるチライやレモをかばうシーンなど、ブロリーの優しい人間性が随所にうかがえました。 ただ、逆にこの映画だけを観ても、なぜ世界でダントツの人気を誇るのか、ファンや編集部の人がそこまでブロリーに異常なまでの執着を抱いていたのかが、僕には完全には分かりませんでした。
編集部いちのブロリー好き・和田さんに正直に伝えたところ、こう返ってきました。
なるほど、そういうことなんですね。和田さん:
ブロリーがここまでの人気を誇っていたのは、「旧ブロリー」の悪魔的な強さと、登場に伴う圧倒的な絶望感があったからだと思うのよね。マジで強すぎたもん。悟空・悟飯・ベジータ・トランクス・ピッコロが束になってもボッコボコだったから。
逆に今回は、ブロリーにストーリーとキャラクター性を付与して、ブロリー人気をさらに強固なものにしようという意図が見える。これは“今後もブロリー使っていく“という意思表明でもあると思う。そして(会見で口にしていた)鳥山明先生がブロリーを覚えてなかったのは衝撃だった。
人間性を排除した、強さという一点のみにおいて突き抜けていたのが、ファンを魅了していたのかもしれません。
鳥山明さんの発表したコメントによると、やはり今回では強さだけではなく、原作に登場するブロリーとは大きく異なるようにリメイクしているのだそうです。
ブロリーファンをガッカリさせないように昔のイメージを意識しつつ、
新しい一面も加えてリニューアルし、より魅力的なブロリーになったと思っています。 鳥山明さんコメント
悟空たちの“強さのインフレ”に驚愕
悟空やベジータが「超サイヤ人」に覚醒するのは知っていたのですが、その先の「超サイヤ人ゴッド」、さらに「超サイヤ人ゴッド超サイヤ人」(略称は「SSGSS」)なる存在……強さのインフレ具合に驚愕しました。そして、ネーミングセンス!さて、この先、さらに強いキャラクターが出てくるのでしょうか…。
そんな中、悟空が「超サイヤ人」になったブロリーに「まだ上があるのか…!」という一言。思わず心の中で「お前が言うな!」とツッコまずにはいられませんでした。
星を壊した? しかし、いくつになってもこういう熱い展開をやはり求めてしまうものですね。和田さん:
強さのインフレは『ドラゴンボール』ではもはや問題にはならない。常にインフレを超えるインフレを巻き起こしてきたから大丈夫。俺なんかフリーザが星を壊したときに、もうこれ以上無理だと思ったから。
ベジータかわいい
これはドラゴンボールファンは全員が納得するそうなのですが、ベジータの噛ませ犬感がすごかったです。 ベジータ「そろそろ体が温まってきた!」とニヤニヤしながら、上着を脱いで超サイヤ人に。戦いの中で学習してどんどん強くなるブロリーを前に、最終的には「これは遊んでいる場合じゃないな!」と超サイヤ人ゴッド超サイヤ人で対抗するも、ブロリーの驚異的な強さの前にあっけなく敗北を喫します。
自信家キャラでこの展開。ベジータを愛さずにはいられませんでした。
うおおお! ベジータ大好きだあああ!和田さん:
実は、あれはマシな方。ブロリー初登場のとき、ベジータは戦闘中の9割くらいはガタガタ震えてただけだだったし、一念発起しても秒殺されるみたいな不遇の時代があった。むしろ『ドラゴンボール超』からはベジータの噛ませ扱いが多少良くなってる。今回は見せ場は多かった方やね。
そういう意味で、長く続く『ドラゴンボール』の人気キャラを大事にしてると言える。ちなみに今回は『俺じゃ行っても邪魔になる枠』がピッコロだった。悲しい。
その結末は是非自分の目で確かめてほしいのですが、ブロリーはまだ、自分の力の使い方をコントロールできずまだまだ発展途上のような印象でした。
あと、僕が思ったのは、サイヤ人は本当に戦うことが大好きなんだなということでした。
和田さん:
今作は、かなり新鮮な結末だった。ブロリーの潜在的な強さの余白が残っていて、かつ最後は、これまでには絶対ありえなかった“その後”も描かれてる。これは、早くも次回作が楽しみだわ!
こんなにすごいバトルシーンのアニメは観たことがない
本作の一番の見所は、やはりなんと言ってもド迫力戦闘シーンとそれを支える作画のクオリティにあります。後半の怒涛の戦闘シーンは圧巻で、瞬きができませんでした。人間を超越した戦いの、圧倒的少年漫画感! ここまでバトルシーンの凄まじいアニメは、はじめて観ました。 特に注目したいのは、作中で一度だけ描かれたブロリーの一人称視点での戦闘シーンに切り替わる場面です。「ゴーゴー! ブロリー!」のBGMとともに、ブロリーが怒涛の攻撃を繰り広げます。
個人的には、ここが本作で一番テンションが上がったポイントでした。このシーンによって「この映画はブロリーが主役なんだ」ということを再認識できる、非常に素晴らしい演出だったと思います。
さらに、4DXの仕掛けがバトルの演出と連動して臨場感がすごかったです。二人のバトルシーンをより楽しむことができました。
すいません、読みます。和田さん:
ぶっちゃけ、『ドラゴンボール』はキッズ向けのアニメだから映画的な展開とかはどうでもよくて、カッコいいことが重要。そういう意味で、「新ブロリー」のバトルシーンのカッコよさは異常だった。
ブロリー登場1作目の『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』をオマージュした演出もちょこちょこ入ってて、オールドファン的には歓喜でした。これまでと比べてストーリーの強引な展開も少なかったし。
とにかく、悟空とブロリー超カッケェ。それだけで最高の劇場版『ドラゴンボール』と言える! そして、4DXヤバくない? ド迫力すぎて、座る位置30回以上直したわ。まさにエクストリーム。
というか、今さらだけどドラゴンボール1巻だけ読んだって森田くんヤバくない? 逆に1巻でやめるってすごくない?? 森田くんもエクストリームなの?
結論:初心者もオールドファンも、絶対に楽しめる
初めて観た『ドラゴンボール』は、言うまでもなくめちゃくちゃおもしろかったです。少年漫画特有の激アツバトル展開。キャラも敵味方関係なく個性豊かで魅力にあふれていて最高にかっこよかった。本作を観て、『ドラゴンボール』が世界中から愛される理由がちょっとだけわかった気がしました。
僕ではわからなかった、『ドラゴンボール』好きにも刺さるポイントが沢山あったようです。
『ドラゴンボール』の(特にブロリーの)ファンである和田さんも、鑑賞後には鼻息荒く語っていたので間違いないと思います。
原作の2巻から読み進めるところからまず始めようと思いました。
本作の主役のブロリーに新たに「人間性が追加された」という点、また「ブロリーがまだ発展途上」という点を鑑みても、この先ブロリーが公式で活躍しまくる予感がしますよね。
今後さらにパワーアップしたブロリーの活躍に大いに期待です。
「2018年末の大本命映画」は確実にブロリーです。さらに4DXで観ればブロリーで間違いなし!ぜひお見逃しなく!
悟空役・野沢雅子さんらの「かめはめ波」!
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連載
クールごとに数多くの作品が放送・配信されるTVアニメや近年本数を増しつつある劇場版アニメ。 すべては見られないけれど、何を見ようか迷っている人の指針になるよう、編集部が期待を込めて注目作を紹介するコーナーが「KAI-YOU ANIME REVIEW」です。 監督や脚本家らクリエイターが込めた意図やメッセージの考察、声優の演技論、作品を取り巻く環境・背景など、様々な切り口からレビューを公開しています。
2件のコメント
和田拓也
DBハラスメント全開(Yahoo!コメント抜粋)の和田です。インターンの森田くん、ものすごく頑張ってレポートを書いてくれました!
個人的には、「銀河パトロール ジャコ」単行本の巻末に掲載された短編に登場した、悟空の母・ギネが登場したのが激アツでした。そこも絡めるのか〜〜!!と驚きでした
匿名ハッコウくん(ID:2446)
原作にブロリーは出てきません
鳥山明が覚えてなくて当たり前ですわな。