昨年末に全国劇場公開された、鳥山明さん原作『ドラゴンボール』シリーズ最新作の『ドラゴンボール超 ブロリー』。国内ではメガヒットを記録、第42回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞の受賞も発表された。
また世界でも続々と公開がはじまり、1250スクリーンで公開された北米では初日の興行収入7,033,008ドル(およそ7億7000万円)を記録、「Daily Box Office」のランキングでは1位を獲得した。
21世紀(つまり2001年)以降の作品で、「日本のアニメ映画がアメリカで1位を獲得したのは初」だと運営はコメントしている。 今回は、その国民的アニメである『ドラゴンボール』で孫悟空を演じる、声優の野沢雅子さん、ベジータを演じる堀川りょうさんにインタビューを行った。
野沢さんは声優としてのキャリアは50年以上、また堀川さんも30年を超える声優界のレジェンドだ。『ドラゴンボール』のアニメが1986年に放送開始してから33年。声優本人たちが感じる、日本人で知らないひとの方が少ないであろう悟空とベジータとはどんなものなのか。さらに、空前のヒットを記録する『ドラゴンボール超 ブロリー』の“主役”ブロリー についても二人の視点から語ってもらった。
インタビュー・文:須川原みち 写真・編集:和田拓也
野沢雅子(以下、野沢) すごくあります。私は劇団を主宰していて、若い連中はすぐ見に行ったらしいんですよ。みんな「面白かったです!」って言ってましたね。「どこが面白かった」とかは言わないんですけど(笑)。その一言で通じますよね。
──特に本作は、『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』『ドラゴンボールZ 危険なふたり!超戦士はねむれない』『ドラゴンボールZ 超戦士撃破!!勝つのはオレだ』に登場した強キャラ・ブロリーが再登場したことでも話題です。実に20数年ぶりの登場となったブロリーですが、『ドラゴンボールZ』時代のブロリーについて、何か印象に残っていることはありますか?
堀川りょう(以下、堀川) ……まずい(笑)。
野沢 正直、スタッフの方に言われるまで覚えてなかったんです。毎週いろんなキャラクターが登場しますから……。
最初、初登場のキャラだと思っていて、「昔出たキャラです」と言われて、「あー、そうかー!」ってなりました(笑)。
堀川 お恥ずかしい話、僕もそうでした。「ブロリー」ってどんな人だったっけ……となりましたね。 ──(笑)。20数年ぶりにブロリーと再会して、ブロリーはどんなキャラだと思いましたか?
野沢 ブロリーは根っからの極悪人じゃないと思いました。人間、誰しもどこかしら悪の部分を出そうとするところがあって、そういう部分が大きい人なんだろうなって。
「俺はここにいるんだぞ」って、みんなに自分の存在を示したいがために、悪い振る舞いをしているんじゃないかな。
堀川 (24〜25年前の作品と比べて)今作では、ブロリーに救いがあるような気がしました。ブロリーは本意でなく(悟空やベジータと)戦わざるを得ない状況にどんどん追い詰められていって、本来なら最後には自分の存在が消えてしまう。それって、かわいそうだと思いました。でも、今作は違う結末になっていますよね。
昔の作品と比べると、今作は絵もキレイで戦闘はより壮絶でスゴくなっているし、僕としてはそんなドラマチックなところも好きです。
──『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』『ドラゴンボールZ 危険なふたり!超戦士はねむれない』『ドラゴンボールZ 超戦士撃破!!勝つのはオレだ』の時から演技を変えよう、ということを試みたりは?
野沢 変えてみようと思ったことはないですね。私は出てきた作品に対して、思いっきり悟空の中に入り込むだけなんです。
堀川 「オッス! オラ、悟空!」って言った瞬間に、野沢雅子さんじゃなくて、悟空になってるんですよ。 堀川 僕も「ベジータを演じよう」と思っているわけじゃなくて、ベジータは自分の一部なので、「自分のアフレコだ」と思いながら演じています。それくらいの思いがないと、やっぱり魂みたいなものは入っていかないような気がします。
──直近のテレビシリーズ『ドラゴンボール超』は、オリジナルアニメとしては『ドラゴンボールGT』以来、20年もの間が空いていますが、悟空やベジータにすんなりと戻れるものなのですか?
野沢 何十年たっても、スッて(悟空に)入れますよ。
堀川 久しぶりに会ったとしても、昨日別れたかのようにすっと昔の感覚に戻れますよね。「おはようございます、マコさん!【野沢雅子さんの愛称】 じゃあ、行きましょうか!」「うん、行こう!」って感じで。
それも、絆が出来上がっているからかなって。
堀川 頬を真っ赤にしたり、「俺のブルマに何をする!」なんて言ったりね。僕もベジータがあんなことを言うとは、思わなかったですよ!
野沢 そういうのが大嫌いな人……ってことだったけど、本当は好きなんだと思うんですよ。照れがあるんでしょうね。
堀川 ツンデレですよ(笑)。
野沢 「もう素直になりなよ」って言いたくなる(笑)。
堀川 ベジータはストーリー上で性格がどんどん変わっていって、演じていてすごく面白いんですよ。
人としての成長というか、彼の中での“強さ”の定義がどんどん変わっていってる。
今までは自分が強くなることしか考えずに、腕力を強くして技を磨いていた。でも、それがカカロットとの戦いを通じて徐々に変わっていき、「耐える」とか「相手を守る」といった精神的な強さを得ていった。それで、家族や他人を守るために自分を犠牲にして散っていくこともするようになるわけですよね。
それは、カカロットと出会って、ベジータが変化した部分だと思います。ずっとヒールのままだと変化がないけれど、ヒールはヒールなりに徐々に変わっていってる。
──昔のブロリーが登場する映画では、ベジータはブロリーに対して怯えていて、一念発起をしても秒殺されてしまいます。しかし、今作だとベジータもしっかりと活躍していますね。
堀川 それは、ベジータが本当の強さをわかってきたから、(20数年をへて)堂々と戦えるようになったということかもしれません。
野沢 ベジータみたいなワガママな人、いないですよね。でも、悟空はベジータのことを認めてるんですよ。
野沢 変化をしたのはベジータさんで、私としては悟空は変わらないと思ってます。
──そもそも、野沢さんにとって、悟空はどういった人物だと考えていますか?
野沢 悟空は常に、平和な世の中を目指す気持ちを持っている人だと思ってます。だから、悪のような存在が出てきて、世の中が乱れるのが大嫌い。そうなった時には出ていって戦ったりする。
堀川 悟空は最初、必ず説得を試みますよね。「コノヤロー!」って敵に向かっていかないで、「ちょっと待てよ」って。サイヤ人だから戦いは大好きなんだけど、優しさや慈愛がある。
野沢 根はすっごく優しい人だと思うんですよ。それは小さい頃、(サイヤ人の特徴である)尻尾のある頃から変わらない。
──それでは、悟空が成長した部分はどんなところでしょう?
野沢 悟空は、目に見えない部分で成長しているとは思います。
他人様にはわからないけど、前にはできなかったことが今はできるようになっている。でも、そのことに自分で気づいていないのが悟空だと思うんです。常に自分を高めようと思って修行をしているけど、どれくらい伸びたかというのは自分ではまったくわからない。だから、「誰よりも自分が強くなりたい」という欲も持っていないんじゃないかな……?
常に強くなりたいんだけど、それは何か起こった時に平和を守るために鍛えているんだと思います。
野沢 ……どうなのかしらねぇ。それは他人様が見て思うところであって、自分ではわからない部分ですから。
私は悟空ほど他人様のために一生懸命やる人間じゃないですけど、悟空に近い部分は持ってます。後輩が理不尽にイジメられたりしたら、私は「なんでイジメるんですか? 理由を聞かせてください」って出ていきますもん。そういうのは許せないです。
堀川 やっぱりただ“強い”を目指すんじゃなくて、世の中の平和を維持するために、我が身を犠牲にしてでも戦っていく、という資質があるんだと思いますよ。でも、そういった部分は、誰しもの中にあるんじゃないかな。
──ベジータがツンデレになっていくに連れ、堀川さん自身もツンデレになったりは?(笑)
堀川 僕はすぐヘラヘラしちゃうタイプなので、ツンデレにはなれっこない(笑)。僕は自分をツンデレじゃないと思っていますが、自分の中にどこかそういう部分はあるんでしょうね。だから、自分の中にあるツンデレの部分をちょっとデフォルメしたりして、なんとなく理解しようとはします。
人間、誰でも悪い部分もあれば良いところもあると思うんです。良いことをやりながら悪いことをしたりするし、悪い奴が悪行しかしないのか、といえばそういうわけでもない。人間って、そういうところが面白いのかなって。
野沢 良いところとちょっぴり悪いところは、人間誰しも持ってるもんね。
──それでは、お二人は演技者として長くご活躍されていますが、ご自身のキャリアにとって、悟空とベジータはどういう存在になるのでしょう?
野沢 今のところ、分身ですよね。もちろん、(役者として)悟空だけを演じていればいいわけじゃなくて、違う役の時はそっちに入らないといけない。でも、悟空との付き合いは長いので、悟空が来た時にはフッて入っていけるんです。
堀川 本当に、自分の一部。すべてではないかもしれないけど、間違いなく自分から来ているもの、自分自身だと思っています。ベジータほど強くはないですけど(笑)。
──ちなみに『ドラゴンボール超 ブロリー』で、監督と演技についてお話しすることもありましたか?
堀川 「こう演じてくれ」っていうのはあまりなくて。むしろ「思った通りにやってください」と言ってもらっています。それは、自分たちを信頼をしてくださっているのかな、って。
野沢 監督の意図と演技が違った場合は、言ってくれますよね。その考えが自分と違っていたらディスカッションになるんでしょうけど、そういうのはほとんどないです。
──それだけ、お二人自身が悟空とベジータになっている。
野沢 これだけ長くやってるのでね。
堀川 もちろん、別の作品の時には自分の中からベジータは消えてますよ。でも、やっぱりベジータは自分の一部だな、と思います。長くやらさせていただいてる作品の役ですしね。
──最後に、悟空とベジータはお二人にとっても代表的なキャラクターだと思います。一方で、今後、こんな役柄に挑戦してみたい! という希望などはありますか?
野沢 「こういった役柄」という希望はないんですけど……来た役は全部やりたいです!
堀川 僕もわりとそれに近いかもしれないな。みんな、僕をどう料理してくれるんだろう? って。
「今までにないかもしれないけど、こんな役をちょっとやってみてくれない?」と言われたら、やってみたいです。そんな興味や好奇心は尽きないですよね。そういう気持ちがなくなっちゃうとつまらないかなって思うので。
野沢 今日まで、悟空以外にもたくさんのキャラクターを自分なりに役に入り込んで演じさせていただきました。監督さんから「もっとこういうふうに演じてほしい」と言われたことがないので、今のところ(自分が感じている役柄と、監督が表現したい役柄)は一致しているのかなって。だから、これからもその感じでいきたいと思っています。
──『ドラゴンボール超 ブロリー』はもちろんのこと、今後の悟空とベジータ、そして野沢さんと堀川さんの活躍にも期待しています。本日はありがとうございました!
21世紀(つまり2001年)以降の作品で、「日本のアニメ映画がアメリカで1位を獲得したのは初」だと運営はコメントしている。 今回は、その国民的アニメである『ドラゴンボール』で孫悟空を演じる、声優の野沢雅子さん、ベジータを演じる堀川りょうさんにインタビューを行った。
野沢さんは声優としてのキャリアは50年以上、また堀川さんも30年を超える声優界のレジェンドだ。『ドラゴンボール』のアニメが1986年に放送開始してから33年。声優本人たちが感じる、日本人で知らないひとの方が少ないであろう悟空とベジータとはどんなものなのか。さらに、空前のヒットを記録する『ドラゴンボール超 ブロリー』の“主役”ブロリー についても二人の視点から語ってもらった。
インタビュー・文:須川原みち 写真・編集:和田拓也
今作では、ブロリーに“救い”がある
──映画『ドラゴンボール超 ブロリー』はオールドファンはもとより、若い世代や海外からも広く受け入れられてヒットを飛ばしています。若い世代からの反響などはありましたか?野沢雅子(以下、野沢) すごくあります。私は劇団を主宰していて、若い連中はすぐ見に行ったらしいんですよ。みんな「面白かったです!」って言ってましたね。「どこが面白かった」とかは言わないんですけど(笑)。その一言で通じますよね。
──特に本作は、『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』『ドラゴンボールZ 危険なふたり!超戦士はねむれない』『ドラゴンボールZ 超戦士撃破!!勝つのはオレだ』に登場した強キャラ・ブロリーが再登場したことでも話題です。実に20数年ぶりの登場となったブロリーですが、『ドラゴンボールZ』時代のブロリーについて、何か印象に残っていることはありますか?
堀川りょう(以下、堀川) ……まずい(笑)。
野沢 正直、スタッフの方に言われるまで覚えてなかったんです。毎週いろんなキャラクターが登場しますから……。
最初、初登場のキャラだと思っていて、「昔出たキャラです」と言われて、「あー、そうかー!」ってなりました(笑)。
堀川 お恥ずかしい話、僕もそうでした。「ブロリー」ってどんな人だったっけ……となりましたね。 ──(笑)。20数年ぶりにブロリーと再会して、ブロリーはどんなキャラだと思いましたか?
野沢 ブロリーは根っからの極悪人じゃないと思いました。人間、誰しもどこかしら悪の部分を出そうとするところがあって、そういう部分が大きい人なんだろうなって。
「俺はここにいるんだぞ」って、みんなに自分の存在を示したいがために、悪い振る舞いをしているんじゃないかな。
堀川 (24〜25年前の作品と比べて)今作では、ブロリーに救いがあるような気がしました。ブロリーは本意でなく(悟空やベジータと)戦わざるを得ない状況にどんどん追い詰められていって、本来なら最後には自分の存在が消えてしまう。それって、かわいそうだと思いました。でも、今作は違う結末になっていますよね。
昔の作品と比べると、今作は絵もキレイで戦闘はより壮絶でスゴくなっているし、僕としてはそんなドラマチックなところも好きです。
──『ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』『ドラゴンボールZ 危険なふたり!超戦士はねむれない』『ドラゴンボールZ 超戦士撃破!!勝つのはオレだ』の時から演技を変えよう、ということを試みたりは?
野沢 変えてみようと思ったことはないですね。私は出てきた作品に対して、思いっきり悟空の中に入り込むだけなんです。
堀川 「オッス! オラ、悟空!」って言った瞬間に、野沢雅子さんじゃなくて、悟空になってるんですよ。 堀川 僕も「ベジータを演じよう」と思っているわけじゃなくて、ベジータは自分の一部なので、「自分のアフレコだ」と思いながら演じています。それくらいの思いがないと、やっぱり魂みたいなものは入っていかないような気がします。
──直近のテレビシリーズ『ドラゴンボール超』は、オリジナルアニメとしては『ドラゴンボールGT』以来、20年もの間が空いていますが、悟空やベジータにすんなりと戻れるものなのですか?
野沢 何十年たっても、スッて(悟空に)入れますよ。
堀川 久しぶりに会ったとしても、昨日別れたかのようにすっと昔の感覚に戻れますよね。「おはようございます、マコさん!【野沢雅子さんの愛称】 じゃあ、行きましょうか!」「うん、行こう!」って感じで。
それも、絆が出来上がっているからかなって。
堀川りょうが演じる中で感じた、ベジータの変化
──オールドファンからすると、『ドラゴンボール超』ではベジータのコミカルな描写が多く、新鮮に思えました。愛妻家の一面も強く出ていたり。堀川 頬を真っ赤にしたり、「俺のブルマに何をする!」なんて言ったりね。僕もベジータがあんなことを言うとは、思わなかったですよ!
野沢 そういうのが大嫌いな人……ってことだったけど、本当は好きなんだと思うんですよ。照れがあるんでしょうね。
堀川 ツンデレですよ(笑)。
野沢 「もう素直になりなよ」って言いたくなる(笑)。
堀川 ベジータはストーリー上で性格がどんどん変わっていって、演じていてすごく面白いんですよ。
人としての成長というか、彼の中での“強さ”の定義がどんどん変わっていってる。
今までは自分が強くなることしか考えずに、腕力を強くして技を磨いていた。でも、それがカカロットとの戦いを通じて徐々に変わっていき、「耐える」とか「相手を守る」といった精神的な強さを得ていった。それで、家族や他人を守るために自分を犠牲にして散っていくこともするようになるわけですよね。
それは、カカロットと出会って、ベジータが変化した部分だと思います。ずっとヒールのままだと変化がないけれど、ヒールはヒールなりに徐々に変わっていってる。
──昔のブロリーが登場する映画では、ベジータはブロリーに対して怯えていて、一念発起をしても秒殺されてしまいます。しかし、今作だとベジータもしっかりと活躍していますね。
堀川 それは、ベジータが本当の強さをわかってきたから、(20数年をへて)堂々と戦えるようになったということかもしれません。
野沢 ベジータみたいなワガママな人、いないですよね。でも、悟空はベジータのことを認めてるんですよ。
野沢雅子にとっての孫悟空像
──野沢さんは、悟空の変化を感じることはありますか?野沢 変化をしたのはベジータさんで、私としては悟空は変わらないと思ってます。
──そもそも、野沢さんにとって、悟空はどういった人物だと考えていますか?
野沢 悟空は常に、平和な世の中を目指す気持ちを持っている人だと思ってます。だから、悪のような存在が出てきて、世の中が乱れるのが大嫌い。そうなった時には出ていって戦ったりする。
堀川 悟空は最初、必ず説得を試みますよね。「コノヤロー!」って敵に向かっていかないで、「ちょっと待てよ」って。サイヤ人だから戦いは大好きなんだけど、優しさや慈愛がある。
野沢 根はすっごく優しい人だと思うんですよ。それは小さい頃、(サイヤ人の特徴である)尻尾のある頃から変わらない。
──それでは、悟空が成長した部分はどんなところでしょう?
野沢 悟空は、目に見えない部分で成長しているとは思います。
他人様にはわからないけど、前にはできなかったことが今はできるようになっている。でも、そのことに自分で気づいていないのが悟空だと思うんです。常に自分を高めようと思って修行をしているけど、どれくらい伸びたかというのは自分ではまったくわからない。だから、「誰よりも自分が強くなりたい」という欲も持っていないんじゃないかな……?
常に強くなりたいんだけど、それは何か起こった時に平和を守るために鍛えているんだと思います。
悟空・ベジータから声優本人が受けた影響
──お二人が悟空やベジータから影響を受けた部分などはありますか?野沢 ……どうなのかしらねぇ。それは他人様が見て思うところであって、自分ではわからない部分ですから。
私は悟空ほど他人様のために一生懸命やる人間じゃないですけど、悟空に近い部分は持ってます。後輩が理不尽にイジメられたりしたら、私は「なんでイジメるんですか? 理由を聞かせてください」って出ていきますもん。そういうのは許せないです。
堀川 やっぱりただ“強い”を目指すんじゃなくて、世の中の平和を維持するために、我が身を犠牲にしてでも戦っていく、という資質があるんだと思いますよ。でも、そういった部分は、誰しもの中にあるんじゃないかな。
──ベジータがツンデレになっていくに連れ、堀川さん自身もツンデレになったりは?(笑)
堀川 僕はすぐヘラヘラしちゃうタイプなので、ツンデレにはなれっこない(笑)。僕は自分をツンデレじゃないと思っていますが、自分の中にどこかそういう部分はあるんでしょうね。だから、自分の中にあるツンデレの部分をちょっとデフォルメしたりして、なんとなく理解しようとはします。
人間、誰でも悪い部分もあれば良いところもあると思うんです。良いことをやりながら悪いことをしたりするし、悪い奴が悪行しかしないのか、といえばそういうわけでもない。人間って、そういうところが面白いのかなって。
野沢 良いところとちょっぴり悪いところは、人間誰しも持ってるもんね。
──それでは、お二人は演技者として長くご活躍されていますが、ご自身のキャリアにとって、悟空とベジータはどういう存在になるのでしょう?
野沢 今のところ、分身ですよね。もちろん、(役者として)悟空だけを演じていればいいわけじゃなくて、違う役の時はそっちに入らないといけない。でも、悟空との付き合いは長いので、悟空が来た時にはフッて入っていけるんです。
堀川 本当に、自分の一部。すべてではないかもしれないけど、間違いなく自分から来ているもの、自分自身だと思っています。ベジータほど強くはないですけど(笑)。
──ちなみに『ドラゴンボール超 ブロリー』で、監督と演技についてお話しすることもありましたか?
堀川 「こう演じてくれ」っていうのはあまりなくて。むしろ「思った通りにやってください」と言ってもらっています。それは、自分たちを信頼をしてくださっているのかな、って。
野沢 監督の意図と演技が違った場合は、言ってくれますよね。その考えが自分と違っていたらディスカッションになるんでしょうけど、そういうのはほとんどないです。
──それだけ、お二人自身が悟空とベジータになっている。
野沢 これだけ長くやってるのでね。
堀川 もちろん、別の作品の時には自分の中からベジータは消えてますよ。でも、やっぱりベジータは自分の一部だな、と思います。長くやらさせていただいてる作品の役ですしね。
──最後に、悟空とベジータはお二人にとっても代表的なキャラクターだと思います。一方で、今後、こんな役柄に挑戦してみたい! という希望などはありますか?
野沢 「こういった役柄」という希望はないんですけど……来た役は全部やりたいです!
堀川 僕もわりとそれに近いかもしれないな。みんな、僕をどう料理してくれるんだろう? って。
「今までにないかもしれないけど、こんな役をちょっとやってみてくれない?」と言われたら、やってみたいです。そんな興味や好奇心は尽きないですよね。そういう気持ちがなくなっちゃうとつまらないかなって思うので。
野沢 今日まで、悟空以外にもたくさんのキャラクターを自分なりに役に入り込んで演じさせていただきました。監督さんから「もっとこういうふうに演じてほしい」と言われたことがないので、今のところ(自分が感じている役柄と、監督が表現したい役柄)は一致しているのかなって。だから、これからもその感じでいきたいと思っています。
──『ドラゴンボール超 ブロリー』はもちろんのこと、今後の悟空とベジータ、そして野沢さんと堀川さんの活躍にも期待しています。本日はありがとうございました!
常に最強の、悟空とドラゴンボール
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