いまや「サイリウムダンス」という名前で国際的に親しまれるようになったこの文化は、2018年から世界大会が各国で行われるなど、次世代の日本のカルチャーとして注目を集めているのだ。
4月に開催された「ニコニコ超会議2019」でも、ペンライトの国内最大手企業である株式会社ルミカのサポートのもと「超ヲタ芸エリア」が登場した。
平成のインターネットカルチャーの一翼を担い、新たな才能たちとともに文化を更新し続けてきたニコニコ動画、のすべて(だいたい)を再現した「ニコニコ超会議」。その“平成最後の文化祭”にKAI-YOU編集部が潜入。
本稿では、サイリウムダンスの初心者向けレッスンやショーケース、DJタイムなどのパフォーマンスを交えながら、“ラスボス”こと小林幸子さんとGinyuforcEのスペシャルコラボライブに至るまで「超ヲタ芸エリア」の盛況をレポートしていく。
取材・文:ミーネ 編集:園田もなか 撮影:宮本七生
まずはみんなでヲタ芸/サイリウムダンスレッスン!
「ニコニコ超会議2019」では中村獅童さんと初音ミクによる「超歌舞伎」をはじめ、お坊さんがテクノ調でお経を唱える「超法要」やVTuberと握手を交わせる「超バーチャル握手会」など、ネットで反響を呼んできた世界がリアルに再現され、開幕と同時に大きな盛り上がりを見せていた。 その中でも多くの参加者が注目していたのが「超ヲタ芸エリア」。 エリア内に併設されたモニターからは三味線とギターの和ロックな曲とともに、ルミカの新CMが流れている。この映像には、アニソン業界では知らぬ人はいない天才シンガーソングライター・オーイシマサヨシさんも出演。 三味線ユニット・吉田兄弟が作曲、Tom-H@ckさんが編曲した曲「雷 -IKAZUCHI-」をバックに、サイリウムを刀で見立てたダンスが繰り広げられる(「雷 -IKAZUCHI-」はサイリウムダンスの世界大会「CYALUME DANCE WORLD BATTLE」のテーマソングでもある)。
三味線ならでは音色と重厚なギターサウンドが期待を煽る中、会場内のステージに「踊ってみた」動画で有名なゲッツさんとあぷりこっと*さんが司会として登場。最初のプログラムである「ヲタ芸レッスン」のスタートだ。
このプログラムは観客参加型で、初級編から始まり、CM編、中級編、上級編と回を分けてヲタ芸/サイリウムダンスをレクチャー。
初級編では、ヲタ芸/サイリウムダンスの創始者・GinyuforcE(元ギニュ~特戦隊)のギアさんとよしきさんが舞台上で、「ニーハイオーハイ」や「ロサンゼルス」「ロザリオ」といった基本的な技を自ら踊りながらレッスンした。 続くCM編では、「踊ってみた」カテゴリーで最も有名な踊り手であり、ダンスロックユニット「COJIRASE THE TRIP」のメンバーでもある仮面ライアー217さんとみうめさんが登場。
自身も出演するCMのダンスの振り付けレッスンが行われた。 観客席では小学生低学年の女の子から50代くらいの男性まで、さまざまな世代がステージ上の彼らにならって懸命にサイリウムを振っている。
通りすがりに「あ! これ絶対やりたい!」と輪の中に入る女性の学生2人組も。脇目も振らずサイリウムダンスに没頭する観客とともに、ブースは終始、周囲の人を惹きつける楽しげな雰囲気に包まれていた。
熱狂し続けるヲタ芸エリア
サイリウムダンスをゼロから学ぶプログラムもあれば、「ヲタ芸/サイリウムダンス ショーケース」のように最前線で活躍しているJKz、MishMoshのパフォーマンスを楽しめるステージも。ボーカロイド楽曲に合わせた全力でダイナミックなダンスは、観客たちの目は釘付けにしていた。 続くプログラムは「DJタイム」。教えられ、見せられれば、実際にやりたくなるのが人間の性。
一連のステージプログラムの中でも、集まった観客たちは特に異常な盛り上がりを見せていた。 キレのある動きでフロアを圧倒するものもいれば、破天荒な動きながらも満面の笑顔で踊る少年も。
サイリウムを掲げ、床にねっ転がり、叫ぶ──肉体的にも精神的に会場と一体となって音楽を楽しむ様子がヲタ芸エリアで繰り広げられていた。
クライマックスは、ラスボスが登場
ブースのボルテージは上がり続け、観客の足は途絶えない。それどころか、終盤に近づくにつれ、ブースは次第に混雑し始める。それには理由がある。なんと、その日のトリはニコニコ動画と「ニコニコ超会議」に欠かせない歌手・小林幸子さんだったのだ。
ボカロの名曲「脳漿炸裂ガール」をカヴァーした「脳漿炸裂バーサン」など、自身の大御所ポジションを逆手に取り、ニコニコ生放送内で「ラスボス」の愛称で親しまれている小林幸子さん。 昭和は演歌、平成はインターネットの世界で大活躍したラスボスが平成最後に選んだステージが「ヲタ芸エリア」。しかも今回はサイリウムダンスとのコラボとあって、会場は身動きが取れないほどの人で溢れかえった。
キャリア50年を超えてもなお新たなカルチャーと融合し、エンターテインメントを追求する姿勢に人は惹きつけられるのかもしれない。
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