“ひと休み”と聞いて、どんな行為を思い浮かべるだろうか。
コーヒーを飲む、甘いものを食べる、散歩をするなどなど、それぞれに気分を切り替える方法を持っているはず。その新たな選択肢として誕生したのが、“ブリージングデバイス”を謳う「ston(ストン)」だ。
深呼吸のサポートをコンセプトにした「ston」は、エナジードリンクでも電子タバコでもない。仕事や勉強、日常の合間に、深呼吸と共にカフェインやGABAを吸引して気分転換を図る次世代ワークサポートギアだ。
言うなれば、ひと休みをアップデートするデバイス。
そんな「ston」が今回、クリエイターと共に作業用BGMをテーマにしたアニメーションMVを制作。
映像はアニメーション作家の周憂さんが制作。作曲を担当したのは2003年生まれのシンガーソングライター・諭吉佳作/men(ゆきちかさくめん)さんだ。
諭吉佳作/menさんは、小学生時代から作曲をはじめ、2018年に開催された「未確認フェスティバル」で頭角を現したアーティスト。でんぱ組.incや早見沙織さんらへの楽曲提供や、崎山蒼志さん、長谷川白紙さんとの共作など、様々なフィールドで活躍している。
また、脚本家・坂元裕二さんの朗読劇に主題歌を提供したほか、アニメ『Artiswitch』で挿入歌を担当した経歴を持つ。
そんな諭吉佳作/menさんは、「ston」の企画をどのように捉え、楽曲を制作したのか。
取材の中で浮かんできた言葉へのこだわりや休息の取り方、さらに「アニメは絵だけで感動して号泣してしまう」というユニークなエピソードまで、次世代のアーティストの感性に迫った。
取材・文:太田祥暉 編集:恩田雄多
目次
諭吉佳作/menの曲づくり「能動的に聴き始めた音楽はボカロ曲」
──諭吉佳作/menさんは2023年10月、トイズファクトリーを離れフリーで活動されています。退所の発表に併せて、SoundCloud上で楽曲を発表されてからおよそ半年、現在の率直な心境はいかがですか?
諭吉佳作/men あまり楽曲をリリースできていないんですけど、ありがたいことにイベントのお誘いはいただいていて。楽曲制作も引き続き行っています。
それに今回のように、自分発でない楽曲というか、商品のPRに合わせた楽曲など、これからもやってみたいと思っています。
──そういう意味では、4月に公開した「ビス」のMVを、CGを使ってご自身で制作されていますね。
諭吉佳作/men 元々CGを使って何かをつくりたいと思っていたのですが、いざBlenderを始めたら一気にのめり込んでしまって、すごいスピードでMVをつくっていました。曲自体は高校生の頃につくったものだったんですけどね。
──「ビス」もそうですが、諭吉佳作/menさんの楽曲は、展開や音使いなど、ポップミュージックでありながら複雑性を持っていることが魅力の一つと考えていますが、楽曲制作の際に“複雑さ”について意識することはありますか?
諭吉佳作/men 自分の中では複雑にしようという意識はなくて、あまり大きい声で言うことではないんですけど、正直音楽のジャンルとかにも詳しくないので……。
──ということは、例えば「諭吉佳作/menさんの音楽はいわゆる“ポストロック”のように感じます」と言われても……?
諭吉佳作/men すみません、わかりません......(笑)。こういうインタビューで「こういった意識なんですか?」と聞かれて「はい、そうです」と答えたことはあまりないですね。
自分としては、すべての音楽が同じ地平にある中で、結構好きなようにつくってしまっています。それが、音楽ジャンルやコード理論などに詳しい人が聴くと「ここで切り替わった」「変則的に聴こえる」と感じることがあるのかもしれない……と自分では考えています(笑)。
諭吉佳作/men ただ、楽曲を面白くしようと考える中で、結果的に複雑になってしまうことはあると思います。自ら能動的に聴き始めた音楽がボカロ曲だったんです。
当時は小学生だったので、どこがどう良いとか考えてはなかったですけど、ボカロ曲の難解さや複雑さの影響は、確実にあると思います。
諭吉佳作/menが使える言葉と、使えない言葉
──楽曲制作でいうと、諭吉佳作/menさんはこれまで、でんぱ組.incや根本凪さん、早見沙織さんなど、他のアーティストにも楽曲を提供されてきました。制作面で自身の楽曲とどのような違いがありますか?
諭吉佳作/men まず、お相手の方からテーマを投げていただくこともあるので、出発点から違いがあるのですが、自分でない方が歌うときは、その人となりや歌声のことを考えながらつくるようにしています。
歌詞であれば、諭吉佳作/menだと使えないワードでも、他のアーティストさんなら、その人の力やキャラクター性によって使えることがあります。
──使えるワードと使えないワードがある?
諭吉佳作/men 極端な話ですけど、例えば「頑張れ」というワードは、自分一人では歌いづらいと思っているんです。
もちろん頭の中の辞書に「頑張れ」というワードはあるし、そういう気持ちがないわけじゃないんですよ! ただ、自分が歌っても言葉通り前向きなメッセージとして届けられないんじゃないかと考えていて。
でも、パワフルなアイドルさんが多人数でパフォーマンスしながら歌う「がんばれ」なら、説得力が出ると思うんです。なので、その人に合う言葉かどうかも重要視しながら曲をつくっています。
と言いつつも、自分の声にどんな言葉が合うのかはまだわかっていないんですけど。
──お話を聞いていると、諭吉佳作/menさんは“言葉”に対して一家言お持ちだと感じました。
諭吉佳作/men 言葉へのこだわりは正直あると思います。生活の中では、例えばテレビを見ていても、言い間違いなどは耳に残ってしまいますね。文章を書くのも読むのも好きで、「この表現素敵だな」とか「この言い回し気になるな」とか、つい気になってしまいますね。
一方で、歌詞はある程度文章の制約から自由になっている媒体だと思うんです。文法が一般的なものと違っても、そこが味になることもある。
小学生の頃から文章を書くこと、例えば作文も好きでしたし、曲にするつもりがなかったときも、紙に歌詞みたいなものを書いていたんです。そういう意味でも、言葉の面白さにずっと取り付かれているかもしれません。
──2019年から始めたブログに「はてなブログ」を使っているのも、文章を書く上でのこだわりがあるのでしょうか?
諭吉佳作/men 「はてなブログ」は無骨なデザインがかっこいいんですよね(笑)。今考えてみると、なんでだろうとも思いますけど、当時は「はてな」という言葉にも感覚的に惹かれた記憶があります。
──ちなみに、ご自身の歌唱とも楽曲提供とも異なる、崎山蒼志さんや長谷川白紙さんとのコラボレーション楽曲は、どのような立ち位置で制作されたのでしょうか。
諭吉佳作/men 例えば崎山さんとの楽曲「むげん・」は、メロディと歌詞だけのデモを送り合って、楽曲にまとめ、自分が編曲をして、崎山さんにギターを弾いていただく、という流れだったんです。
諭吉佳作/men 長谷川さんとの作品「巣食いのて」は、自分は引っ張ってもらった印象が強いですね。そういう形で、個々の楽曲でつくり方はかなり変わってきます。
コメントは削除されました
削除されました