戦極MCバトルとDOTAMAが突撃インタビュー! ラノベ『韻が織り成す召喚魔法』の魅力

ラップを文章で表現する難しさ

真代屋秀晃さん

──実際に読まれてみて気になった点もいっぱいあるんじゃないですか。

MC正社員 やっぱりリリックですね。ヤバい韻がたくさんあって、特に「生徒会長、ゲート解放」とか(笑)。リリックはどうやって書いたんですか?

真代屋 ラップといえば、やっぱり皆さん韻を踏む、ということを想像するじゃないですか。でもラップってフリースタイルに限らず、ラッパーさんの歌い方、いわゆるフロウがあってこそ完成するものだと思います。

でもラップを文章で表現するときに最初につまずいたのが、韻を踏んでいることが読者に伝わりにくいという問題。たとえば、「ビートを連打、プチョヘンザ」とラップしたとします。

ラッパーさんがラップして音として聞くとがっちりハマっててかっこいいんですけど、これを文章にすると「ビートを連打、put your hands up」になるわけじゃないですか。そうすると読者はここで、「あれ、これはどこで韻を踏んでるんだろう」って1回止まってしまう。

僕はMCバトルをテーマにする上で、読者が読んでいる時に止まってしまうと負けだと思っていて、一目見ただけで韻を踏んでるということがわかって、頭の中に音として入っていくのが理想だと考えています。

だから本当にリリックを書くのはかなり苦労しましたね。3行のリリックを書くだけで何日も費やしたり、書き上げても担当の編集さんに「パンチラインが足りない」って突き返されたりすることもありました(笑)。

DOTAMA 読んでいて、その点はすごい意識されてるんだろうなって思いました。カタカナが多かったりして、頭に音として入ってくるように書かれてる工夫を感じました。

MC正社員 よくラッパーは、韻を踏むことだけがラップじゃないって言うんですけど、ラップを表現する上で一般の方にもわかりやすいのはやっぱり韻なんですよ。

でもマンガとかライトノベルで韻を文章で表現するのは実際すごく難しいし、それはできないんだろうなって思ってました。

だからこそ、この小説が話題になったということもあると思うし、今のお話を聞くと、凄く計算されて書かれてることがわかった。実際にこのラノベではラップがちゃんと表現できていると思います。僕なんて、読んでる最中にたまにR指定の声で聞こえてきましたよ(笑)。

DOTAMA そうそう! 「ここからはじまる黙示録、悪人どもを即死末」とかRくんが踏みそう(笑)。 真代屋さんの中で、音川くんのラップはラッパーの○○さんみたいなイメージはあるんですか?

真代屋 やっぱりさっきも言ったように特定のラッパーさんのフロウで韻を完成させてしまうようなラップは読者に伝わりづらいので、そういったイメージは全くありませんね。

MCバトルの本質を捉えている

主人公の音川真一 サタニックマイクによって思いの強いライムが召喚されて具現化する

DOTAMA  リリックに関して言えば、歌ったライムの思いが強ければ強いほど、そのラップが可視化されるというアイディアは、真代屋さんが意識されている、一目読んだ時に頭にすんなり入ってくる補助的な役割にもなるし、僕らが戦いを面白くしようとして使う、言い回しや固有名詞を使った例えの究極の形でとても面白いです。

僕らは8小節4本勝負とかでバトルをしますが、その間にどれだけ自分の主張ができて、かつ、即興の内容でどれだけお客さんを湧かせられるかが勝負になります。

ラップの内容は実は意外とシンプルで、「俺は今お前に対してこう思ってる」とか「俺はこういう気持ちで戦いに臨んでる」とか、ある意味自分の身の上話でもあって会話なんですね。そこで見てる人を熱くさせるには、即興性と技術があり、言葉にどれだけ自分の思いが込められているかによって変わってくるんですよ。

上手くてもただ言葉遊びをしてるだけじゃ心には響かないし、あまり面白くない。だからこの小説の思いが強くないとライムが具現化されない、という要素はMCバトルの本質を捉えていて、本当にすばらしいアイディアだと思いました。

MC正社員 僕は前々からMCバトルは格闘ゲームに似ていると思ってたんですよ。だからライムで召喚された物体が相手を攻撃をするという設定に度肝を抜かれました。

真代屋 僕も格闘ゲームに似てるとはちょっと思ってました。2巻のサブタイトルは「クレイジー・マネーウォーズ」なんですけど、貧乏な環境で育った少女が2本目のサタニックマイクを持って登場します。

このマイクは、MCバトルでお金を奪い合うマイクで、勝つと相手のお金を取る事ができます。しかもバトル中は、持っているお金が数字で可視化されていたり、2巻では格闘ゲームの要素がより強くなっています。

MC正社員 ヤバい、めちゃくちゃ面白そうですね。以前僕も良かったMCにお金を投げ込んで、その金額で勝敗を決めるバトルを考えたことがありました(笑)。

DOTAMA 持たざる者がマイクを使ってゲットマネーのために戦う、というお話もラップソング王道のテーマが取り入れられていていいですね。

【次のページ】MCバトルを流行らせるにはライトノベルしかない
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