模型専門誌『月刊モデルグラフィックス』の副編集長から、ホビーメーカー・有限会社マックスファクトリーに転職。プライベートでは秋葉原のクラブ・MOGRAなどでイベントを主催するDJとしても活動する、異色のマルチクリエーター&フォトグラファーのからぱたさん。
現在、村上隆さん率いるカイカイキキが運営するギャラリー・Hidari Zingaroにて、初の写真展「LOVE WILL GUIDE YOU」が開催されており、連日アマチュア写真家の方々を中心に多くの観客を吸引している。
今回は同展の初日に緊急開催された、トークショーの模様を一挙掲載! 30分の予定時間を大きく越えて交わされた議論からは、Twitterで炎上しかけながらも、既存の写真シーンへの違和感を表明し続けるからぱたさんの真意と、村上さんが感じる彼の魅力が詰まっていた。
ぜひ同展に訪れる前に、観客を大いに湧かせたトークの内容を読んでみてもらいたい。
からぱた だからこそ、Twitterで僕のツイートに対して、ブレさせるような議論を展開されてたわけですね。それでブレる程度のものなのかどうか、測っていたと。
村上 よかったと思ったのが展示会前日にTwitterで書いてたこと。
からぱた 僕はもともと雑誌の編集をしていて、何かをやりたいのに色々言い訳をつけてやらないままにしておく人がこの世の中にはたくさんいるなあと感じていました。これはどのジャンルにも言えることで、そこに怒りのような感情を持っていたんです。
本当はもっと多くの人に見てもらいたいのに、アクションを起こさない人が多い。そんな状況を変えたり、ひっぱり上げることができないものかと思って自主制作で写真集をつくることを始めたのがきっかけですね。
村上 まだシーンにはなってないけど、おもしろい土壌はあって、それをフックアップしたいっていう気持ちなわけですね。
からぱた そうですね。昨日、夢見心地でここに写真を並べた光景を見ていたんですが、展示した写真は僕がたまたま転職の間に1ヶ月旅行に行って、たまたま出会った風景を撮影して、プリントして展示をしたものです。
でも次に何かやるとしたら、まず撮る対象から吟味しなければいけない。また、しっかり額装して人様に見せられる状態にする、というのはお金も時間もものすごくかかります。それをどのような覚悟で自分はできるのか、ってことを考え始めています。なのでこの展示では……
村上 そういう話じゃなくってさ、ほら、Twitterで吠えてたみたいにもっと文句言ってよ! それをみんな楽しみにしてるのに、からぱたさんの夢とか未来の話をされてもねえ……。
からぱた あっ、はい。ドヤ顔で一気に話して、僕アホみたいですね(笑)。 村上 僕は、人生の岐路みたいなのに立ち会うのが好きなんです。映画『永遠の0』を観た人っています? あれ、ほとんどいないや、この会場には。まあ、いいや……。劇中ヤクザの親分が、自分の人生経験を話した後で男の子の肩を抱いて「俺は若い男が好きでね」って言うんですよ。
僕もそんな感覚で、若いアーティストが好きなんです。自分の手元にある作品や技術、思考の幼稚さを全く顧みず、未来にリーチをかけるのは俺しかいないと感じている作家。これが僕は好きなんです。そして、からぱたさんっていうのは、日本では非常に不幸な人種なんですよ。
からぱた え、僕不幸だったんですか……!?
村上 そうじゃないかな。大学では何を専攻してたんだっけ?
からぱた 美術史ですね。縮小彫刻を研究してました。紀元前の中国から彩色されたミニチュアというものがあって、それが今のプラモデルやジオラマにつながるわけですが、その歴史を研究してました。
村上 例えばアメリカやイギリスだと、研究者を支援する基金やファウンデーションがあって、年間600万円くらいの支援をするフォーマットがある。でも日本にはあまりありません。からぱたさんはアカデミックな知識を持って、模型誌の編集者になった。
研究者としてのチョイスがあったら、そっち行ってたかも、ぐらいにけっこう賢い。その賢さを、どうやって雑誌を売れるようにするか、ブームをつくれるかってことを画策し、実証し、導くことに使ってきたのです。賢いんですよ!
からぱた ありがとうございます!
村上 そういう知の背景があって、で、つくってる作品は言ってしまえばただの観光写真ですよ! それをプリントして世の中に文句を言っているって、何か裏があるんじゃないかと思うわけです。そこを聞きたいわけですよ!
それを知ることで、作品につけられた値段の感覚もわかると思う。作家がプレゼンテーションする中で3回くらい溜飲が下がると、人って作品を買うんです。するとそこで初めて作品としての価値が生まれるわけです。
【次のページ】原動力はシーンへの憤りと音楽へのコンプレックス
現在、村上隆さん率いるカイカイキキが運営するギャラリー・Hidari Zingaroにて、初の写真展「LOVE WILL GUIDE YOU」が開催されており、連日アマチュア写真家の方々を中心に多くの観客を吸引している。
今回は同展の初日に緊急開催された、トークショーの模様を一挙掲載! 30分の予定時間を大きく越えて交わされた議論からは、Twitterで炎上しかけながらも、既存の写真シーンへの違和感を表明し続けるからぱたさんの真意と、村上さんが感じる彼の魅力が詰まっていた。
ぜひ同展に訪れる前に、観客を大いに湧かせたトークの内容を読んでみてもらいたい。
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村上 僕としては、からぱたさんが考えている「写真とは何か」という問いや、今回の作品展のテーマより大事なことがあるんです。からぱたさんが現状の写真シーン対して、憤りがあるということ。つまりご自身の仕事に自信を持っておられることに興味がありました。主催する側として作家本人のビジョンがあって、そこに向かって邁進しているブレてない感が1番重要なんです。からぱた だからこそ、Twitterで僕のツイートに対して、ブレさせるような議論を展開されてたわけですね。それでブレる程度のものなのかどうか、測っていたと。
村上 よかったと思ったのが展示会前日にTwitterで書いてたこと。
これから写真展だっつうのにアレですけど、ますます次のシリーズを撮らないといけませんねぇ
— からぱた #花粉症 (@kalapattar) 2014, 4月 23
今ここに並んでる作品は過去のものであって、ビジョンはしっかりと未来に向かっていると思えたんです。そういう部分も踏まえて、どうしてからぱたさんが写真業界に強い憤りを感じているのかをまず聞いてみたいと思います。からぱた 僕はもともと雑誌の編集をしていて、何かをやりたいのに色々言い訳をつけてやらないままにしておく人がこの世の中にはたくさんいるなあと感じていました。これはどのジャンルにも言えることで、そこに怒りのような感情を持っていたんです。
本当はもっと多くの人に見てもらいたいのに、アクションを起こさない人が多い。そんな状況を変えたり、ひっぱり上げることができないものかと思って自主制作で写真集をつくることを始めたのがきっかけですね。
村上 まだシーンにはなってないけど、おもしろい土壌はあって、それをフックアップしたいっていう気持ちなわけですね。
からぱた そうですね。昨日、夢見心地でここに写真を並べた光景を見ていたんですが、展示した写真は僕がたまたま転職の間に1ヶ月旅行に行って、たまたま出会った風景を撮影して、プリントして展示をしたものです。
でも次に何かやるとしたら、まず撮る対象から吟味しなければいけない。また、しっかり額装して人様に見せられる状態にする、というのはお金も時間もものすごくかかります。それをどのような覚悟で自分はできるのか、ってことを考え始めています。なのでこの展示では……
村上 そういう話じゃなくってさ、ほら、Twitterで吠えてたみたいにもっと文句言ってよ! それをみんな楽しみにしてるのに、からぱたさんの夢とか未来の話をされてもねえ……。
からぱた あっ、はい。ドヤ顔で一気に話して、僕アホみたいですね(笑)。 村上 僕は、人生の岐路みたいなのに立ち会うのが好きなんです。映画『永遠の0』を観た人っています? あれ、ほとんどいないや、この会場には。まあ、いいや……。劇中ヤクザの親分が、自分の人生経験を話した後で男の子の肩を抱いて「俺は若い男が好きでね」って言うんですよ。
僕もそんな感覚で、若いアーティストが好きなんです。自分の手元にある作品や技術、思考の幼稚さを全く顧みず、未来にリーチをかけるのは俺しかいないと感じている作家。これが僕は好きなんです。そして、からぱたさんっていうのは、日本では非常に不幸な人種なんですよ。
からぱた え、僕不幸だったんですか……!?
村上 そうじゃないかな。大学では何を専攻してたんだっけ?
からぱた 美術史ですね。縮小彫刻を研究してました。紀元前の中国から彩色されたミニチュアというものがあって、それが今のプラモデルやジオラマにつながるわけですが、その歴史を研究してました。
村上 例えばアメリカやイギリスだと、研究者を支援する基金やファウンデーションがあって、年間600万円くらいの支援をするフォーマットがある。でも日本にはあまりありません。からぱたさんはアカデミックな知識を持って、模型誌の編集者になった。
研究者としてのチョイスがあったら、そっち行ってたかも、ぐらいにけっこう賢い。その賢さを、どうやって雑誌を売れるようにするか、ブームをつくれるかってことを画策し、実証し、導くことに使ってきたのです。賢いんですよ!
からぱた ありがとうございます!
村上 そういう知の背景があって、で、つくってる作品は言ってしまえばただの観光写真ですよ! それをプリントして世の中に文句を言っているって、何か裏があるんじゃないかと思うわけです。そこを聞きたいわけですよ!
それを知ることで、作品につけられた値段の感覚もわかると思う。作家がプレゼンテーションする中で3回くらい溜飲が下がると、人って作品を買うんです。するとそこで初めて作品としての価値が生まれるわけです。
【次のページ】原動力はシーンへの憤りと音楽へのコンプレックス
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