大辞泉

小学館の国語辞典『大辞泉』編集部は、コトバの日（5月18日）を記念して、日本人が過去1年間にネット辞書で調べた言葉のランキングを発表しました。現代人にとってインターネットは欠かせないものですが、言葉の意味を調べるツールとしてもネット辞書が主流なようです。人に聞くのが恥ずかしい言葉や、手っ取り早く意味を知りたい言葉はネットで検索する習慣が身についているのかもしれません。

では、さっそく結果を見てみましょう！

1位進捗（しんちょく）
2位瑕疵（かし）
3位遵守（じゅんしゅ）
4位謹啓（きんけい）
5位留意（りゅうい）
6位約款（やっかん）
7位寸志（すんし）
8位邁進（まいしん）
9位意義（いぎ）
10位出自（しゅつじ）

う～ん、私の普段の生活とはかけ離れた言葉ばかりが並んでいます。これらの言葉はどのようなシチュエーションで使われるのでしょうか。さっそく、「デジタル大辞泉」で調べてみました。

1位進捗（しんちょく）
［名］(スル)物事がはかどること。「工事の―状況」「仕事が―する」

これは仕事を頑張る日本人の姿を想像させる言葉ですね。物事が順調に進むように努力する光景が窺い知れます。

2位瑕疵（かし）
1 きず。欠点。また、過失。
2 法律上、何らかの欠点や欠陥のあること。

カシッテナンデスカ？　という感じですが、『大辞泉』編集部は「まさに“ものづくりの国”日本を象徴するような言葉」と表現しています。ちなみに“瑕疵担保責任”とは売買の対象物に隠れた瑕疵(=外部から容易に発見できない欠陥)がある場合、売主が買主に対してその責任を負うこととのこと。

3位遵守（じゅんしゅ）
［名］(スル)法律や道徳・習慣を守り、従うこと。循守。

ここでも日本人の真面目さが表れています！　規則や法律を遵守するというのはもちろん、「古い伝統を遵守する」といった使い方もしてみたいものです。

4位以下の意味はこちらです。

4位謹啓（きんけい）
つつしんで申し上げること。手紙の最初に書くあいさつの語。「拝啓」よりも敬意が高い。「敬白」「謹言」で結ぶ。

5位留意（りゅうい）
［名］(スル)ある物事に心をとどめて、気をつけること。「健康に―する」「―点」

6位約款（やっかん）
1 条約・契約などに定められている個々の条項。「条約の―に違反する」
2 保険や運送など不特定多数の利用者との契約を処理するため、あらかじめ定型的に定められた契約条項。保険約款・運送約款など。

7位寸志（すんし）
1 少しばかりの志。自分の志をへりくだっていう語。「―を表す」
2 心ばかりの贈り物。自分の贈り物をへりくだっていう語。贈り物ののし紙の上などに書かれる。
3 わずかなさしさわりや不満。「どうだ、―はあるめえね」〈総生寛・西洋道中膝栗毛〉

8位邁進（まいしん）
［名］(スル)恐れることなく突き進むこと。「学問に―する」「勇往―」

9位意義（いぎ）
1 言葉によって表される意味・内容。「その語の本来の―」
2 その事柄にふさわしい価値。値うち。「―ある生活」

10位出自（しゅつじ）
1 人の、生まれ。事物の出どころなどにもいう。「蕪村の―を尋ねる」
2 文化人類学で、個人が出生と同時に組み込まれる、特定の祖先を共通にする集団を決定する原理。

以上が1位から10位の結果です。全体的にビジネスの現場で使われていそうな言葉が多いような気がします。どことなくお堅い言葉が多い傾向にあるのですが、社会人になったらこのような言葉を使う機会も増えるのでしょうか。ちなみに私はこの中の言葉を一つも使ったことがありません。
………ということで、これを機に使ってみたいと思います。

謹啓
立夏の候、皆様お元気にお過ごしと存じます。本日は日ごろのご指導に感謝し心ばかりの品をお送り致しました。寸志ですがお受け取りください。
さて、私はもと華族の出自ということで古い伝統を遵守することに意義を見出し、日々邁進してまいりました。先日お話しした交渉の件も幸い進捗しております。また、条約の約款については瑕疵のないように留意しておりますのでご安心ください。
何かとご多用とは存じますが、くれぐれもご無理などなさらないようご自愛ください。

謹白

このような使い方で合っているのでしょうか。それにしても、私の口からこのような言葉が出てきたらみんな驚くことと思います。でも、こういった言葉を使いこなせたら、究極の日本人の心に到達できる気がしてきました。みなさんも、たまには辞書を引かないとわからない言葉を使ってみてはいかがでしょうか？