「男子よ、BLは堂々と観ていい!なぜなら…」芸人最強のアニメ好き ハライチ・岩井勇気の持論

「男子よ、BLは堂々と観ていい!なぜなら…」芸人最強のアニメ好き ハライチ・岩井勇気の持論
「男子よ、BLは堂々と観ていい!なぜなら…」芸人最強のアニメ好き ハライチ・岩井勇気の持論
「アニメが好きだ」と公言する芸能人やタレントが増えた。その気持ちに偽りはないと信じても、熱中する度合いにおいて、彼に勝る人は早々いないだろう。お笑いコンビ「ハライチ」の岩井勇気さんだ。

本業のお笑いでは「M-1グランプリ」のファイナリストである実績を持ち、テレビ/ラジオ番組の出演やイベントMCなどで多忙な日々を送る。

その一方、ニコニコ生放送では『ハライチ岩井勇気のアニ番』を主催し、放映中のアニメ全作品を鑑賞してレビューを届ける。自身のTwitterでも出演番組の告知だけでなく、アニメやスマホゲームの話をよくツイートする。 あるいは、テレビ番組『ナカイの窓』に出演した姿を思い浮かべる人もいるだろうか。ファンを公言する『うたの☆プリンスさまっ♪』の推しキャラである一十木音也モデルのパーカーを着込み、BLやアニメの魅力を熱く語る様が印象的だった。

番組中では「ドラマや三次元の恋愛は、不倫や略奪愛などが多く、煮詰まりすぎている。でも、それ(ではない恋愛)を純粋に今やっているのがBLアニメ」といった名言を残し、Twitterでは多くの支持が集まった。

ただ、これまでに岩井さんの「アニメ愛」にフォーカスしたインタビューは数少ない。何が彼をアニメに向かわせ、男性でありながらBLにハマらせるのか。そこには純粋な気持ちがあり、その鑑賞スタイルや考えには、僕らもアニメをもっと楽しめるヒントがある。

動画配信サービス『アニメイトチャンネル』1周年記念特番後の岩井さんに楽屋で話を聞いた。

取材・文:長谷川賢人 写真:長谷川賢人、川野優希

1クール30本完走!『巌窟王』で形作られたアニメ好きの魂

──『ハライチ岩井勇気のアニ番』で放映中アニメのランキング付けもなさっていますが、ふだんはどれくらいアニメを観ていますか。

岩井勇気(以下、岩井) 放映中のものは、3話ぐらいまで全部見ていますね。最終的に1クールで40本ぐらい始まるのかな? 結局はあんまり切ってないから、25本から30本ぐらいは全話見ちゃう。夜に家で観るんですけど、最近は「寝よう」と思って寝てないですよ。毎日寝落ちしてる(笑)。

──番組でトークする使命感もあるとは思いますが、やはり「観たい」という好奇心が大きいですか?

岩井 そうですね。リアルタイムで面白いアニメを見逃すのが嫌になってきちゃってる。「この瞬間の何が面白かった、流行っていた」みたいな熱量って、リアルタイムでないと体感できないじゃないですか。後から一気見するのでは得られない。「高校生のときに『巌窟王』にハマって毎週観てた」みたいな感じをなくしたくないんです。

──『巌窟王』といえば2004年の作品ですね。そもそも岩井さんがアニメ好きになったのはいつ頃からなんでしょうか。

岩井 小学校5、6年生くらいかな。親父がサッカーのコーチで、俺もサッカーをやっていたんですけど、当時はJリーグが盛り上がっていてテレビ中継があったから、みんなが『ドラゴンボール』か何かを観ている「水曜7時」枠は、サッカーを観ないといけない時間だった。

それで友達の話についていけないのがすごいフラストレーションで、小学校高学年になって爆発したんです。サッカーの練習へ行く前に朝アニメを観たり、深夜アニメなども観るようになりましたね。

それこそ『ドラゴンボール』だけじゃなくて、『おジャ魔女どれみ』『夢のクレヨン王国』『明日のナージャ』とかも。妹がいたから家に『りぼん』があって、それも読んでました。当時は『神風怪盗ジャンヌ』や『ケロケロちゃいむ』の頃かな。

中学校ではサッカー部ではなくて浦和にあるクラブチームに所属したので、乗り換えの大宮駅にあるアニメイトに毎回寄って「なんかグッズ増えてないかなー」みたいのを確認したりはしていました。

──私も吉祥寺のアニメイトによく行ってたの思い出しました。下敷きとか買って。

岩井 買ってました、僕も。筆箱に付けるキーホルダーとか。あと、中学生のときはラノベにもハマってて。上遠野浩平先生の『ブギーポップは笑わない』がアニメ化したから、親にバレないようにビデオに撮って……。

──そんな生活の中で、高校生の頃に『巌窟王』と出会うわけですね。

岩井 めちゃくちゃハマってましたね。24話全部見て、ビデオにも全部撮ってた。『巌窟王』は内容の面白さはもちろん、貼り絵みたいな技法を使っていたのがめっちゃ新鮮だった。あと、今思い返したら『巌窟王』もBLなんですよね。

誰にもあるはずの「男の子にキャーキャー言いたい願望」

岩井 主人公をかばって死んでしまうフランツというキャラクターがいて、実は主人公のことがめちゃくちゃ好きだったというのが後々明らかになるんです。しかも、フランツにはすごく良い子の許嫁がいるのに、主人公が好きだから彼女を好きになりきれないという。それは衝撃的でしたね。「はー?男と男だよな?」って。

BL要素のある作品を地上波で放送しているケースはそこまでなかったと思うし、「アニメってこんなことまでやれるのか」と、カルチャーショックみたいなものがありました。

──そこで、岩井さんが後にハマっていくBLに対しても壁がなくなった?

岩井 単純にBLがどうのこうのと言うよりも、もうアニメが好きすぎて、アニメを観たい気持ちが内容に勝ったのかもしれないです(笑)。男の子だけが出てくるアニメって、やっぱり男にとっては抵抗あるじゃないですか。

でも、俺はけっこう雑食なんで、とりあえずそういうのを偏見なしに全部観てみたら、「なんだ、別に内容も面白いじゃん」となって。『純情ロマンチカ』にハマって、『うたの☆プリンスさまっ♪』も観て、そこから壁はなくなりましたね。

──BLや男性声優を観ているとき、岩井さんはどういったメンタリティなのでしょう。

岩井 たとえば、ジャニーズのライブにも男性って絶対いるじゃないですか。それって、別に俺もああいうふうになりたいから現場に通っているわけでは必ずしもなくて、きっと「かっこいい!なんか憧れるなー」くらいの感じのはず。俺もそれと似てるかもしれないです。俺にないものを持っている人の姿を観ていたいし、声を聞いていたい。

だから性的に萌えるとかいうことじゃなくて。韓流スターにめっちゃ熱くなってるおばさまたちも、必ずしもヨン様と恋愛したいわけじゃないのに近いんですかね(笑)。

俺の中で、女子って「男の子にキャーキャー言いたい願望」があると思うんです。いかにもカッコイイ感じのアイドルにもそうですし、あとはかっこつけてる芸人にも女子はキャーキャー言う(笑)。それで、声優さんに対しては、俺にも内なる「男の子にキャーキャー言いたい願望」があって、それをちょっとずつ最近は爆発させてるのかもな、と。

アニメ好きじゃない人からの「男なのに男が好きなの?」は気にしなくていい

──ある種、それが表れたかたちが、男性声優たちとコラボしたCD制作にもつながっていますか? 岩井 CDを作ったのは、男性アイドルユニットものとか、男の子がいろいろ出てくる乙女ゲーみたいなものも好きだから、そこに自分的な要素を入れられないかなと思ったんですよ。それで「ゲスっぽい男を加えたらいいんじゃないか」と。

意外と現代の女子って、ノーマル男子やピュアな男子は全然好きじゃないみたいなんです。

最近、『クズの本懐』を観ている人たちと話したのが、あの中で一番モテない男子って、本当に悪意のないお兄ちゃん(鐘井鳴海)だなって。茜さんのことを真っすぐに想っているのにモテない。今は、やっぱりちょっと難がある……癖があるキャラクターでないと萌えらんない世の中になっているらしい。

──それで『ゲスおと☆』のキャラクターが決まっていったと。サンプルを聞いたんですが妙にドキドキしました。

岩井 演技がすごすぎるから、男でもドキドキしちゃうんです。

──もしかして、知らないだけでこういう感覚はみんな抱けるのかと思いました。そのきっかけを岩井さんは作ろうとしているのかもしれない、と。

岩井 そうですね。そうかもしれないです。別に男子とどうなりたいってわけじゃないですけど、自分が男子ということを忘れて、フラットに「この男性かっこいい」って感じになってくるのかな。俺はかなりニュートラルな位置から楽しく見られているから……それを共有したいじゃないですけど、「教えたい!」みたいな気持ちはありますね。 ──BLとも違いますが、Twitterで『君に届け』は何週したかわからないくらいだそうですね。

岩井 あれはもう何回でも観られるんですよ、本当に。観ながらセリフを一緒に言ってますもんね。もう覚えてるから。

──岩井さんは『君に届け』で、ヒロインの爽子か、あるいは男子の風早くんか、どちらに感情移入していますか?

岩井 3周目ぐらいまでは爽子を「こんなにかわいらしい女の子がいるのか!」って思っていたけど、最近は「風早くんがカワイイ」のほうに移った(笑)。もう風早くんめちゃめちゃかわいい。「これは風早くんかわいいアニメだな」という結論になりました。

──ニュートラルであるからこそ楽しめる作品は増えるのだと、岩井さんのスタンスを聞いて感じます。今日のアニメイトチャンネルの放送でも『マジきゅん』の声優陣と共演されることで、アニメ版を事前にもう1周してくるほど楽しみだったそうですね。実際にお会いしてみていかがでした?

岩井 小野友樹さんはお会いしたこともあるのに、「今日は凛太郎として来ているな」と思いながら会うと、俺の感覚もちょっと違いました。小野さんがそこに立っているのに、見えているのは凛太郎だから、どこか「はじめまして」みたいな感じ(笑)。声優さんに関しては、やっぱり2次元キャラクターに変換しちゃうところはありますね。

たまに思うんですけど、あくまで俺はアニメが好きなんです。たとえば、俺がアニメの男子キャラクターを好きだって口にすると、アニメを全然好きじゃない人が「お前それ男子じゃん。男なのに男が好きなのか」とか言ってくるじゃないですか。

でも、アニメのキャラクターに対して「男子じゃん」と言う人のほうが、2次元と3次元をごっちゃに捉えていないか?って最近はよく思うんですよ。俺は全然、現実の男性は好きなわけじゃないですから。

──それはすごくわかりやすいです。「男の子にキャーキャー言いたい願望」もあり、そのキャラクターが好きだというだけで、現実とはまったく関係がない切り離された存在ですものね。

岩井 ジャニーズライブに行っている男の人に「ゲイなんですか?」って聞いたら、「何を言ってるんですか?」って返されると思うんです。それと同じことです(笑)。

──そう思っていれば、男性がBLや男性声優を楽しむ抵抗感は少なくなりそうですよね。

岩井 たぶん全然気にする必要はないですよ。俺の中ではそう思って作品も観ていますね。

見方を変えれば、人生はもっと楽しい。

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