どんな業界にも、わずかながら革命児と呼ばれる人が現れる。既存の枠組みや文脈とはまた違った場所から頭角をあらわすその人たちは、古い慣習を良しとせず、ある種多くの敵をつくりながらも信念を曲げずに、正しいと思ったことを証明するために動き続ける。

今回、KAI-YOU.netではファッション/アパレルの分野の革命児・石川涼さんへのインタビューを敢行した。

石川涼さんは、株式会社せーの代表取締役にして、ファッションブランド「VANQUISH」を創設。渋谷109メンズフロア等で圧倒的な人気を誇るブランドとなるほか、近年では新たにブランド「FR2」を立ち上げる。

Instagramのアカウントにそのブランディングの大きな部分を委ねる「FR2」は、アイコンとして「ウサギのカメラマン」がそえられ、なぜかTバック姿の美女のきわどい写真が数多くアップされている……。

なぜ美女のTバックなのだろうか? そして一見すると「オラオラ系」に見られがちな石川さんだが、その行動原理は、確固たる思想に基づいているようだった。「ファッションブランドは終わる」と語る石川涼さんだが、情報革命(あるいはInstagram)以後の「ブランド」という概念について深く語っていただいた。

(取材/構成 米村智水)

写真中心の社会を捉えたブランド「FR2」の正体

──「FR2」のウサギのカメラマンは石川さん自身なのではという噂があったんですけが、それって本当なんでしょうか?

石川涼(以下、石川) そこは内緒なんですよ。いや別にいいんだけど(笑)。狙いっていうか、誰でも良くて、最終的に誰か分かんなくなっちゃうみたいなところを目標にしてる。世界中でFR2って名前を使うやつが出てくる状況にしたいんです。誰でもエロい写真に「#FR2」ってタグ付けたらFR2になれるっていう。

──「FR2」はカメラマンの名前であると同時にブランド名です。これまで石川さんは「VANQUISH」をはじめ、様々なブランドを立ち上げられてきました。そんな中、新しく「FR2」を立ち上げられた理由は?

石川 「FR2」は2015年に立ち上げたんだけど、この時代、何かに紐付いている服しか売れないなと思って。例えば「キャンプに行く服」とか「釣りに行く服」みたいに明確な「目的」がないと洋服を買う意味が感じれなくなってきている。そこで、ただの洋服だともうきついから、カメラマンが着る服っていうコンセプトがある。それがないとUNIQLOでいい。

──それは「VANQUISH」を立ち上げて以後の感覚ですか?

石川 そうですね。ここ数年でそういう傾向がより強くなってきた。実際にいま手がけているブランドの中でも「FR2」はめっちゃくちゃ売上が伸びてる。前年比800%くらい。


──「VANQUISH」との明確な違いはありますか? 狙ってるターゲット層など。

石川 うーん、正直あんまり考えてない。そもそもなんでカメラマンに向けた服をつくろうかと思ったかというと、世界が写真中心のコミュニケーションになってると思ったから。たぶん、5年くらい前──Facebookが日本で一気に広がりはじめた頃から「写真中心の社会になる」と漠然と思って、それは間違いないものになってきている。

だから俺もカメラをはじめて。みんながiPhoneの写真をアップするとなると、基本的には同じクオリティなんだよね。だから誰が見ても明らかな差を出したいと思ってちゃんとカメラをやろうと思った。Instagramもここまで流行るとは思ってなかったけど、世界の人たちがフラットに使っているから、そこで人気になれば世界で人気があるということに直結している。

Leica_Mシリーズ

「FR2」で使っているカメラはLeica M9

石川 俺は外国人に「Instagramいいよ」って教えてもらったんだけど、特に日本人ではやってる人がほんといなかった。その頃の日本はTwitterばっかりだったけど、俺の友達はみんなインスタのがいいよ、写真だけだしって言ってたのを覚えてる。

──2010年だと日本だとmixiをやってる人もまだ多くいましたからね。

石川 うん。それでFacebookやInstagramをやってくうちに、写真中心のコミュニケーションの強さを感じた。

過激な写真を撮り続ける理由 世界で勝つということ

──Instagramを見るとわりと過激な写真が多いですけど、それはどういった理由なんですか?

石川 結局、ウサギのカメラマンはプロじゃないからさ、Instagramの中で抜きん出た存在になるにはヌードが一番早いなって思ったの。世界の人みんなが共通で好きだし、言語で説明しなくていいじゃん。プロかアマかもあまり関係ない。見た人がどう思うかだから。

Instagramがすごく良いのは、あれが流行ることによって全員がクリエイティブになっていくこと。絵を描くのとちょっと似てるよね。これまで全く写真に興味なんてなかった人が何回も撮ったり──モデルの子なんて1日に何百枚も撮るっていうもんね。それを毎日だよ? その中から選りすぐりの写真を使うっていうさ。その工程とか環境がクリエイティブだと思う。

──どうやってモデルは選定してるんですか?

石川 ふつうに周りの子が多いですよ。ケツ撮らせてってお願いする(笑)。

──そんな気軽にOKもらえるものなんですか!?

石川 全然平気。そこが「FR2」のすごいところでもあるんだけど。ふつうは撮らせてくれないと思う。キャラ勝ちだよね。今はある程度ブランドもInstagramのアカウントも人気になってきたから募集もしてるんだけど、募集開始するとぶわーってDMが一気に来て一般の女の子がヌード写真を送ってくるんですよ。そうしたらもう早いよね。最近は初めて会った子もかなり多くなってきてるかな。

──うらやましい限りです……。

石川 超楽しいよ。今までは目の前の女の子をどう脱がそうかって毎日毎日考えてたわけじゃないですか。最近はちょっと募集したら向こうから女の子が脱ぎに来るんだもん。そんな良い時代ないっしょ! スーパーハッピーですよ。

撮影も大体2人きりが多いね。社員がアシスタントやらせてください!って言うんですけど、断ってる。承認欲求が強い女の人が多くて、自分の魅力を見てほしいっていう前のめりな子はすごく多い。写真に残しておきたい、みたいな。

──Instagramを見てるとやけにTバック率が多いですよね。

石川 そうそう。基本的にTバック。お尻が好きだから(笑)。

#FR2#fxxkingrabbits#japanesegirl#leicam9 #fxxkingrabbitsgirls#leica#aposummicron#leicacamera #leicacraft

#FR2??✨ Leica photographer??さん(@fxxkingrabbits)が投稿した写真 -

──過激すぎてアカウントが一時凍結されたということでも話題になりましたね。

石川 でも実際は違反した写真は一切あげてないんですよ。性器も乳首ももちろん。違反してないのに写真は消されるし、アカウントは凍結されるし……。ふざけんなと思って、うわーって書き込んだりしてたらニュースになっちゃって。Instagramにも抗議して復旧した。

表現の自由とか大それたこと言うつもりはなくて、海外のインスタグラマーとかカメラマンってもっとギリギリな写真を上げてるんだよ。でも全然平気なの。それは多分、アートやエロに対しての認識が日本と海外で全然違うからだと思うんだけど、海外の人は許されて日本のカメラマンが許されないってなったら、その時点で同じ場所で戦えないじゃん。

すっげーお尻がきれいに撮れた写真があるのに「これアップしたらまた消されるかな」「アカウント凍結されたらどうしよう」って思いながらやってたら勝てないよね。だからそこは強く言っていきたい。

──Instagram以降、プロでないけどカメラで有名になっている人が増えてますよね。アパレルじゃなくてオタク界隈でも有名カメコとかも現れています。

石川 いいんじゃない。人気があるってことは、撮影の技術云々は置いといてプロのカメラマンより優秀なところもあるかもしれない。いくら技術があっても、ネット社会では実際にファンを付けたりアピールできなけりゃ終わりなわけだからさ。

5年に及ぶ海外放浪で得たもの ローカルからグローバルに攻める理由

ウサギのステッカー ──そもそもどうしてウサギなんでしょうか?

石川 自分が兎年だったからってのもあるんだけど、草食系に見えて実はウサギがいちばん動物のなかでセックスするらしいんですよ。俺も超セックスするからちょうどいいやって(笑)。だからウサギ以外はあり得ないみたいになった。

今後はウサギのマスクを世界中に配って、ヨーロッパ・アメリカからウサギのカメラマンが出てきてバンクシーみたいにならないかなって。もともとは日本から登場したみたいだけど、誰が本物なの?って噂になってほしい。

でもいままでと違って完全に趣味の延長って感じでやってるかも。ふざけたプロダクトばっかだからね。

──例えば「SMOKING KILLS」というボックスデザインのアイテムが象徴的ですけど、これはどこから発想されたんですか?

石川 ブランドつくるときに一番はじめに何を考えなきゃいけないって「プリントのTシャツを売ること」なんだよね。ロゴでもなんでもいいんだけど、プリントが売れないと「ブランド」にはなり得ない。アイテムとして広告素があり、ブランドとして認知されるのが早い。「FR2といえば」っていうアイコニックなものを作らないといけないなって思っていた。

実は5年くらい海外と日本を行ったり来たりしてたんだけど、海外のタバコって「SMOKING KILLS」ってロゴが貼ってあるんだよね。吸ったら死ぬよ、死んでもいいなら吸ってね、みたいな。それだ!って。そのままプリントしてみた。

──風の噂で「石川さんはファッションに興味なくなっちゃってる」と聞くんですけど、それは海外に行ってことも関係あるんでしょうか。

石川 そうだね(笑)。その時期に海外を回ってた。アジアも行ったし、ヨーロッパやニューヨークも回った。「gonoturn」のマスクを思いついたのもその頃。これも非言語的で、説明しなくてもユーザーが勝手に解釈して使ってくれるという発想です。ニコニコ動画の踊り手の人たちが顔出しを避けるためにマスクをつけて踊っていて。そこから考えたんだけど、みんな海外で思いついたね。

Instagramを使っているのも世界を意識してるからで、実際すでにフォロワーも外国人のほうが多くなってる。1億人をターゲットにするより70億人をターゲットにしたほうが跳ね返りが大きいし。
gonotan

石川涼が手がける「gonoturn」のマスク。様々なキャラクターとのコラボデザインも販売している

──「gonoturn」のマスクは「踊り手」という日本独特の文化をモチーフにした、ローカルに注目した発想だったと思います。「FR2」でマスを目指すことになったという変化があるように見えるのですが。

石川 それは日本だけでやってても、もう全部駄目になる気しかしないから。少子化も進む一方だし、小学生が考えてもわかるくらい破滅しかない。

外国のお店にいったらお客さんがどこの国の人でもウェルカムなんだけど、飲食店に行っても日本語のメニューしかなかったり、タクシーひとつとっても外国人だったら乗れなかったりする。根底が無理だなって。そういう部分を拡げて、ビジネスの対象になったほうが面白いよ。移民の受け入れなんて嫌だとかみんな気軽に言うけど、もう入れないと無理だよっていう話にもなるけどね。

──Instagramが流行してから「かっこいい」という概念が変わった、みたいな感覚があります。海外チックになったというか、今までかっこいいと思っていたものが変わっちゃったなと。写真も過度な加工が当たり前になって、服装や髪色も派手で目立つのが当たり前になった気がします。

石川 人とどう差をつけるかってことだよね。いまは物を買って消費するよりも承認欲求のほうが高いから。「どこに美味しいもの食べに行きました」「景色がいいとこに行きました」みたいなさ。とにかく人より目立って、憧れられる存在にならないといけない。わかりやすく差をつけることのプライオリティが物を買う理由として高くなった。

──石川さん自身はどうですか?

石川 俺も同じだね。そっちのが価値があるよ。

──でも「(SNS用の写真撮るために)パンケーキ屋に並んでる女はダサい」とか言ってらっしゃいますよね。

石川 ダサくはない。俺が言ってるのはブス!(笑)

石川 まあ、悪口なんだけどさ、この現状をよく表してるのがそこなんだよね。かわいい子は目立つことに余裕があるから、混んでたらまた今度行こうってなる。ブスはパンケーキしかSNSにアップするものがないから、その日パンケーキを食べるって決めたら行くしかないんだよ。

かわいい子は自分の写真上げてりゃ「いいね!」がいっぱいつくわけ。かわいい子は他にもたくさん武器があるけど、ブスが承認欲求を満たすにはパンケーキを頼るしかない。いや、本当にパンケーキ屋に並んでるやつのことよく見てみて?w

ファッションの話でいえば、世界のブランドで共通して流行ってるものが「マーク」なんですよ。どこのブランドかぱっと見で分かるものしか売れない。無地の仕立ての良いシャツなんか求められてない。ぱっと見それがどこのものか分かんないと写真に撮ったときに意味がないからね。

「自分たちが最後のブランドだと思ってる」

最後のブランド 石川 もちろん今まで会ってない人のなかでそうじゃない人もいるんだろうけど、アパレル業界の人って格好ばっかで話してて面白くないんだよね。

──考えてないってことですかね?

石川 古い。だっていまだに生地がどうこうとかシルエットがどうこうとか話してるんだよ……。もう誰も興味ないのに幻想抱いてるんだよね。正しいものはいつも消費者が支持しているものなのに。

最初に会社を立ち上げたときは、野望とかも特になくて。24歳までサラリーマンやってた時に営業成績1位だったんだよね。それなら1人でやってく分には困んないかなって思って創業した。会社を大きくするってことも考えてなかったよ。自分の展望よりも、いまは器が大きくなっちゃった。せっかくここまで来たし、すべての人が掴めるチャンスじゃないからこそ、今は世界に行きたいよね。

──「ブランド」って石川さんはどういうものだと思っているんでしょうか。

石川 100円でつくったものを1万円で売るのがブランド。その100円のものをどうやって、1万円でいいってお客さんに思わせるかだよね。差額で利益を出してるわけじゃん。目に見えない価値がブランド。

──株式会社せーのが大きくなった理由には「VANQUISH」の成功が間違いなくあると思うのですが、それは「ギャル男」というコミュニティをつくったのが大きい?

石川 うーん、コミュニティづくりっていうよりも、発生したコミュニティに入っていった感じだよ。俺らにはつくれない。そういうのはいつの時代も消費者が勝手に騒いで気付いたら定着していってる。そこに向けて足りないものや潜在的に欲しがってるものを付け足してくっていう感じ。でも今は情報が分散しすぎてて、難しいよね。俺らは2004年からブランドをはじめたんだけど、自分たちが最後のブランドだと思ってる。

2004年って、ネットはもちろんあったけど、まだ雑誌の力が強かったじゃん。雑誌が強いってことは、その下にいるコミュニティをコントロールできるんだよね。当時の『Men's egg』なんて35万部とか売れてんの。っていうことは35万人を熱狂させてたってことで、35万人の10%を取るだけでも相当な数字になるじゃん。

それができたから、ブランドを確立できた。でも今はみんな本なんて読んでないし、一つのことに集中させるのが超難しい。同じ世代が全員買ってるってるようなブランドをつくることはできない。三代目 J Soul Brothersがブランドをはじめるとか、そういう飛び道具がないと無理だよね。

──「ファッションはもうだめだ」とか「もう終わりだ」とか言われてるんですけど、それでも立ち上げてく理由は?

石川 それしかできないからね。でも別軸でラーメン屋をつくろうとしたり、日本酒をつくったり、いろいろしてるよ。こういうことを3年前に受けたインタビューでも答えて袋叩きにあったんだけど、もうラーメン屋は場所決めるだけだし、確かな現実になってきてる。改めて言うけど、服屋はもう無理なんだよ。新しいブランドが生まれにくい状況で、みんな好きな物が分散しすぎてる。1億総ミーハーみたいなのはもう無理。

──なるほど。わりと絶望のなかで働き続けているっていう感じですよね。めちゃくちゃな人なのかなと思ったらすごくクレバーで驚きました。

石川 絶望してるけど、会社は好調だよ。理論上はECとフラッグショップが1つあればいいから、店舗は逆に今閉めてるんだけど、ここ数年では売上は最高益。

──そういう時代の変化に気付いて仕掛けてた結果が出ている。

石川 うん。だから知らせようと思って、昔のインタビューでも話したのに、みんなそういうところを全く汲み取れないで叩くだけだから……。「駄目になるからこれからどうするか考えよう」って話なのに、みんな表面的にしか受け取れないから馬鹿だなって、アパレル業界が嫌になった。まあみんながわかってないから勝てるんだけどね。

たくさん叩かれて、そのなかでも潰れない奴が本物になってくんだと思う。俺も相っ当踏まれたから。でも踏み潰せなかったんだよね。そういう人はすくい上げてやんなくても勝手に出てくる。叩かれるのも、それが新しいってことの証明だよ。

──石川さんって趣味とかあるんですか?

石川 本当に仕事かセックスしかしてない。やること逆にある!? やりたいことも他にそんなないね。

#FR2#fxxkingrabbits#japanesegirl#leicam9 #fxxkingrabbitsgirls#leica#aposummicron#leicacamera #leicacraft

#FR2??✨ Leica photographer??さん(@fxxkingrabbits)が投稿した写真 -

広報の川瀬さん でも最近、みんなでキャンプにいきましたよね。

石川 そうだね。たまたま会社でね……もう何年ぶりだよって感じだよ。

──みんなで何かするの苦手な人だと思ってました。

石川 苦手苦手。ほんと苦手。でもまあ、たまにはいいね。

──あ、石川さんっておいくつなんでしたっけ。会社もけっこう長いですよね。

石川 会社になったのは2004年だよ。会社になる前からもやってはいるんだけどね。24歳からやってて、今は41歳。

──え! 見えないですね。

石川 ヤリチンだからね。

──ヤってると元気になるんだ……!

石川 そうそう。
FR2

プロフィール

石川 涼

石川 涼

いしかわ・りょう

1975年神奈川生まれ。静岡育ち。2004年よりVANQUISHをスタート。

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