コラボする相手のファンにならないと全然ダメ
──メディア装置とコンテンツとの距離感が、今後メディアアーティスト自身の課題となっていく。落合陽一 普段はメディア装置ありきで考えてるんです。だけど、今回のような場合には、服が鳴ること自体が面白い一方で、「ワンオクを鳴らすにはどうしたらいいのか?」という思考も重要なんですよ。
メディア装置としての「WEARABLE ONE OK ROCK」自体は鳴る服で、本来曲は何をかけてもいいから、コンテンツとして定まらないんです。だから「メディア装置がどうコンテンツと関係するか」ということもしっかりと考えなきゃいけない。
ワンオクというコンテクストを載せた瞬間に、それはロックの音楽の装置になるし、みんながコスプレして、ポーズを取りたい装置にもなる。
装置をつくったから、プラットフォームにして、少しチューニングしてコラボしよう、みたいな行為はすごく荒が出る。コラボする相手のファンにならないと全然ダメなんですよ。
──一度リスナーとしての観点を取り入れるような?
落合陽一 だから今回、10代の気分になろうと思ってワンオクを超聴いたんです。同じ曲を1,000回くらい聴いたんじゃないかな(笑)。
この視聴会の前日にNHKでワンオクの特集番組※が放送されたんですけど、その放送を見て、ミキシングをもう1度、全身から鳴り響くよう直前に変えましたからね。 落合陽一 あの番組には猛烈な熱気や怨念めいたもの、それに希望も漂っていて。彼らは、閉塞した空気感のなかでワンオクを信じてるんですよ。「ワンオクが大きくなってくことが嬉しい」みたいなことを言う人たちもいて。
番組に出ていた18歳の子たちを通して、音楽は鑑賞するものじゃなくて、体験/体感して、なおかつ自分でやるものだとわかったんです。
実際、イベント初日にTwitterで視聴会の反応を見ていたら、おそらくその収録に行った人たちが「全身から鳴り響く『We Are』が聴こえた」って喜んでたんです。その「全身から鳴り響く『We Are』の音」が、彼らにとって重要みたいで。
「ワンオクはそういうコンテクストなんだ」と、しっかり理解しないと駄目。それがないと、たとえコラボしても、すごく甘くなっちゃうと思うんですよね。
落合陽一が光と音にこだわる理由
──「WEARABLE ONE OK ROCK」もそうですが、落合さんが音や光にこだわるのはなぜなんでしょう?落合陽一 音と光、オーディオビジュアルにこだわるのは、エジソンがやたら好きだからですね。電球、映写装置、蓄音機──20世紀のオーディオビジュアルの文化は全部彼がつくったんですよ。
その後、我々はどうやってそれを超えていけるのかをキーワードにしています。だからコンピューテーショナルに音と光の文法をつくって空中に見える映像をつくったり。
最近出したプロダクトだと『ホログラフィックウィスパー』という耳の周りだけで音がするスピーカーといったものを制作しているんです。今回は、その路線で一番攻めてると思いますね。
──攻めてるというのは?弊社ピクシーダストテクノロジーズの初の製品「ホログラフィックウィスパー」のリリースが出ました!超音波技術を使って空中に点音源を作り出し人に囁くスピーカーです.星先生村田さん田子さんWOWさまいつもありがとう!DCEXPOでみれます!音も三次元に!そして個別のコミュニケーションへ! pic.twitter.com/61H6XVS99r
— 落合陽一/Dr.YoichiOchiai (@ochyai) 2016年10月27日
落合陽一 だって「日常生活で使いますか」って言われたら、絶対使わないもん(笑)。
ただ社会にはハマるんです。このメディア装置があったら、ファンは全員着たいんはずなんですよ。それは、すべてのアーティストにおいて言える。
ハレの場でしか使わないテクノロジーだけど、そこに本質的な価値があるんです。音楽の体験は、耳元に対して音を最適化することだけをやってきていた──逆に、身体に対して音楽を最適化することは利便性を考えたら意味がないんですよ。だからこそ体験として価値があるんですよね。
オーディオビジュアルは、つい意味があることを求めてしまう。「スマホで使えんの?」「仕事になんの?」「映画館で使えんの?」とか言うんですけど、全然そうじゃない。意味があるかと価値があるかは全然別なんです。
──オーディオビジュアル部門の利便性から離れて、身体的な体験を重視した。だから攻めているんですね。
落合陽一 僕は普段、どうすれば人類社会が変わるかなと思って、どこにでも使えるオーディオ装置とかビジュアル装置つくろうとするんです。今回はそういうことを全然考えてなくて。
ワンオクに変身する体験を提供すること
──身体を同一化させた上で音楽を聴く経験はファンにとって貴重で価値のある体験だったと思います。視聴会の反応はいかがでしたか?落合陽一 視聴会に来たファンの子たちが上げてる写真を見るとすごい感動的なんです。ファンの子たちは、完全にTAKA本人になりきって「俺はTAKAになった」ってツイートしてるんですよ。
落合陽一 本質的には、どのアーティストにもそうしたいファンがいるんだろうなって。これははじめに企画を提案してくれた株式会社GOの三浦さんの慧眼だと思います。#WEARABLE_ONEOKROCK#ONEOKROCK #weare #18祭
— Sakura@18祭余韻 (@sakura1030_1111) 2017年1月10日
ワンオクの着る試聴会!!
私は左手のTakaさんのMA-1を着ました!
動く度に違った音の響きが聞こえて名実ともに音に体を包まれてる感じで最高でした!Weareでやってくれて嬉しかった! pic.twitter.com/erYh7tGm3J
同席されていたクリエイティブディレクターの三浦さん(GO.inc) VRや映像の分野でも、没入感──なかなか一人でできないことを、どうやって体験させられるかが今後のコンテンツのテーマになると思っているんです。今回、音楽の分野で没入感をはじめて実現できたに近いんじゃないかなって。
落合陽一 VRしてる時って、格好悪いじゃないですか? VRを体験してる自分は写真を撮られたくないんですけど、ウェアラブルなものは積極的に撮ってくれとなるんですよ。
──個人に依存する没入感とは、真逆の積極性をウェアラブルデバイスは生むのでしょうか?
落合陽一 第三者から見られる自分──どう見られたいかという体験を同時に満たしていることが、ウェアラブルデバイスの特殊な点ですね。いわばハードウェアとしての服だと言えます。
アーティストとメディアアートが生む新体験
──今回のジャケットをプラットフォーム化させ、装置が普及していくような展望があるのでしょうか?落合陽一 増えてく可能性はかなりあると思いますね。視聴会の反応を見て確信しました。
「WEARABLE ONE OK ROCK」はONE OK ROCKのために今回は曲に合わせてスピーカーを選んで、独自にチューニングをしているんです。それこそ、マイクスタンドをしっかり握ったときによりいい音が聴こえるよう意識して設計していたりだとか。 落合陽一 でも、どのアーティストでも、同じノウハウでこの体験を再現できるんですよね。
例えばBABYMETALの衣装を着て全身からBABYMETALの音楽を体験できるじゃないですか。それがでんぱ組.incでもいいし、AKB48でもいい。ジャニーズも服が特徴的ですよね。
──それこそ故人のアーティストなんかは、特に需要がありそうな。
落合陽一 象徴的な例だとプレスリーやビートルズもそうだし。かっこよくて、ファッションすらも真似たいと思われるようなアーティストさんはいっぱいいますよね。
その人の服に包まれた上で、そこに最適な音楽がかかるってのは体験としてすごい新しく、発展性が高い話だなと。身体を同一化させていくことが、「エモさ」に繋がっているんじゃないかな。
──ライブというレイヤーを無理やり体験者に載せるような。
落合陽一 しかも聴く側じゃなくて歌ってる側のライブを載せるみたいな感じなんですよね。普通に一般人がアーティストの服を着るんですよ。いわばコスプレなんだけど、音響体験がいいと納得できる。
──体験すると「体で聴け」という今回のキャッチコピーも少しイメージが変わってきます。
落合陽一 そうそうそう。「お前がTAKAになるんだ!」って感じですよ。
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イベント情報
ONE OK ROCK New Album ‘Ambitions’ 体験視聴会WEARABLE ONE OK ROCK(現在は終了)
- 日時
- 2017年1月10日(火)12:00~20:00
- 11日(水)10:00~20:00
- 会場
- タワーレコード渋谷店 8F SpaceHACHIKAI
- (東京都渋谷区神南1−22−14)
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